玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

SLOSSってなに?

2016-03-30 22:23:40 | 生きもの基礎知識
SLOSSというのは保全生態学で有名な概念で、ことばの定義からいうとSingle Large Or Several Smallの頭文字を並べたものです。意味は「大きなひとつか、それともいくつかの小さいものか」ということです。
 保全生態学とは人間活動があまりに活発になって自然が破壊され、失われつつある現状を懸念して生態学の中から生まれた学問で、自然をいかに守るかを目指しています。自然が失われるなか、保護区が作られてきましたが、保護区を作るというより、開発をしないでおく場所を残すということです。農業や都市によって残せる自然が少なくなってゆくなかで、では同じ面積を残すとき、大きな保護区をひとつ、あるいは少数残すか、それとも小さな保護区をたくさんにするかが問題となります。
 保護の目的や対象とする生物によって、あるいは人間側の利用(ありていにいえば破壊)の目的によって違います。たとえば行動圏の広い大型肉食獣を守ろうとすれば広い面積が不可欠になりますからSingle Largeを選ばなければなりません。そういうことを考えて作った訳ではないとはいえ、皇居や明治神宮はこの大東京に稀有なSingle Largeです。
 そういう意味でいえば、玉川上水は長さは40kmありますが、幅は平均して10mほどでしょうか。もう少し広いとして仮に20mとしても40kmx0.02km=0.8平方キロとなります。なんと1平方キロにもならないのです。それに比べれば明治神宮は70平方キロもあるのです(ちなみに皇居は1.2平方キロほど)。もしこの面積をひとつの円(Single Large)とすると直径1km足らずにしかなりません(πr2=0.78)。ということは、わずか1平方キロの緑地を長さ40kmにも引き伸ばしたと見ることもできます。
 玉川上水の価値はこれだけで評価されるものではもちろんありませんが、とりあえず、関連している市町村がたくさんあるわりには実面積は狭いということは認識しておいように思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ポケット」

2016-03-30 18:59:42 | 生きもの基礎知識
玉川上水は当然ながら「細くて、長い」。このことは都市に残された自然をどう守るかという意味で重要な意味をもつ。このことをこのコーナーの「SLOSSってなに?」でとりあげた。
 細長い緑である玉川上水は、見方によれば、よく残っているといえるが、あやうさもあり、細いが故に残されなかったものも大いに違いない。
 そうした中で、玉川上水を見直すと、実は細長いばかりではなく、そこに、たとえば30メートル四方とか50メートル四方程度の保存林が残っていることがある。そういうところには幅20メートルほどの玉川上水にはない植物や動物が生き延びている可能性がある。
 私はこういう緑地を「ポケット」と呼ぶことにした。失われる生き物が狭いながら入り込んでいるというイメージである。
 津田塾大学のキャンパスもポケットのひとつであり、たしかにタヌキがいたが、これはひとつの証拠といえるだろう。


「ポケット」の例

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

葉 流れる

2016-03-30 16:37:27 | 生きもの基礎知識
葉の特徴を捉えるにはいくつかのポイントがあります。もちろん大きい、小さい、長い、短いといった基本的な特徴は重要ですが、もう少しつっこんだ区別点が必要になります。これはミズキの葉で、たいていの葉にあるように中央に1本軸があります。これは中肋といいます。中心になる肋骨ということです。そこから縁に向かって葉脈が伸びますが、ミズキの仲間は縁に近づくと縁に沿うようにカーブします。このことを「流れる」といいます。ナラやシデは流れないで直線的に伸びます。

 


ミズキ(左)、イヌシデ(右)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

単子葉植物と双子葉植物

2016-03-30 16:29:44 | 生きもの基礎知識
単子葉植物と双子葉植物

 中学校でならったはずですが、おさらいをします。「タンシヨウ」とひとつながりで覚えていますが、もともとは子葉が単(ひとつ)か双(ふたつ)かということです。単子葉植物の代表と言えるイネ科は種子から出ためは1本です。これが単子葉。これに対してたとえばマメ科でもバラ科でも「ふたば」が出てきます。


単子葉植物(シバ)と双子葉植物(ケンポナシ)の実生

 これは定義のようなものですが、実際には「見た目」が大いに違うので、区別をするのに便利です。たとえば単子葉植物では葉脈が平行で、双子葉植物は網目のようになっています。網目は細胞で生産したものを無数の葉脈で送る管のシステムですから、たとえば道路にも似ています。家から狭い道を通って少し大きい道に出て、それからバスの通るような道に出て、さらに何車線もあるような道に出る。そうして人や車が集まってきます。川の支流と本流もそうだし、血管やサンゴなどもそうです。ただ道路や川は分かれたあとに合流したりしますが、葉脈や血管ではそういうことはりません。


テイカカズラの葉の拡大 水系のようにも、道路網のようにもみえる

 だから単子葉植物の葉は一般には細長く、双子葉植物は楕円のようなものを基本とし、柄があります。

 
単子葉植物(イネ科、左)と双子葉植物(ホタルブクロ、右)の葉

細長い単子葉でもイグサやツルボのようになると、「線」のようになります。ただし、ユリなどはわりあい幅が広いし、ユリ科のカタクリなどになると楕円形だし、サルトリイバラなどはほぼ円形です。それでも葉脈をみると平行です。

  
カタクリ(左)とサルトリイバラ(右)

 花や果実はまた別に説明しましょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

植物の類型

2016-03-30 12:22:26 | 生きもの基礎知識
植物の類型
 一口に植物といってもあまりにたくさんあって、これを全部知らないと植物を知ったことにならないと思うと、初めから「無理、無理」と思ってしまいます。日本は植物がきわめて豊富なので、その真っ向勝負は無謀というもの、なにしろヨーロッパ全体に匹敵するかそれより多いのですから。早い話、図鑑が1冊ではおさまらない。シダはもちろん、種子植物も草本は単子葉、双子葉植物の合弁花、離弁花などに分かれており、これとは別に木本植物があって、それも1冊にまとまらないので2巻に分かれています。だから、玉川上水なら玉川上水に生えていて、花を咲かせたものだけでも、ひとつ、ふたつと覚えてゆき、同時にその特徴を類型してゆくのがよいと思います。
 図鑑が何冊かに分かれているといいましたが、その分け方が参考になります。シダは胞子を作るので、これは種子を作る種子植物と分けられます。シダはかなり直感的にわかりますね(ただしツクシもシダであることをお忘れなく)。
 種子植物は大きく単子葉植物と双子葉植物に分かれます。木本であるか草本であるかもひつつの類型ですが、ひとつの分類群に木本と草本の両方があることも珍しくありません。たとえばバラ科ではサクラは木本、ミツバツチグリは草本で、なかにはキイチゴの仲間に木本だか草本だかわからないようなものもあります。そういう類型の仕方もしっておくと役に立ちます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする