玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

フクロウの食べたネズミをしらべるよ

2022-01-16 15:03:21 | イベント
<スタッフと参加者の感想>こちら
<最終結果>こちら

2022年1月16日に小平市の津田公民館で「フクロウの食べたネズミをしらべるよ」というイベントをしました。
 9時半に集まって準備をし、10時からはじめました。参加者は子供11名、保護者8名、スタッフ3名(リー智子、米山ルリ子、坂本有加)と私の合計23名でした。定員は40名でしたが、コロナ感染者数が急増しているので、申し訳ないですが、辞退者を募ってこの数になりました。会場は和室で、割合広いので、ある程度ディスタンスは取れました。



主催者のリーさんから挨拶があり、私が説明をしました。

挨拶するりーさん

 リーさんが説明したように、数年前までは玉川上水の小平の部分でもフクロウの声が聞こえていました。その頃私は津田塾大学でタヌキのことを調べていたので、大学内の林をよく歩きました。子供の頃から野山を歩いていたので、「あれ、何か変なものがある」と直感しました。「ひょっとしたらトンビかもしれないけど、もしかしたら・・・」と思いました。というのは茶色と白の羽が見えたからです。近づいてみるとそれがフクロウで、タヌキがいれば食べますが、発見が早かったせいか、ほとんど完全な死体でした。それを持ち帰って骨にして組み立てたのがこの標本です。


と言ってその標本を見てもらいました。

フクロウの標本を説明する

誰もが思うことですが、頭が意外と小さいことです。これは羽毛で膨らんでいるからで、それを補うように紙で作った頭の絵を描いた紙の土台を発泡スチロールで作ってかぶせました。そうしたら笑いが漏れていました。

 
「顔」をつけたところ

 フクロウはネズミを食べることに特殊化した鳥です。そのために色々工夫をしています。まず、普通の鳥は夜は目が見えないのにフクロウは夜にネズミを捕まえます。それは目でなく、耳で「見る」ことができるからです。右と左の耳の位置が少しずれているために、左右の耳に聞こえるごく短い時間差があり、それによって距離がわかるのです。

皆さん、両手を開いてください。そして右目をつぶって。そうして人差し指を伸ばしてから、両手を前に伸ばして、指をくっつけてみて。うまくくっついた人もいるかもしれないけど、ずれた人もいるよね。では今度は両眼を開けてやってみて。うまくいくよね。これは両目の見える範囲が重なっているからで、フクロウはこれを耳で行なっているというわけです。

「両手を広げてみて」

視野の重なりを説明する

 それから、羽根の先端にセレーション構造という作りがあって、これで音を消せるのだそうです。新幹線のパンタグラフはこれをまねして音を小さくしたそうです。ネズミは耳がとてもいいので、普通の動物が近づけば気づきますが、フクロウが襲うと音がしないので気がつかず、逃げることができません。
 
 私の知り合いが八ヶ岳の麓に住んでいて、毎年巣箱をかけると、冬になるとフクロウがきて子育てをします。


その間ネズミを捕まえて巣の中で食べて、消化できなかったものを吐き出します。6月頃に巣立つので、その後で巣箱の中身を取り出します。それを分析しています。
 八ヶ岳は戦後、開拓で林を切って牧場を作りました。巣箱は牧場の近くにも、林の中にも20個くらいかけました。調べてみると、牧場に近いところではハタネズミが多く、林ではアカネズミが多いことがわかりました。


 ハタネズミは草地にいてなんでも食べるネズミですが、アカネズミは林にいて果物や昆虫など栄養のあるものを食べます。
 そのことをシャーマン・トラップというワナで調べてみました。そうしたら確かに牧場ではハタネズミだけが捕まり、林では多くのものはアカネズミでした。
 これをまとめると、八ヶ岳では戦後開拓されて林が牧場になった。その結果、アカネズミは減って牧場ではハタネズミが増えた。フクロウはもともとは林に住み、大きな木の洞(うろ)という穴に巣を作ってアカネズミを食べていたが、林がなくなって仕方なくハタネズミを食べて生き延びており、洞(うろ)のあるような太い木がないのですばこ をかけるとよく使うということのようです。

NHKの「ダーウィンが来た」で弘前のリンゴ園のフクロウのことを取り上げたことがあります。その人は私の知り合いの弘前大学の東さんで、とてもいい仕事をしました。


 青森県の弘前(ひろさき)はリンゴの産地ですが、リンゴ園にはハタネズミがたくさんいてリンゴの木をかじって木が枯れるので困っていました。そこでネズミを殺すために毒入りの食べ物をまいてネズミを殺しましたが、ネズミはすぐに増えてしまって被害はなくなりませんでした。そこで東さんが、フクロウの巣箱を作ることを提案しました。そうしたらフクロウが来てネズミをたくさん食べてくれたのでリンゴの木が枯れることがなくなったそうです。普通、農家の人は野生動物を敵だと考えますが、ここではフクロウを仲間として助け合っているのでとてもいいことだと思います。

 さて、ここまでがフクロウのことで、これからは今日の作業の説明です。ここに八ヶ岳の巣箱から取り出したサンプルがあります。ここから少しずつ取り出して丁寧に探すとネズミの骨が見つかるはずですから、それをピンセットで取り出してください。そのために、ネズミの骨の説明をしておきます。
 骨には難しい名前がついていますが、ここでは楽しく覚えるために骨にニックネームをつけました。これは「歌うおじさん」で前足の肘から下の骨です。これは「鼻つき」で肘より上の骨です。これは「先っちょぼうす」で、骨の先に丸い玉のようなものがついている太ももの骨でです。これは膝から下の骨で「バイオリン」です。これは腰骨で「P」と呼んでいます。こういう骨が出てくるので取り出してください。もちろんネズミの頭の骨、下顎の骨も出てきますが、これにはニックネームはつけていません。


 では皆さん、作業を初めてください。前の机には標本や人形などを並べているのでみに来てください。




 こうして取り出し作業をしてもらいました。子供の方が目が良いようで、「あ、あった」「これはなんだろう」と声が上がり、私がそこに行って説明しました。



 前の机には展示物を並べました。


フクロウの骨格など


フクロウの人形


フクロウの人形2


ネズミの骨模型

11時半くらいになったので、作業を中断してもらい、表彰状を渡すことにしました。それから小さなおみやげをプレゼントしました。一つはフクロウの人形です。


 石粉粘土でダルマのような形を作り、そこに目とくちばしを描いて羽に模様をつけただけのものですが、その顔を描いているときに、その形がアジサイの芽が落ちた痕(芽鱗痕)とよく似ていることに気づきました。

アジサイの芽鱗痕

 それでその芽もプレゼントにしました。

表彰する



 最後に記念撮影をして解散しました。子供たちの中にフクロウのこと、ネズミの骨のことなどが印象に残って生き物に興味を持ってくれればと思いました。スタッフのみなさまはご苦労様でした。

* 写真の公開には了解を得ています。

スタッフと参加者の感想はこちら



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