玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

狭山緑地での糞虫調査 - 玉川上水との比較

2019-10-10 18:43:44 | 生きもの調べ
玉川上水でとれる糞虫のほとんど全部はコブマルエンマコガネで、センチコガネは1%にすぎませんでした(こちら)。例外的にクロマルエンマコガネ、センチコガネがとれています。高尾ではセンチコガネなどの割合がもっと高かったので何か理由があると思っていましたが、糞虫に詳しい人に聞いたら、コブマルは肉食獣の、センチは草食獣の糞を好む傾向があるというので、納得しました。今の玉川上水で糞を供給するのはタヌキとイヌくらいですから、コブマルが多いのは当然だと思われます。
 そこで狭山丘陵と比較してみることにしました。9月30日に東村山市の狭山緑地で10個のトラップをセットして10月1日の午前に回収しました。


狭山緑地の景観


 その結果、10のトラップのうち7つに糞虫が入っており、内訳はコブマルが8匹、センチが5匹で、センチが38.5%の高率でした。これは統計的に有意差がありました(χ2検定、χ2 = 82.5, P < 0.01)。


トラップの様子の1例。大きいのがセンチコガネ


 狭山緑地に草食獣がいるかどうかはっきりしませんが、イノシシやノウサギはいると思います。シカが分布を広げており多くはないですが、狭山丘陵に入ったのは確かです。
直接的な影響としての糞の供給だけでなく、緑が豊かで面積も広いことは多様な植物、動物がいるということで、糞虫にとって住みやすいということは間違いなく言えると思います。そのことがセンチコガネの生息を可能にしていると思われます。
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ぽんぽこ・マップの試み

2019-10-01 13:42:41 | 生きもの調べ
ぽんぽこ・マップの試み

高槻成紀

 私は人と自然を考える上でタヌキは絶好の対象だと思います。
 自然好きの人は北海道や中部地方や屋久島などの原生自然の価値を認め、その保護活動をする人もいます。多くの人はそれに共感します。自然保護運動はそういう流れにありました。
 しかし日本は自然の豊かな国ではありますが、手つかずの自然は例外的にしかありません。面積としては圧倒的に人の影響を受けた場所が多いわけです。国土の3分の2が森林ですが、その多くは人工林あるは雑木林ですし、丘陵や平野は農地です。そういう場所の自然は人に作り替えられたり、変形されたりしているので、「純粋な」自然保護の対象とは考えられませんでした。しかしそこにも無数の動植物が生きています。
 生物多様性の概念が徐々に定着するにつれて、そういう「半自然」の価値が見直されるようになり「里山の保全」というような言葉も市民権を得るようになりました。
 このことは当たり前のようで、実は深い意味を持っていると思います。イリオモテヤメネコやアマミノクロウサギを守らないといけないことは誰でもわかります。ではタヌキはどうでしょう。イリオモテヤマネコを原生林とすれば、タヌキは里山です。シャレではなく、ケモノへんに里と書いて「狸」ですから、人と共存してきた野生動物の代表と言えます。タヌキは里山にはもちろん、都市にも住んでいます。実際、首都東京の区部にさえ暮らしています。ではこの珍しくもないタヌキと都市住民はどういう関係を持つべきでしょうか。
 答えは簡単ではありません。「タヌキなんかきれいでもないし、珍しくもないし、人の役に立つわけでもないからいらない」という意見は否定はしにくいです。都市に住むということは、もともと自然を破壊して人の便利な生活を追求しているのだから、そのことを棚に上げて「私は動物に優しくするんだ」というのは根本的なところで矛盾しているといえば、いえます。しかしコンクリートジャングルだからこそ、公園の緑地に安らぎを覚えるように、人はもともと自然の中で暮らしてきたのだから、私たちのDNAには自然に対する安らぎや落ち着きを感じるものがあると考えるのが自然です。そうであるからこそ、残された自然を大切にするという考えには妥当性があります。大自然に比べれば珍しい動植物がいるわけではないが、それでもそれらの動植物が懸命に生きているのを見ると深い感動があります。その象徴がタヌキだと思います。
 というのは都市に住む動物でタヌキほどの大きさのものはほとんどいないからです。似たもので大きさもほぼタヌキに匹敵するものに、アライグマとハクビシンがいますが、これらは日本の野生動物ではありません。タヌキといえばキツネが連想されますが、キツネは都会にはいません。タヌキだけが野生哺乳類として懸命に都市生活と折り合いをつけているのです。そう考えれば「よく生きていてくれた」という気持ちになります。
 
 以上、タヌキの価値というか、我々にとっての意味を考えましたが、そのタヌキの現状がどうであるかはわからないことが多く残されています。私たちは主に津田塾大学のタヌキの食べ物や動きを調べ、関連してタヌキの糞を利用する糞虫のことも調べています。そうした調べの一つとして、タヌキの生息状況の情報収集をしたいと思います。私が麻布大学で研究していた時は、相模原市と町田市の清掃局に「ゴミ」として運ばれた動物を調べました。残念ながら小平ではそういう記録は取っていないそうです。そこで多くの人から情報提供をお願いしたいと思います。
 もし具体的な生息情報が玉川上水沿いに確認され、地図上に赤い点がプロットされ、その点がたくさんになれば、いるところだけでなく「あまりいない」ところも見えてくるはずです。たくさんの情報があれば、タヌキがいる場所、いない場所の特徴も見えてくるかもしれません。それには「たくさんの目」が必要です。どうか日本人に寄り添って生き延びてきたタヌキについて情報提供をお願いいます。名付けて「ぽんぽこ・マップ」としました。
 これはまだ試みの段階ですが、玉川上水沿いで目撃情報を集めて地図上に点を打つことをしたいと思います。その場合、「なんとなく見たような気がする」というような情報は使えませんから、確実に「何月何日に自宅の庭で見た」「何月何日に小平市仲町のコンビニ++店の近くで目撃した」「写真も撮影した」というような情報がありがたいです。グーグルマップなどで地図上に位置が書いてあると大変助かります。氏名と連絡先もお願いします。
 
 情報はこのサイトのコメントとして送るか、以下のメールアドレスに送ってください。

   takatuki@azabu-u.ac.jp

記入例:2019年7月15日の夕方、武蔵立川駅の近くで親子連れのタヌキを見ました。立川市砂川4−7−12、緑野どん兵衛

 これまで情報は限定的ですが、こちら

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