玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

2018年10月7日の観察会

2018-10-07 21:07:55 | 観察会



津田塾大学のタヌキについて一緒に調べている棚橋さんと豊口さんが9月29日にマーカー入りソーセージをおいてくれました。今回の調査はそのマーカーの確認を1つの目的にしました。少し説明が必要です。

 これはタヌキの動きを調べるための作業です。マーカーとはプラスチック片で、色と番号で区別できます。これをソーセージの中に入れておいておくと、タヌキが食べてタメフン場で糞をします。そうするとどこからどこまで動いたかがわかります。
 津田塾大学のタヌキは構内においたマーカー入りソーセージを食べ、かなりの数がタメフン場で回収され、構内をあちこち動いていることはわかりました。次の段階としてキャンパスの外の玉川上水沿いにおいたら、それが構内のタメフン場で出てくるだろうかということです。
 私は10月2日に回収し、構内3箇所のタメフン場のいずれからも回収ができました。もう一度回収して本日7日の観察会でマーカーが出るかどうか調べようと思っていたのですが、用事が立て込んで土曜日に行こうとしたら、津田塾大でイベントがあって土日は入構できないことがわかりました。
 一方、10月1日未明に台風24号が暴風を吹かせ、各地でたくさんの木が倒れました。玉川上水でも被害があったということなので、その観察もしたいと思いました。
 今日、集まってくれた人にはタヌキに興味がある人が多かったので、室内でのふん処理だけでなく、野外の糞を見てもらいたいと思いました。そこで、津田塾講内ではないですが、その向かいにある雑木林の中にもう一ヶ所タメフン場を確認しているので、それを見に行きました。

 幸い糞はありました。7、8月には分解されてほとんど集まらなかったのですが、9月中旬以降は少し見つかるようになりました。タヌキのタメフンを見たことのない人に見てもらいました。


タヌキの糞


糞を回収する


 玉川上水沿いに上流に向かいましたが、倒木は思ったほどはありませんでした。高野橋の近くには直径60cmほどのクヌギが倒れ、玉川上水をまたいで対岸のフェンスを潰してさらに歩道を挟んだフェンスも曲げていました。すぐに処理されたようで、太い幹がチェーンソーで短く切って片付けてありました。


倒れたクヌギを見る


片付けられたクヌギの木


 これだけの木が倒れるということは、どれだけ強い風が吹いたか、想像に余りあります。

「hardwoodっていうことば知ってる?」
「いいえ」
「針葉樹のことをsoftwood、広葉樹のことをhardwoodと言います。実際広葉樹が硬いんです。木偏に堅いと書いて樫だけど、その通りなんだ。ところで、oakは樫と訳されるけど、ヨーロッパ人がoakと言うときは落葉樹のことで、ナラと訳すべきです。oakは、コナラのように新緑が爽やかで、紅葉もきれいな明るい林のイメージ、それに比べるとカシは常緑で暗い林なので、oakをカシと訳すのは誤訳と言っても良いくらい。だから、もちろん家具の材料としては広葉樹が高級だけど、幹が曲がるので、建築材としては使いにくい。ま、針葉樹で作るのは利便性を優先したもので、ホンモノとは言えないかな。鉄道の枕木もクリ材で、一番丈夫なんですね」
などと雑談。

 途中でサワフタギ、ゴンズイ、ノイバラなどの果実があり、多肉果の説明をしました。これからいろいろな果実が色づきます。


サワフタギ


ゴンズイ


ノイバラ


多肉果の説明

 
 10月なのに30度もあったらしく、妙に暑い日でした。武蔵野美大について、2日に拾ったものを含めて、タヌキの糞の処理をすることにしました。

「フルイは径が0.5mmのものと1.0mmのものがあります。内容を量的に評価するときは0.5mmに統一していますが、それは終わって論文にもしたので、今年は1mmで主な内容を取り出して出現の有無だけをチェックしています。だから、どちらでもいいですから、こうして糞を出して水を流し、歯ブラシてこすって中身を出します」


糞をシャーレに出して水洗する



「私は糞をチョコピーに喩えますが、水洗ではチョコを水で流してピーナツを出すわけです」
「ポリ袋には紙切れが入っています。実はこれは紙ではなく、プラスチックの薄いもので、表面がざらつくので、鉛筆書きができます。だから雨が降っても、水の中でも鉛筆で書けるのです。ウォータープルーフというわけです。これが便利なのは、間違いがないということです。よくポリ袋から出して別の容器に入れる時、ポリに書いてある情報を写すのですが、人が移す時、数の中には必ず間違いがあるものです。これは、不思議なことですが、どうしてこんな単純なことを間違えるのかと思いますが、そういうことはあるもんなんです。でも、最初に書いたこの紙切れがあれば、書き写すということがないので、間違いがなくなります。とても重宝しています」
「終わったらシャーレに出してください。その時、必ず紙切れをつけてください」
こうして取り出したところ、多くの試料にカキの種子が入っていました。またムクノキも高頻度でした。そのほかにはエノキとブドウがありました。少数例に昆虫の翅、おそらくカタツムリと思われる胴体と貝殻のかけらがありました。



水洗した試料


糞からカキ、ムクノキなどの種子を取り出す


 作業をしていたら、国立で稲刈りをしてきたという関野先生が合流して糞洗いをしてくださいました。


糞洗いをする関野先生

 金子さんは近所で見知らぬ動物を見つけたのですが、まだへその緒をつけ、目も開いてなくて、なんだろうと思い、獣医さんに相談してもわからず、ネットで調べてどうやらタヌキらしいということで育て始めたそうです。大きくなったので、野外に放したけど、どうしているか気になるそうです。それはそうでしょう。私は金子さんから少し前にその相談をもらい、やり取りをしているうちに、観察会に参加することにしたとのことでした。金子さんがスマホに残している保護した時のタヌキの赤ちゃんの動画を見せてもらい、その可愛さに歓声が上がりました。
「これを見たらほっておけないよね」
自然で無事に暮らしていることを祈ります。

 最後に今日の内容をまとめて黒板を使って説明しました。ポイントは次の3つ
1)マーカー調査の目的と経緯。今回はマーカー回収は不成功に終わった。
2)津田塾大学のタヌキの食性は関東地方の雑木林のものに比べて栽培樹木と高木の多肉果が多い。それは津田塾大学のキャンパスの深林管理によっている
3)津田塾大学のタヌキの食性の季節変化は冬の鳥類、哺乳類、春から夏にかけての昆虫、秋の果実という推移をとる(こちら)。今回は秋の内容が確認できた。


タヌキの食性の特徴を説明する


写真はいつものように豊口さんと棚橋さんの協力によるものです。ありがとうございました。
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