玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

活動記録 

2024-06-18 09:15:10 | 活動記録
2024.6.17 「七夕の日、東京が変わる!−蓮舫さんとともに多摩地域大集会」で発言 こちら
2024.6.16 学習会「小平の玉川上水が危ない 4」 こちら
2023.12.3 学習会「小平の玉川上水が危ない 3」 こちら
2023.9.1 東京都庁の水道局に質問状を持参するも拒絶 こちら
2023.8.20 学習会「小平の玉川上水が危ない 2」 こちら 動画
2023.7.20 史跡玉川上水整備活用のための作業説明会(小平市・立川市域) こちら
2023.7.14 東京都建設局北多摩北部建設事務所を訪問 水口 高槻
2023.7.10 坂上多津夫氏(元津田塾大学職員)に話を聞く会を開催 こちら
2023.6.2 分断道路を考える集まりを開催 こちら
2023.5.7 シンポジウム「小平の玉川上水が危ない」を開催 こちら 動画
2022.10.4 水道局の説明会に参加(高槻)。こちら
2022.10.3 玉川上水の柵設置についての要望書(こちら)を提出しました。
2022.10.3  緑地事務所職員と新しい柵の現地視察会を行いました。
2022.7.9 三鷹市区域の玉川上水整備に関する説明会 報告鈴木
2022.7.9 史跡玉川上水整備活用のための作業説明会(大塚)こちら
2022.5.18 玉川上水の新しい柵について東京新聞が取り上げました。こちら
2022.5.15  新しい柵についてのアンケートを実施しました。こちら
2022.5.9 「玉川上水の樹林の有無と土壌流失について」をまとめました。こちら
2022.5.1 小平の新しい柵を見る観察会を行いました。こちら
2022.4.26 本会が実施した玉川上水についてのアンケートがまとまりました。こちら
2022.4.7 高槻が広報誌「アサココ」に「玉川上水の野草たち」というシリーズをはじめました。こちら
2022.1.31 『玉川上水の野鳥と緑地』パンフができました。こちら
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「七夕の日、東京が変わる!−蓮舫さんとともに多摩地域大集会」

2024-06-17 09:23:25 | イベント
6月17日に小金井で「七夕の日、東京が変わる!−蓮舫さんとともに多摩地域大集会」がありました。「はけの自然と文化をまもる会」の横須賀さんに声をかけてもらって市民トークリレーで発言することになりました。定員600人くらいの会場は満員で、予約なしに来た人も多く1000人ほどが集まったそうです。

満員の会場

事前から熱気がすごく、蓮舫さんが登場すると大声が沸き起こり、こういう場に不慣れな私はかなり驚きました。


熱く語る蓮舫さん

蓮舫さんは間違いなく華があり、人を惹きつけるものを持っていると感じました。「いつどこ誰が何を語って決めたかを透明にする」ということを強調し、賛同の声が沸き起こりました。彼女への期待があることはもちろんですが、このところ続いている不透明なトップダウンの決定に対する不満が沸々と湧き起こっているのだと思いました。それを打破してくれるのが蓮舫さんという期待があるのでしょう。

その後、プラカードを持って蓮舫さんが壇上で会場を背後にし、全員がプラカードを持って記念撮影をしました。それから市民トークリレーとして8人が登壇し、私も発言しました。大観衆を前にして、私は柄にもなくアガッてしまいました。ま、それもご愛嬌です。発言内容は文末にあげておきます。

 市民トークリレー話題は、地球温暖化、給食問題を含む多摩格差、生活困難者問題、飼育動物の殺処分、ハケの破壊道路計画、PFAS問題など多岐に渡り、皆さん熱弁を奮い、会場からも賛同の声が上がりました。
 それから、都議、国政関係者の登壇、発言がありました。菅直人元首相、小池晃共産党副委員長はさすがに話がうまく、笑いもとりながら蓮舫支持を訴え、このままいけば都知事選は間違いなく上手くいきそうな気分になるほどでした。
 現実にはそううまくはいかないと思います。しかし、市民の声が行政に届かないという意味では、今ほどひどい時代はなかったと思います。このままではこの国は民主国家とはいえなくなるようで気が重くなります。中国やロシアのように独裁者がいないだけにその改革が難しいともいえます。私自身としては、蓮舫さん個人を支持するというより、現状を打破したいという意味で、投票で意思表示をしなければならないと思いました。

++++++++++++++
 高槻と申します。大学で生態学を学んできた研究者です。蓮舫さんが「緑と共生する東京」を表明されたことを強く支持します。

 私は小平に住んでいるので玉川上水の動植物を調べてきました。
 東京に人口が集中した1960年代には小平には雑木林がいくらでもあり、里山の動植物に溢れていました。しかしその後は宅地化によって雑木林がどんどん減っていき、今ではごく限られた場所にしか残っていません。そうした中で玉川上水は羽村から杉並までの30kmにわたって細いながら繋がった樹林があり、そこには豊富な野草があり、昆虫や鳥がいて、いわば避難所のようになっています。そのことでどれだけ多くの都民の生活が豊かなものになっているかしれません。
 その玉川上水の中でも小平は特に状態の良い樹林があるのですが、ここに樹林を分断する道路計画があり、それができると野草や昆虫や鳥類が住めなくなってしまいます。この計画は昭和の高度成長期に立てられたものです。
 玉川上水の動植物の中には貴重な動植物もありますが、玉川上水の価値はそれだけでなく、かつてありふれていた武蔵野の雑木林の動植物が残っていることにあります。それが高度成長期に立てられた道路計画によって永遠に失われることになろうとしています。私はそれはしてはいけないことだと思います。それは私たちの世代の責任であり、私たちが選んだ行政の責任でもあります。
 これは玉川上水の一部でもある井の頭公園や、玉川上水ではありませんが、ハケに連なる野川公園など、多摩の残された自然に共通のことです。

 東京都は常に時代の変化を見極め、近未来、遠未来のあるべきビジョンを見据えながら、残された自然を次世代に引き継ぐ姿勢を持つべきです。そのことを蓮舫さんに期待し、支援したいと思います。

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学習会4 (2024.6/16) の記録

2024-06-16 18:57:01 | 講演
204年6月16日の14時から小平市中央公民館で「学習会4」として、昭島での物流センター計画とそれに関連する運動について、長谷川博之さんにお話を聞きました。

話をする長谷川さん

 その概略を発表資料から紹介します。この大型物流センターは西武新宿線の西武立川駅の向かいの、玉川上水が暗渠になっている部分の南側にあたります。資料によると次のとおりです。

開発地域は、元々は、「昭和飛行機工業(株)」の所有地で、戦時中は、飛行機整備工場や滑走路があった。2021年外資系資本のGLPに買収され、その後、中国系企業に再買収されている。GLPは、総資本7000億円とも。世界でも有数の不動産会社で、日本では、150社あまりが、すでに稼働している。関東では、近隣の神奈川県や千葉県、埼玉県には、すでに建設されており、東京都では、昭島が初めての建設になる。その広さ、デズニ-ランド1個分、東京ド-ム12個分である。


計画 水色が物流センターの建物、黄色がデータセンターの建物、赤線が幅16メートルの「東西道路」

 高槻はGLPが作成した計画の説明パンフレットを見ましたが、実によく書けていて舌を巻きました。流石に日本中で物流センターを作る実績を上げてきた大企業だと思いました。
 これに対して長谷川さんは次のような問題点を指摘しています。

開発計画の問題性
1)住宅地のまっただ中の開発・周辺道路の狭隘さ(片側一車線)から来る生活破壊
2)近接する住宅地の日照権や風通しの環境悪化、良好な景観の消失
3) 物流施設やデ-タ(電算情報)センタ-への高電力供給や施設からの熱発生や冷却水の処理
4)ゴルフ場の芝地や樹林の伐採敷地内のコンクリ-ト被覆による緑被率や地下水浸透能、CO2の吸収能の大幅な減少、4871本におよぶ樹林の伐採と移植
5)開発地域周辺で予想される生態系への悪影響
 a)玉川上水
 b)代官山

 代官山のオオタカについては先日の朝日新聞に取り上げられていました。昨日無事に巣立ったそうです。調査によると、鳥類は現地調査で44種、文献を含め75種が記録されているとのことです。参考までに、玉川上水の鷹の台では、1年の調査で33種(こちら)、10年間の調査で84種が記録されています(こちら)。

 ここまでは主に動植物の話でしたが、この後、実際の反対運動が紹介されました。長谷川さんは高校の生物学の先生でしたが、2年前に退職し、この活動に専念するようになったとのことでした。資料によって紹介すると・・・

開発計画に対する市民運動や手続き状況
1)地元住民による反対運動「昭島巨大物流センタ-を考える会」が立ち上がり、これまで、2年1ヶ月余り、運動や学習会等が行われてきた。考える会だけでなく、渋滞予測のシミュレ-ションチ-ムやオオタカチ-ムが誕生し、市民側は、運動の広がりが出ている。日本自然保護協会や日本環境会議の支援も得られている。
2)都の環境アセスメント審議会が開催され、2012年12月「調査計画書」に対する意見書234通、2014年2月「環境影響評価書案」に対する意見書463通出されている。今後(6月以降)、「GLPからの見解書」、「都民意見を聞く会」の後、アセスメント審議会で最終審議が実施予定。
3)都の景観審議会、自然保護審議会の開催要請を行ってきたが、拒否・無視されている。都議会への陳情を提出。環境・建設委員会では採択されなかったが、警察・消防委員会では、趣旨が採択された。6月本会議でも、取り上げられる可能性が出てきた。党派によるかけ引きや思想差別、環境局の都議への圧力、市民差別のようなことが平然と普通に行われていることに、驚きを禁じ得ない。
4)昭島市は、この開発地域に、「地区計画」を策定しようとしており、すでに、素案の説明会を開催した。過去2回の懇談会やル-ル説明会も開催してきて、さまざまな市民意見が出されたが、反映されてはいない。
  当初とは打って変わって、GLP寄りの姿勢が目立ち、新設の東西道路を容認してきている。代官山については、地区計画に伴う緑地保全条例をつくると言っている。しかし、代官山については、所有者が代わったにもかかわらず、新たな協定書や管理方針や条例制定のための動きや調査は、まったくしていない。  
5)市民運動では、今後、住民監査請求や公害紛争調停も視野に入れる動きがある。特に、昭島市に対しては、当面、地区計画に対する住民監査請求を予定。そこに、「自然の人権訴訟」ならぬ「自然の生命権監査請求」を抱き合わせで、請求する予定。

 実際の活動の中で、行政とのやりとりもし、憤りや無力感を感じることも少なくなかったそうです。以下はその列記です。

環境アセスメント制度の問題
1)開発周辺地域の課題が対象になっていない。特に、周辺地域の交通渋滞や道路のメンテナン スなどがまともに取り上げられない。
2)他の条例との連携が図られていない。景観条例上や自然保護条例上の課題とは連続性がない、ばらばらの対応である。
3)開発後の影響力を、調査、評価することが抜けてしまっている。(事後調査報告は、形だけのもの)
4)住民アセスや自主アセスで補っている面が多すぎる。条例アセスで、点検すべき課題を整理し直してほしい。特に、動植物の保護の課題。
5)事業者側の調査やシュミレ-ションの公開性が希薄で、コンサルタント会社が最初からわからない。何をしているのかさえわからない。調査の不十分さが昔から指摘されてきたが、通り一遍だけの調査で、開発許可が下りている実態がある。今回の最大の問題は、GLPの環境影響評価書案が瑕疵や不備があまりに多いこと。
 6)アセスメント条例の自治体による違いがあり、準備書の段階から、真剣に取り組む自治体もあれば、準備書を公共事業以外は省いてしまう自治体もある。アセスメント審議会の専門家に偏りが見られる自治体もある。
7)都道府県の条例扱いとなる問題には、開発地域の地元自治体の消極性・無責任さが目立つ。都道府県任せの市区町村が多い。都道府県と市区町村の連携を促す仕組みが必要である。
8)アセスメント制度は、事業者と住民とのコミュニケ-ションツ-ルと言っている(環境省OB)が、事業者による住民への恣意的差別が背景にあり、コミュニケ-ションは成り立っていない。

長谷川さんは行政が「あなたたちのような小さな市民団体の声をいちいち聞いていられない」と言われ、空いた口が塞がらなかったそうです。そして「この国は民主国家と言えるだろうか」と感じたそうです。
 長谷川さんは溢れる思いを立て板に水で話されたので、私は消化不良でした。参加者からいくつか質問、発言がありました。私が覚えているものを上げておきます。

- 生物調査の内容にクモが入っているようですが、小平ではクモは調べられていません。
<長谷川>調査によって内容には違いがあるようです。GLPのものはかなり詳しく、鳥類などは珍しいものもたくさん見つかっていて、開発酢べきでないとなりそうですが、そうはなっていません。
- 話の初めの方で政治とは別に動植物を守りたいということで活動してきたという話と、最後に話された政党によって聞いてもらえる党と聞いてもらえない党があるというのは一貫性がないのでは。
<長谷川>矛盾はあるが、現実に開発に対する考え方が大いに違う。私は人にとって自然はなくてはならないものだと思う。
- 都市生活をする以上、自然を犠牲にしているのだから、都市生活者が開発をするな、つまり自然を守れというのはそもそも矛盾している。
- その土地にふさわしい動植物がいて、それに悪い影響を与えて胃はいけない。小金井のようにサクラだけにするなどは間違っている。
<長谷川>玉川上水を庭だと思って園芸植物を植える人がいる。園芸、造園感覚は生物多様性の保全に反する。
-しかし人にとって庭園というのは、単純なものばかりではない。イギリスの庭のように多様性を重んじるものもある。そういう人は野生植物を含む植物の多様性を守ろうとしている。単純に園芸は生物多様性に反するとは言えない。
-自分の生活を考えると、昭島のものには反対する気持ちがある反面、ネット注文してすぐに届くという生活は変えられないし、これからもっと進むと思う。昭島に雇用が生まれることもプラスのことだと思う。

たくさんの発言があり、記録を取っていなかったので、ごく一部の記録になったと思います。長谷川さんの情熱溢れるお話には学ぶものが多く、小平の328号線問題にとっても参考になるところがたくさんありました。

参加者の方で、追加情報があればご一報ください。

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玉川上水の小平市鷹の台地区での鳥類調査(2023年7月から2024年6月)

2024-06-11 21:41:41 | 調査報告
大出水幹男・高槻成紀

はじめに
 小平市鷹の台地区の鎌倉橋から「いこい橋」までの間(1.6 km)は、樹林幅が35 mほどもあり、玉川上水全体でも幅が広く、鳥類も豊富である(高槻ほか 2023)。ここは「小平都市計画道路3・2・8号府中所沢線」(以下、小平328号線)が計画されている(こちら)。実際の工事の内容や時期などは不明であるが、この種の開発が行われる場合、しばしば開発後の動植物の状態は開発前のデータがないために、その影響が評価できないことが多い。こうした中で杉並区の「放射5号線」の場合は、工事前後の調査が行われたために、道路開通が鳥類群集に及ぼす影響が明瞭に示され、事前調査が重要であることが示された(大塚ほか 2023)。その意味で、鷹の台地区の小平328号線予定地でも現状の記録をしておくことが望ましいと考え、2023年と2024にかけて毎月一度の調査を行ったので、報告する。

方法
 方法は高槻ほか(2023)と同じで、玉川上水の鎌倉橋から「いこい橋」までの距離1.6 kmの範囲(図1)の左岸をゆっくり歩くラインセンサス法によって鳥類を確認して記録した。センサスは原則、月1回行い、10月は2回おこなった。時刻は午前7:00から約1時間をかけた。


図1. 調査地の地図

 生息地と鳥類の関係を示すために,鳥類の生息地選択によるタイプ分けをした.これにはAVIANデータベース(高川ほか 2011)を採用した. JAVIANデータベースでは生息地を市街地,農耕地,海岸,湖沼河川,湿地,草地裸地,森林,高山に分けてあるので、それをもとに次の7つのタイプに分けた。

森林型、都市・森林型、都市・農地型、都市・水辺型、水辺型、都市型、ジェネラリスト

 このうちジェネラリストは森林、農地、都市環境など特定の場所に限らずどこでも生息するタイプである。

結果
 12回の調査で通算31種、合計1767個体が記録された。種数は7-10月中旬までは10種前後と少なかったが、その後増加して18-20種レベルになり、4月以降は徐々に減少した(図2)。


図2. 種数の推移

 個体数は7, 8月は80個体前後であったが、その後増加して12月には最大数の236個体となった。その後徐々に減少して150個体ほどになり、5月以降は100個体をやや下回った(図3)。


図3. 個体数の推移

 主要種の月変化を見ると、ヒヨドリが10月に非常に多くなり、その後も多かった(図4)。ムクドリの月変化は明瞭な季節性はなかったが、夏には少なく、11月、2月などに20個体を超えた(図4)。ハシブトガラスは比較的安定しており、12月に30個体と多くなった(図4)。カワラヒワは夏には少ないか全く記録されなかったが、11月から4月に多くなった(図4)。


図4. 主要種の個体数の推移

 これらに準じるものとして、シジュウカラは20個体前後で安定しており、6月の巣立ち時期に多くなった(図5)。メジロは夏から10月下旬までは少なく、その後20個体程度に増加し、その後漸減した(図5)。ヤマガラは9月を中心に多く、そのほかの月は少なかった(図5)。ハシボソガラスは8月前後が多く、そのほかの月は少なかった(図5)。


図5. 準主要種の個体数の推移

 個体数の通年の合計値はヒヨドリが25.1%で最多であり、シジュウカラ(11.6%)とハシブトガラス(10.5%)の3種が10%以上であった(表1)。
なお、「小平市の鳥」に選ばれたコゲラは12位であり、5月を除く全ての月で記録され、この場所に安定的に生息することが確認された(図6)。

図6. 小平市でのコゲラの個体数の推移


表1. 通年の種ごとの個体数


 生息地選択のタイプ別の種数と個体数を表2に示した。なお種ごとのタイプは付表1に示した。種数は都市・森林型が10種で最多、森林型とジェネラリストがそれぞれ10種で多かった(表2)。森林型と都市・森林型を合わせると51.5%と過半数となり、森林に生息する鳥類が多いことが示された。
 ただし、ジェネラリスとは種ごとの個体数が多く、森林型は逆に個体数が少ないため、タイプごとの個体数を見るとジェネラリストが48.7%で半数近くを占め、森林型は4.7%に過ぎなかった(表2)。

表2. JAVIANの生息地選択に基づくタイプ分けとその種数と個体数


考察
 同じ範囲で2021年に行った調査では27種が確認され(高槻ほか, 2023)、今回はそれよりやや多かった。これは2021年には7回しか調査をしなかったためで、今回だけで記録されたのはアオジ、オナガ、キセキレイ、クロジ、ジョウビタキ、ダイサギ、モズ、ルリビタキ、カッコウ類の1種の9種であった。2021年だけで記録されたものにアトリ、オオムシクイ、カッコウの3種があった。
 本調査地は樹林状態が良いために、2021年に調査した小金井、三鷹、杉並と比較して種数も個体数も最も豊富であった(高槻ほか, 2023)。ここでは10年間の調査で84種もの鳥類が記録されており、その豊富さは皇居(西海ほか2014; 黒田ほか2017)や明治神宮(柳澤・川内 2013)に匹敵する(大出水・高槻, 未発表)。そしてその内訳は森林に生息する鳥類が多いということが特徴的であった。そして「小平の鳥」に選定されたコゲラも安定的に生息することが確認された。

コゲラ

 状態の良い樹林があり、鳥類が豊富であるということは、当然その食物となる昆虫類や果実類も豊富であるということであり、また営巣するための樹木の状態も良いということである。
 東西に連続するこの樹林帯を縦断する道路がつけば、樹林が失われ、鳥類をはじめとする生物多様性が甚大な被害を被る。特に長距離を飛翔することが少なく、樹木の幹や枝を歩くように移動するコゲラにとっては幅36メートルもある道路ができることは深刻な影響があると思われる。
 杉並における「放射5号線」が開通した時も鳥類群集は大きな影響を受けた(大塚ほか, 2023)。この場合は大型道路が玉川上水を挟むようにつけられたが、「小平328号線」の場合は樹林帯を縦断するので、被害はさらに大きくなるものと懸念される。
 道路建設については、いうまでもなく多方面からの価値観や意見があ理、容易に解答は得られないが、鳥類群集の保全という点から言えば極めて深刻なマイナス影響が予測される。玉川上水は太平洋戦争後に急速で大規模に進行した東京都の開発の中で、奇跡的に残された連続緑地であり、自然が失われた東京都全体にとっても極めて価値が高い。このことを東京都が公表した「生物多様性地域戦略」に照らせば、この道路計画は慎重に見直す必要があると考えられる。

文献
黒田清子・小林さやか・齋藤武馬・岩見恭子・浅井芝樹. 2017. 2013年7月から2017年 5月までの皇居の鳥類相. 山階鳥類学雑誌, 49: 8–30. こちら

西海 功・黒田清子・小林さやか・森さやか・岩見恭子・柿澤亮三・森岡弘之. 2014. 皇居の鳥類相(2009年6月-2013年6月). 国立科博専報, 50: 541−557. こちら

大塚惠子・鈴木浩克・高槻成紀. 2023. 玉川上水の杉並区に敷設された大型道路が鳥類群集に与えた影響. Strix, 39: 25−48. こちら

高川晋一・植田睦之・天野達也・岡久雄二・上沖正欣・高木憲太郎・高橋雅雄・葉山政治・平野敏明・三上 修・森さやか・森本 元・山浦悠一(2011)日本に生息する鳥類の生活史・生態・形態的特性に関するデータベース「JAVIAN Database」. Bird Research, 7: R9–R12. こちら

高槻成紀・鈴木浩克・大塚惠子・大出水幹男・大石征夫. 2023. 玉川上水の植生状態と鳥類群集. 山階鳥類学雑誌,55: 1−24. こちら
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小平市鷹の台の玉川上水の鳥類

2024-06-10 21:20:53 | 生きもの調べ
大出水幹男さんは2013年から現在までほぼ毎日といってもよい高頻度で鳥類調査を続けています。そのうち2022年12月までの記録を整理したところ、84種が記録されていることがわかりました。これは皇居(黒田ほか 2017)や明治神宮(柳澤・川内. 2013)に匹敵する豊富さです。詳細は改めて紹介しますが、ここではその84種を紹介します。

文献
黒田清子・小林さやか・齋藤武馬・岩見恭子・浅井芝樹(2017)2013年7月から2017年 5月までの皇居の鳥類相. 山階鳥学誌 49: 8-30. こちら

柳澤紀夫・川内 博(2013)明治神宮の鳥類第2報. 鎮座百年記念第二次明治神宮境内総合調査委員会(編)鎮座百年記念第二次明治神宮境内総合調査報告書: 166–221. 明治神宮, 東京.
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