2月9日に観察会をしました。寒くはありましたが、明るくて青空の日でした。この季節は花には早い、果実には遅いで、植物が乏しいので鳥の観察をすることにして、鳥に詳しい大出水幹男さんを講師にお願いしました。
大出水さん(左)
鷹野橋から上流にゆっくり歩きました。マユミやノイバラの果実が少しありましたが、マユミは種子はなくなっていました。
マユミ
ノイバラ
鳥の所在は声で判断するそうで、大出水さんからはカラ類の混群の話がありました。今の季節にはシジュウカラ、エナガ、ヤマガラ、コゲラなどが群れを作るそうです。その意味については色々見解があるようです。エナガがいたので、双眼鏡で確認しました。羽の一部に紫色が見えてきれいでした。
それからコゲラもいました。確かにキツツキで、木の幹をトントンと叩いていました。そのコゲラは4メートルほどの高さの木の枝にある薄茶色のものをしつこくつついていました。カマキリの卵かという声がありましたが、木の高さが高すぎると思いました。蛾の繭の可能性が大きいと思いました。
ゆっくり進んでは解説を聞き、しばらく上を見るということを繰り返しました。
しばらく行くとカラスがいました。ハシブトガラスでした。カラスはあまり良いイメージがなくてどちらかといえば迷惑な鳥とされがちですが。大出水さんは大好きだそうです。
私が東大にいた時、教授の樋口広芳先生と研究室を運営していました。先生は鳥の大学者で、カラスは研究対象の一つでした。私が仙台にいた頃、同じ大学宿舎の心理学の先生が、
カラスが信号のところにクルミを置いて、自動車に引かせて割れたクルミを食べるというおもしろう現象を発見していました。樋口先生は「鳥の遊び」に関心があり、一緒に共同研究をしていました。その時、私は金華山でカラスがおかしな遊びをするのを観察していました。調査で山から降りてきて足が疲れているので、神社で一休みしていた時です。芝生に横になっていたシカが慌てて立ち上がりました。どうしたんだろうと思ってみていたら、なんとカラスがシカの背中にシカの糞粒を載せるのです。どうするのかとそのままみていたら、今度はその背中に乗りました。そうしてその糞を改めてくちばしで挟んではなんとシカの耳に入れたのです。それで、またシカは嫌がって立ち上がりました。
こんなことをしても、カラスにはなんと得もないし、シカが嫌がるだけです。人間的にいえば、カラスはシカが困ることをして楽しんでいるとしか思えませんでした。そのことを樋口先生は大変おもしろがってその写真をぜひ使わせてくれということでした。
先日、2月20日に民放テレビでカラス特集をするので、そこで使わせて欲しいと連絡がありました。
大出水さんは日本自然保護協会の自然観察指導員の資格をお持ちで、色々資料も持参してくださいました。玉川上水に多い鳥のトップ4はキジバト、ハシブトガラス、ヒヨドリ、シジュウカラだそうです。鳥の写真やこういうデータをファイルにして説明してもらったのでよくわかりました。
そんな話をしていたら、大出水さんが何かを見つけたようでした。聞くと「アオゲラです」ということでした。そちらを見ると確かにいました。
アオゲラ
私がBBCから津田塾大学のタヌキの取材を受けた時、キャンパスの木にアオゲラがいて、スタッフは大喜びでした。ヨーロッパにはいないのでそうです。Green woodpecker(緑のキツツキ)と呼んでいました。その時はメジロにも喜んでいました。こちらはそのままwhite-eyeでした。
この観察会はいつもゆっくり歩くのですが、今日はまた格別でした。鳥がいるとそこでじっとして樹上を見上げて説明を聞くので、なかなか進みません。私は歩かないと寒くてかなわないと思い、少し先を歩きました。上水公園のところでUターンして今度は南側を歩くことにしました。キヅタの果実などがありましたが、ムラサキシキブなどはすっかりなくなっていました。イヌシデは葉の芽も花の芽も膨らんでいました。
キヅタ
イヌシデ
またヤツデの花や果実がありましたが、いくつかのものは果実がなくなっており、ヒヨドリがよく食べるそうです。
ヤツデ
大出水さんがこの数年で増えた鳥、減った鳥の話をデータとともに説明してくださいました。それによるとヤマガラは増えたそうです。私もエゴノキの果実を食べるのをみたことがあります。逆に減ったのはドバトとコゲラだそうです。その原因ははっきりしないものの、オオタカが増えて食べられるようになったのではないかということでした。オオタカといえば、少し前には食物連鎖の頂点にいる「頂点捕食者」として、オオタカがいれば開発工事などが許可されないので、環境アセスの大きなポイントになっていました。ところが最近は都市でもオオタカが増えたということを聞きます。理由の説明は諸説あるようですが、大出水さんによると都会で餌になる鳥がいることを学んだのではないかということでした。かつてオオタカがいた奥山に行ってもいないことがあるそうです。
またオオタカやツミが鳥を攻撃して死体を出すので、それを使ってエナガが巣の材料に使うのだそうです。この辺り、自然の生き物のつながりというのは実に複雑だと思いました。
長年観察して記録をとっていると鳥の時間的変化が分かるようです。森林は確実の育っています。下に生えるアオキやヤツデなどの常緑低木や、マユミ。エゴノキ、ムラサキシキブなどは藪を作っています。そういう変化は鳥に影響するはずです。武蔵野台地と狭山丘陵で森林の変化と鳥類の関係を調べた論文ががあります(こちら)。それによると雑木林の管理がされなくなって常緑樹が増えたため、ヤブサメやメジロのようなそういう環境を好む鳥類が増えたとされています。
最後に鷹野橋に戻って解散としました。
「今日は普段見ない鳥のことが大出水さんの解説で勉強できました。特に珍しい鳥がいたわけではありませんが、こうして地道にデータを取ると、年変化も示すことができます。私たちは花マップを2年ほどかけて作りましたが、そこには今記録しておけば、例えば10年後に<えっ、ここにこんな花があったの?>とか<今たくさんあるのに、昔は少なかったんだ>とかいうことがわかるわけで、同じ考えだと思います。その意味で、改めてこういう地道な調査が大切だと思いました。大出水さん、ありがとうございました。」
写真の多くは豊口さんによるものです。特に鳥の写真が素晴らしいですね。
大出水さん(左)
鷹野橋から上流にゆっくり歩きました。マユミやノイバラの果実が少しありましたが、マユミは種子はなくなっていました。
マユミ
ノイバラ
鳥の所在は声で判断するそうで、大出水さんからはカラ類の混群の話がありました。今の季節にはシジュウカラ、エナガ、ヤマガラ、コゲラなどが群れを作るそうです。その意味については色々見解があるようです。エナガがいたので、双眼鏡で確認しました。羽の一部に紫色が見えてきれいでした。
それからコゲラもいました。確かにキツツキで、木の幹をトントンと叩いていました。そのコゲラは4メートルほどの高さの木の枝にある薄茶色のものをしつこくつついていました。カマキリの卵かという声がありましたが、木の高さが高すぎると思いました。蛾の繭の可能性が大きいと思いました。
ゆっくり進んでは解説を聞き、しばらく上を見るということを繰り返しました。
しばらく行くとカラスがいました。ハシブトガラスでした。カラスはあまり良いイメージがなくてどちらかといえば迷惑な鳥とされがちですが。大出水さんは大好きだそうです。
私が東大にいた時、教授の樋口広芳先生と研究室を運営していました。先生は鳥の大学者で、カラスは研究対象の一つでした。私が仙台にいた頃、同じ大学宿舎の心理学の先生が、
カラスが信号のところにクルミを置いて、自動車に引かせて割れたクルミを食べるというおもしろう現象を発見していました。樋口先生は「鳥の遊び」に関心があり、一緒に共同研究をしていました。その時、私は金華山でカラスがおかしな遊びをするのを観察していました。調査で山から降りてきて足が疲れているので、神社で一休みしていた時です。芝生に横になっていたシカが慌てて立ち上がりました。どうしたんだろうと思ってみていたら、なんとカラスがシカの背中にシカの糞粒を載せるのです。どうするのかとそのままみていたら、今度はその背中に乗りました。そうしてその糞を改めてくちばしで挟んではなんとシカの耳に入れたのです。それで、またシカは嫌がって立ち上がりました。
こんなことをしても、カラスにはなんと得もないし、シカが嫌がるだけです。人間的にいえば、カラスはシカが困ることをして楽しんでいるとしか思えませんでした。そのことを樋口先生は大変おもしろがってその写真をぜひ使わせてくれということでした。
先日、2月20日に民放テレビでカラス特集をするので、そこで使わせて欲しいと連絡がありました。
大出水さんは日本自然保護協会の自然観察指導員の資格をお持ちで、色々資料も持参してくださいました。玉川上水に多い鳥のトップ4はキジバト、ハシブトガラス、ヒヨドリ、シジュウカラだそうです。鳥の写真やこういうデータをファイルにして説明してもらったのでよくわかりました。
そんな話をしていたら、大出水さんが何かを見つけたようでした。聞くと「アオゲラです」ということでした。そちらを見ると確かにいました。
アオゲラ
私がBBCから津田塾大学のタヌキの取材を受けた時、キャンパスの木にアオゲラがいて、スタッフは大喜びでした。ヨーロッパにはいないのでそうです。Green woodpecker(緑のキツツキ)と呼んでいました。その時はメジロにも喜んでいました。こちらはそのままwhite-eyeでした。
この観察会はいつもゆっくり歩くのですが、今日はまた格別でした。鳥がいるとそこでじっとして樹上を見上げて説明を聞くので、なかなか進みません。私は歩かないと寒くてかなわないと思い、少し先を歩きました。上水公園のところでUターンして今度は南側を歩くことにしました。キヅタの果実などがありましたが、ムラサキシキブなどはすっかりなくなっていました。イヌシデは葉の芽も花の芽も膨らんでいました。
キヅタ
イヌシデ
またヤツデの花や果実がありましたが、いくつかのものは果実がなくなっており、ヒヨドリがよく食べるそうです。
ヤツデ
大出水さんがこの数年で増えた鳥、減った鳥の話をデータとともに説明してくださいました。それによるとヤマガラは増えたそうです。私もエゴノキの果実を食べるのをみたことがあります。逆に減ったのはドバトとコゲラだそうです。その原因ははっきりしないものの、オオタカが増えて食べられるようになったのではないかということでした。オオタカといえば、少し前には食物連鎖の頂点にいる「頂点捕食者」として、オオタカがいれば開発工事などが許可されないので、環境アセスの大きなポイントになっていました。ところが最近は都市でもオオタカが増えたということを聞きます。理由の説明は諸説あるようですが、大出水さんによると都会で餌になる鳥がいることを学んだのではないかということでした。かつてオオタカがいた奥山に行ってもいないことがあるそうです。
またオオタカやツミが鳥を攻撃して死体を出すので、それを使ってエナガが巣の材料に使うのだそうです。この辺り、自然の生き物のつながりというのは実に複雑だと思いました。
長年観察して記録をとっていると鳥の時間的変化が分かるようです。森林は確実の育っています。下に生えるアオキやヤツデなどの常緑低木や、マユミ。エゴノキ、ムラサキシキブなどは藪を作っています。そういう変化は鳥に影響するはずです。武蔵野台地と狭山丘陵で森林の変化と鳥類の関係を調べた論文ががあります(こちら)。それによると雑木林の管理がされなくなって常緑樹が増えたため、ヤブサメやメジロのようなそういう環境を好む鳥類が増えたとされています。
最後に鷹野橋に戻って解散としました。
「今日は普段見ない鳥のことが大出水さんの解説で勉強できました。特に珍しい鳥がいたわけではありませんが、こうして地道にデータを取ると、年変化も示すことができます。私たちは花マップを2年ほどかけて作りましたが、そこには今記録しておけば、例えば10年後に<えっ、ここにこんな花があったの?>とか<今たくさんあるのに、昔は少なかったんだ>とかいうことがわかるわけで、同じ考えだと思います。その意味で、改めてこういう地道な調査が大切だと思いました。大出水さん、ありがとうございました。」
写真の多くは豊口さんによるものです。特に鳥の写真が素晴らしいですね。
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