玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

1月13日の観察会

2019-01-13 20:00:10 | 観察会
2019年1月13日に、今年初めての月一度の観察会をしました。今回は津田塾大学のタヌキの糞を調べることを目的としました。
 小平にタヌキが住んでいることは知る人は知っていますが、多くの人は関心がありません。考えてみれば市街地に囲まれた環境に中型哺乳類が生き延びていることは驚きでもあり、嬉しいことでもあります。そのことを多くの人と共有したいと思っています。そのことに玉川上水が貢献しているのは確かです。それは緑が細いながら連続しているからだと思います。特に津田塾大学は100年も経つシラカシの林があって玉川上水と連なっているので、まとまった緑があり、タヌキが住んでいることがわかっています。そして私たちは、津田塾大学のキャンパスには3箇所、府中街道を挟んだ雑木林に1箇所のタメフン場があることを確認しています。私はここを月2回くらいの頻度で訪問しています。
こうした調査とは別に、棚橋さんと豊口さんの協力を得て、タヌキの「動き」を調べています。ソーセージにプラスチックの「マーカー」を入れ、決まった場所においておくと、タヌキが食べてタメフン場に糞をします。それが回収されればその間をタヌキが動いたことがわかります。
 この調査をしていて、タヌキが府中街道を横切ることがわかりました。どちらの方向も1例ずつですが、とにかくあの交通量の多い府中街道をタヌキが横切っているということは、交通事故に遭う確率もあるということです。このことをもう少し確認したいと思い、12月30日に8箇所にマーカーを置きました。1箇所に20枚ですから、全部で160枚ということになります。
 これがどこのタメフン場で出てくるかを確認するのが今回の観察会の目的です。

 少し前まで、天気予報では雨または雪ということでしたが、昨日は10時頃からは晴れると言っていました。最近の天気予報はよく当たりますが、今回も9時半に集合して、津田塾大学に行く間に少しずつ明るくなって来ました。歩いている間に、スイカズラ、イヌツゲ、ムラサキシキブなどが実をつけていました。気の早いウグイスカグラがもう花をつけていました。


ウグイスカグラ

 久右衛門橋の近くに置いたソーセージの前にはセンサーカメラを置いていたのでチェックしましたが、一度ネコがきたのが写っているだけでした。


センサーカメラのデータを確認する


 それから府中街道の雑木林のカメラのチェックに行きました。ここは久右衛門橋よりも多く写っていましたが、ネコばかりでした。ただ1月12日に一枚だけタヌキが写っていました。



ネコ


1月12日に写っていたタヌキ


 その足で、少し北にあるタメフン場を確認したところ、新しい糞がありました。

 それから津田塾大学に入りました。まずタメフン2と呼んでいる場所に行き、少し糞を拾いました。



観察会で歩いたルート

 そのあとで玉川上水に接した柵の近くに置いたカメラを確認に行きました。タヌキが数日に一度くらいの頻度で写っていましたが、同じくらいの数でネコが写っており、一度ですが、ハクビシンも写っていました。


タヌキ


ネコ


ハクビシン


 その次にタメフン1に行きました。ここには大量の糞があり、手分けをして拾ってもらいました。センサーカメラにもほぼ毎日タヌキが写っていました。


タメフン1


タメフンを観察する


2頭連れのタヌキ


糞をするタヌキ


 タヌキの糞を拾うなどしたことのある人はまずないはずです。私は常備している割り箸を取り出して、拾ってもらいました。何事も体験です。


タヌキの糞を拾う参加者

 最後にタメフン3に行きました。ひと月ほど前に来た時はたくさんの糞があったのに、今回は新しい糞が少しだけでした。



タメフン3で糞を採集する。

 カメラにはタヌキがたくさん写っていました。ネコも写っていました。


糞をするタヌキ


2頭連れのタヌキ


ネコ

 この場所については、先日津田塾大学から連絡があって、水曜日から土曜日まで台風で折れたマツの木を伐採するということでした。確かにすぐ近くに大きな松の木の切り株がありました。その時は気づかなかったのですが、タメフン3にたくさんの松葉と松ぼっくりがありましたが、どうやら伐採するときに大量の松葉と松ぼっくりが積み重なってタメフンを覆ってしまい、その上に新しい糞がされたようです。
 そういうわけで、糞が集まったので、足洗い場で水洗させてもらいました。




タヌキの糞を水洗する


 ふるいに糞を入れて水を流しながら歯ブラシで崩して内容物を出します。ブドウの果皮と種子が目立ちました。



水洗する


糞の中身を調べる


 20個くらいすんだでしょうか、全然マーカーが出てこないので、「ダメかなあ」と言っていたとき、水口さんが「あ、マーカー」と言いました。見ると確かに水色のマーカーが見えました。


糞から出てきた水色のマーカー


よくみるともう1枚あり、さらによく見ると8枚もあり、しかもオレンジのも1枚ありました。


出てきたマーカー


 水色のマーカーは津田塾大のすぐ南の玉川上水沿いに置いたもの、オレンジ色は津田塾大の中に置いたものです。したがって目論見である府中街道を横切るという証拠は得られませんでした。もう少し粘りつよく続ける必要がありそうです。
 時間になったので、大学を出ることにしました。途中にフッキソウの果実がなっているのを見ました。


フッキソウ


 キャンパスを出て、玉川上水の南に行ってセンサーカメラを確認したら、12月31日と5日にタヌキが写っていました。



カメラデータをチェックする


タヌキ


 30日にソーセージを置いたので、翌日には来ていたということです。その後しばらく間がありましたが、ここにタヌキが来るのは確実です。キャンパス内に置いているカメラはほんのすぐ近くですから、ここでソーセージを食べて、柵を潜り、タメフン1で糞をしたというのが最もありそうなシナリオです。


マーカーの移動した最もあり得そうなルート


 近くにサルトリイバラが赤い実をつけていました。


サルトリイバラ



 水洗できなかった糞もかなりあるので、もう少し調べてみます*。
 津田塾大の南側は玉川上水らしい景観が見られるので、そこで記念撮影をしました。


最後に一言話しました。



「今日はありがとうございました。私はこのタヌキを次のように位置付けています。人の利便性を優先、というよりそれだけを求めて自然を破壊したのが都市でしょう。その都市を貫く形で玉川上水があり、それがタヌキのレヒュージアになっています。現代は、これをそのままの流れで絶滅させるか、なんとか残そうとするかの分かれ道に立っている時代なのだと思います。小平にタヌキが住んでいること自体があまり知られていません。ましてタヌキが交通事故にあっているなどほとんどの人が知られていません。そのことを知ってもらうための発信をすることで、その分かれ道の選択を考える根拠を示すことは意味があることだと思います。
 関連する話題が2つあります。一つは小平4小では市民による玉川上水の教育が行われていて、先日そこに招かれて話をしたのですが、校長先生が積極的で、子供にタヌキの話をして欲しいと言われています。そういう機会を生かして、子供を通じて短にタヌキが住んでいるという情報収集をしたいと思っています。
 もう一つは交通事故に関することです。私がいた麻布大学で野生動物の交通事故を調べたことがあります。相模原市と町田市の清掃局に連絡をとったら、イヌ・ネコを含む動物の事故死体は「ゴミ」として処理されるのですが、ペットは飼い主の苦情があるといけないのでしばらく冷凍保存します。そこから野生動物をもらって分析したのですが、いつどこで死んだものかがわかりました。小平でそれを聞いたら記録を取っていないということなので、お願いしたら、小平市では前向きに検討するが、周辺の市とも足並みを揃えないといけないので、しばらく待って欲しいと言われています。
 こうしたことが動き出せば、都市に生きる野生動物としてのタヌキの置かれた実態、それに基づいて我々がどうすべきかを考える機会になると思います。そのためにもう少し証拠になるデータを取りたいと思っています」

多くの写真は豊口信行さんの撮影です。ありがとうございました。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++;
* あとで水洗しましたが、当日集めたフンからは他のマーカーは確認できませんでした。
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1 コメント

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地図のタメフン2 (陣内利博)
2019-01-14 06:19:32
明けましておめでとうございます。
今回の収穫は大きいですね。
特に川を越えた可能性は興味津々です。
タヌキは橋は使わないですよね。

*地図のタメフン2の表示がかぶっています。
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