玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

玉川上水にはフン虫がいるよ 2021.9.25

2021-09-25 15:24:34 | 観察会
2021年9月25日、鷹の台のうさぎ橋に子供12人、大人13人が集まりました。昨夜少し雨が降って天気が心配されましたが、なんとか大丈夫そうでした。

糞虫トラップの説明(リー智子撮影)

少し説明してから、昨夕セットしておいた糞虫トラップ9つの確認に行きました。糞虫トラップとは直径10 cmほどのプラスチック容器で、上に割り箸をのせ、そこにティーパックに入れた犬の糞を洗濯バサミでぶら下げたものです。容器の底に少し水を入れて糞虫が飛んで逃げないようにしました。

糞虫トラップ

 ただ、このところ急に涼しくなり、昆虫は不活発になっているので、来ているかどうかわかりませんでした。1番目のトラップに行くと、ぱっとみて何匹か入っているのが見えました。

「いましたよ!」
 というと、皆さんから歓声が上がりました。子供に見せると覗き込んでいました。

トラップに入っていた糞虫を覗く(リー智子撮影)

 持参した茶こしに受けて水を流すと茶こしにコブマルエンマコガネが残りました。それをポリ袋に入れました。同時に、一人の子に終わったティーパックに入ったフンと、割り箸、洗濯バサミを回収してもらいました。

 その次のトラップも、その次のトラップも入っていました。


トラップ(右側の小さい白いもの)と覗く子供達

「ついでに説明しておくと、たくさんの木に赤いテープがついていますが、これは伐採予定の印です。去年からナラの木がナラ枯れを起こして、夏でも枯葉になっています。これはカシノナガキクイムシというキクイムシが幹にトンネルを開け、幹に水が流れなくなるためです。こうなると木は枯れてしまうので、そのまま放置すると倒れて危険だから伐採するわけです」

ナラ枯れのコナラでカシノナガキクイムシの説明(リー智子撮影)

 そう言って鋸屑のような木屑の塊を見ていたら、小さな虫がいました。拾ってみるとカシノナガキクイムシ(カシナガ)でした。

 
カシノナガキクイムシ 格子間隔は5 mm

 こうして9つのトラップをチェックしましたが、なんとゼロだったのは一つだけで合計で36匹ものコブマルエンマコガネと1匹のエンマムシが入っていました。ハエとダンゴムシも少しいましたが、これらは数えていません。

「皆さん、考えてください。これだけいたということは、玉川上水にはどこにでも糞虫がいるということです。一体、どうやってここにたどり着くのでしょう?」
「それは匂いです。糞虫は飛びながらパトロールして、少しでも匂いがあれば、そちらに飛び、さらに強い匂いの方に飛ぶということを繰り返して、昨夜か今朝、ここにたどり着いたはずです。すごいものです。人は嗅覚が悪い動物だから、我々にはできないことです。大したものです」

トラップに入った糞虫

「今日はほとんどがエンマコガネですが、これをもう一晩おいておくと、ダンゴムシが増えます。ダンゴムシは飛べないから、匂いを捉えてもトラップの壁を登ったりして時間がかかるということもあるかもしれません。でも、私はネズミの死体を置いておいたことがありますが、最初はハエが飛んできて、その後シデムシがきて、最後にダンゴムシがきます。多分、新鮮な糞や死体と<熟成モノ>とでは出す匂いが違い、ダンゴムシは最終的な分解をする役割なのだと思います」
と子供そっちのけで大人に説明していました。



 最後の9番目を回収し終わったとき、右足にチクリと痛みを感じました。何が起きたかわからなかったのですが、もう1箇所別の痛みがあったときにハチに刺されたとわかりました。ジバチ(クロスズメバチ)です。


私を刺したクロアシナガバチ

ジバチは地下に巣を作るので、どうやら私がその上を踏んだために、ハチが怒って攻撃してきたようです。名前はスズメバチですが小さいハチです。ただ痛みはかなりきついです。一人の男の子も刺されたようです。それで慌てて、
「ハチに刺されたから逃げて!」
と言って移動してもらいました。私も歩いて行きましたが、その後も左足を刺され右足は複数箇所刺されました。どうやら私とその子だけが狙われているようです。刺された男の子はハチがズボンの下に入って刺したようで、服を脱ぎました。リーさんがポイズンリムーバーという吸い取り器で吸引しましたが、効果があったかどうかわかりません。本人は冷静で「痛いけど、我慢できる痛さです」と言っていました*。アレルギー反応はないようでしたが、緊急医療室に行ってもらうことにしました。私は移動しましたが、その後も少しまとわり疲れました。間違いなく、さしたハチが何らかの液を出し、その匂いが私についていて、それを狙って攻撃をしているようでした。

* 後で聞いたら、診療所で大丈夫と言われたそうで安心しました。

 そんなアクシデントはありましたが、予定していた丘の上に行って、ポリ袋に入った糞虫を手に握ってもらうことにしました。
「あ、動いている」
「すごいパワーだ」
といった声が聞こえました。

 教材を入れた袋を持っていた人がハチに刺された子を診療所に連れて行くために隣の恋ヶ窪の駅まで行っていたので、彼女が戻るまでスケッチをしてもらいました。
 それが届いたので、説明をしました。一つは紙粘土で作ったコブマルエンマコガネの模型です。大きいので迫力があり、歓声が沸きました。

糞虫の模型を見せる(撮影小野さん)



 もう一つは昨夜作ったタヌキの模型です。

タヌキの模型

「うちの近所に角上という魚屋があって、発砲スチロールをくれるのでもらってきてこれを作りました。それでね、口から食べ物を入れますね」
と言って毛糸の玉を入れて、棒で押しました。この模型は厚さ3cmくらいの発泡スチロールの板を3枚重ねにしてあり、中央の「胴体」の部分は中空になっていて、口からお尻までが「筒」つまりトンネルになっています。



棒を押しながら・・・・
「そうするとね、ほらお尻から出てきた」

タヌキの模型の口の側から「糞」を棒で押すと・・・(リー智子撮影)

 子供はもちろん大人も大声で喜びました。
3、4回繰り返しました。結果はわかっているのに、その度に皆さん大喜びしてくれました。

お尻から糞(毛糸玉)が出て来た(リー智子撮影)

 「動物ならなんでも、人間でも偉い人でも誰でも、口から食べ物を入れて、お尻からウンチを出す、これは皆同じです。だから自然の中にはどこにでもウンチがあり、だからそれを食べる糞虫がいる。糞というのはとても栄養があるからそれを食べて、分解するわけです。そのおかげで糞はすぐに分解されて土に環(かえ)り、植物の栄養になるわけです。だから<糞虫なんて汚い>と思うでしょうが、自然界で重要な働きをしているわけです」
「では玉川上水では糞虫の食べ物、つまり糞はどうなっているでしょう」
「私が思うに、犬の散歩で糞をしたら、草むらに残す人もいると思います。それにすぐそこの津田塾大学には確実にタヌキがいます」
「へえーそうなんだ」
「はい。そして玉川上水と行き来していることもセンサーカメラで確認しました」

「玉川上水は一時は埋めてしまおうとか、今でも道路を付けようとかいう動きがありますが、残そうという人もいたおかげで今こうして緑が残っています。玉川上水の中でも小平にはいい林が残っており、いい林があれば鳥もタヌキも昆虫もいます。玉川上水の自然を楽しむのにもいろいろあって散歩をして緑を見るという楽しみ方もあるけど、私はもうちょっと突っ込んでその生き物がどう暮らしているかを調べています。調べてみれば、いることさえ知られていない昆虫がいて、しかも重要な働きをしていることがわかる。そうすると、また玉川上水が違って見えます。そういうことを伝えたいし、特に子供に知ってもらいたいと思っています」

子供たちのスケッチもできたので(こちら)、記念撮影をし、挨拶をして解散としました。何人かはコブマルエンマコガネを飼育すると言って持ち帰りました。


参加者からの感想は こちら

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スケッチ作品

2021-09-25 09:07:05 | 5月の植物
++++++++ 子供たちのスケッチ作品 ++++++++++++




これは大人



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参加者の感想

2021-09-25 05:07:21 | 5月の植物
あいうえお順

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陣内
 先日は、玉川上水散策ありがとうございました。まずは、スズメバチに刺されたというお子さんが無事であったと聞いて安心しました。高槻先生はその後大丈夫だったのでしょうか? 私は長男の用事で都合がつかなかったのですが、夫と小学一年生の次男が参加しました。夫が撮った写真と子供の報告から楽しく刺激に満ちた時間であったことが推測できました。罠にはまず最初に糞虫やハエが、その後ダンゴ虫が寄ってくることや、糞虫を手の中に収めた時の力強さや動きの速さ、スズメバチが襲って来たことを話してくれました。
 帰宅後はすぐに頂いた糞虫に土を用意してやり、餌は腐ったハムか人間のうんちと言うので、早速ハムを与え飼育を始めています。息子は昆虫や植物のお世話や観察が好きなので、家でも楽しませてもらっています。楽しく貴重な体験の機会をありがとうございました。 

以下、夫の感想です。
 「玉川上水には糞虫がいるよ」に参加し、親子ともに大変に有意義な時間を過ごすことが出来ました。小学校一年の息子は、始めは行くのを渋っていたのですが、虫取りが始まるとすぐに嬉しそうに生き生きと参加し始めました。勉強というのは本来は楽しいものだというのは、その通りだと思いました。貴重な機会をどうもありがとうございました。 

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新村(しんむら)家より。

☆父
 地味な虫にも大事な役割があることを知った。拡大して絵を書くことで、虫の体の仕組みが良く分かった。クロスズメバチも知ることができた。玉川上水の水の中の生き物、土の中の生き物も生態観察してみたい。

☆そうすけ(5歳)
 楽しかった。もっとみんなで観察したかった。タヌキの模型が可愛いかった。
また、観察会に行きたい。くま虫の観察もしてみたい。

☆母
 先生の説明がとても分かりやすかったです。ただ見て終わるのでなく、描いてみることが大切と実感しました。描くために良く観察したおかげで、足の特徴と役割を知ることができました。深く見て考えて学べました。親もこの体験をすることで、子どもとの学びの仕方が分かりました!!また、参加したいです。
観察会のために、色々と準備して下さり感謝です。ありがとうございました。

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田口瑛太 母淳子 
 糞虫観察に参加させていただき、少しの時間でしたがとても勉強になりました。クロスズメバチに刺されたのは・・・うちの息子です。ハチに刺されるのはもう4回目なので親は面食らってしまいましたが、刺された後にすぐにリーさんがポイズンリムーバーで針を抜いて下さった処置も早く、局所の腫れのみでおさまり、その後病院へ行きましたが、息子は至って元気です。知らない土地でしたので参加された方が隣りの駅まで付き添って下さったり病院の場所を教えていただいたり、とても心強かったです。感謝しています。ありがとうございました。
 息子は最後まで参加したかったと残念がっていましたが、糞虫の事以外にも色々な学びがあったと思います。きっと大事な経験だったと思いますので、これから活かしていきたいと思います。
 高槻先生、リーさん、他の参加者の皆様ありがとうございました。またの機会どうぞよろしくお願いいたします。

++++++++++++++++++ 
中嶋幸子
 初めて観察会に参加をさせて頂きましたがとても有意義な時間となりました。玉川上水の観察会を知るきっかけとなったのは関野さんの地球永住計画を通じてです。以前より行われていたは知っておりましたが、去年まで大田区に住んでおり子供2人(7歳と2歳)を連れてゆくの事は難しく、申し込みを断念しておりました。しかしコロナを機に在宅勤務の回数増えたため、勤務地は遠くなるものの、実家(八王子)に少しでも近くに住みたいと思い、小金井に転居しました。それで念願の玉川上水の観察会に参加できたのでとても嬉しかったです。
 今回参加した息子は小学1年です。さまざまな事に対して「なんで?」と聞く年頃なので、できるだけ答えてはおりますが、私だけで答えられることはほんの一部、私は特に昆虫などの自然界の生き物については興味も持ったことがなく知識はゼロ。私が彼に一番興味を持ってもらいたいのは、自然、そして地球です。このことを親子ともに教えて頂けるのはとてもありがたかったです。
 また今回のテーマは「糞虫」とのことで、糞虫で自然を学ぶと共に人間社会の矛盾を学ぶことが出来ました。今の人間社会において糞はただのゴミですが、自然界において糞は栄養。循環の営みの中に組み込まれてたものということを強く感じることができました。人間社会と自然界では真逆のとらえ方となるのはとても興味深かったです。さらに、顕微鏡や手作りの模型もあり、貴重な体験をすることが出来ました。事前準備等いろいろと大変だったと思います。高槻先生・リーさんありがとうございました。

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韓昌道
 娘(5歳):絵を描くのがとっても楽しかったです。 ウンチを食べる虫がいるのがすごかったです!
 私:生き物観察も楽しいですが、高槻先生の準備してくださる工作物に毎回関心させられ、大変楽しみです。教育的な効果も素晴らしいと思います。子どもたちにとって大変貴重な学びの機会を提供していると感じました。

韓さん父子(撮影小野さん)

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リー智子(さとこ、主催者)
 タイトルがとても面白いです。高槻先生に出会うまでは、糞虫が玉川上水にいるかどうかなど考えたこともありませんでした。確かにいろいろな生き物が糞をして、それを食べるものがいなければ、玉川上水は糞だらけになってしまいます。糞虫は糞を壊すために力強い手足を持っています。こどもたちの手のひらの中で糞虫の小さな手足が思いもよらない強さで搔き分ける感触は、とっても新鮮なものだったと思います。
 事件がありました。高槻先生が蜂の巣をふんづけたからか、たくさんの蜂がその現場にいる人を襲ったのです。フェロモンを人にふりかけたのか、そばにいた人だけを狙いました。観客はたくさんいたのに、先生が蜂の巣を踏んだ時に近くにいなかった人は、蜂が近くを飛んでいても、全く襲われませんでした。一旦攻撃を受けた人だけ、随分遠くまで追われ続けていました。そのことが私にはとても興味深かったです。自然というのは、計り知れないものだな、と改めて思いました。

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