2021年9月25日、鷹の台のうさぎ橋に子供12人、大人13人が集まりました。昨夜少し雨が降って天気が心配されましたが、なんとか大丈夫そうでした。
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糞虫トラップの説明(リー智子撮影)
少し説明してから、昨夕セットしておいた糞虫トラップ9つの確認に行きました。糞虫トラップとは直径10 cmほどのプラスチック容器で、上に割り箸をのせ、そこにティーパックに入れた犬の糞を洗濯バサミでぶら下げたものです。容器の底に少し水を入れて糞虫が飛んで逃げないようにしました。
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糞虫トラップ
ただ、このところ急に涼しくなり、昆虫は不活発になっているので、来ているかどうかわかりませんでした。1番目のトラップに行くと、ぱっとみて何匹か入っているのが見えました。
「いましたよ!」
というと、皆さんから歓声が上がりました。子供に見せると覗き込んでいました。
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トラップに入っていた糞虫を覗く(リー智子撮影)
持参した茶こしに受けて水を流すと茶こしにコブマルエンマコガネが残りました。それをポリ袋に入れました。同時に、一人の子に終わったティーパックに入ったフンと、割り箸、洗濯バサミを回収してもらいました。
その次のトラップも、その次のトラップも入っていました。
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トラップ(右側の小さい白いもの)と覗く子供達
「ついでに説明しておくと、たくさんの木に赤いテープがついていますが、これは伐採予定の印です。去年からナラの木がナラ枯れを起こして、夏でも枯葉になっています。これはカシノナガキクイムシというキクイムシが幹にトンネルを開け、幹に水が流れなくなるためです。こうなると木は枯れてしまうので、そのまま放置すると倒れて危険だから伐採するわけです」
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ナラ枯れのコナラでカシノナガキクイムシの説明(リー智子撮影)
そう言って鋸屑のような木屑の塊を見ていたら、小さな虫がいました。拾ってみるとカシノナガキクイムシ(カシナガ)でした。
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カシノナガキクイムシ 格子間隔は5 mm
こうして9つのトラップをチェックしましたが、なんとゼロだったのは一つだけで合計で36匹ものコブマルエンマコガネと1匹のエンマムシが入っていました。ハエとダンゴムシも少しいましたが、これらは数えていません。
「皆さん、考えてください。これだけいたということは、玉川上水にはどこにでも糞虫がいるということです。一体、どうやってここにたどり着くのでしょう?」
「それは匂いです。糞虫は飛びながらパトロールして、少しでも匂いがあれば、そちらに飛び、さらに強い匂いの方に飛ぶということを繰り返して、昨夜か今朝、ここにたどり着いたはずです。すごいものです。人は嗅覚が悪い動物だから、我々にはできないことです。大したものです」
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トラップに入った糞虫
「今日はほとんどがエンマコガネですが、これをもう一晩おいておくと、ダンゴムシが増えます。ダンゴムシは飛べないから、匂いを捉えてもトラップの壁を登ったりして時間がかかるということもあるかもしれません。でも、私はネズミの死体を置いておいたことがありますが、最初はハエが飛んできて、その後シデムシがきて、最後にダンゴムシがきます。多分、新鮮な糞や死体と<熟成モノ>とでは出す匂いが違い、ダンゴムシは最終的な分解をする役割なのだと思います」
と子供そっちのけで大人に説明していました。
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最後の9番目を回収し終わったとき、右足にチクリと痛みを感じました。何が起きたかわからなかったのですが、もう1箇所別の痛みがあったときにハチに刺されたとわかりました。ジバチ(クロスズメバチ)です。
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私を刺したクロアシナガバチ
ジバチは地下に巣を作るので、どうやら私がその上を踏んだために、ハチが怒って攻撃してきたようです。名前はスズメバチですが小さいハチです。ただ痛みはかなりきついです。一人の男の子も刺されたようです。それで慌てて、
「ハチに刺されたから逃げて!」
と言って移動してもらいました。私も歩いて行きましたが、その後も左足を刺され右足は複数箇所刺されました。どうやら私とその子だけが狙われているようです。刺された男の子はハチがズボンの下に入って刺したようで、服を脱ぎました。リーさんがポイズンリムーバーという吸い取り器で吸引しましたが、効果があったかどうかわかりません。本人は冷静で「痛いけど、我慢できる痛さです」と言っていました*。アレルギー反応はないようでしたが、緊急医療室に行ってもらうことにしました。私は移動しましたが、その後も少しまとわり疲れました。間違いなく、さしたハチが何らかの液を出し、その匂いが私についていて、それを狙って攻撃をしているようでした。
* 後で聞いたら、診療所で大丈夫と言われたそうで安心しました。
そんなアクシデントはありましたが、予定していた丘の上に行って、ポリ袋に入った糞虫を手に握ってもらうことにしました。
「あ、動いている」
「すごいパワーだ」
といった声が聞こえました。
教材を入れた袋を持っていた人がハチに刺された子を診療所に連れて行くために隣の恋ヶ窪の駅まで行っていたので、彼女が戻るまでスケッチをしてもらいました。
それが届いたので、説明をしました。一つは紙粘土で作ったコブマルエンマコガネの模型です。大きいので迫力があり、歓声が沸きました。
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糞虫の模型を見せる(撮影小野さん)
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もう一つは昨夜作ったタヌキの模型です。
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タヌキの模型
「うちの近所に角上という魚屋があって、発砲スチロールをくれるのでもらってきてこれを作りました。それでね、口から食べ物を入れますね」
と言って毛糸の玉を入れて、棒で押しました。この模型は厚さ3cmくらいの発泡スチロールの板を3枚重ねにしてあり、中央の「胴体」の部分は中空になっていて、口からお尻までが「筒」つまりトンネルになっています。
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棒を押しながら・・・・
「そうするとね、ほらお尻から出てきた」
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タヌキの模型の口の側から「糞」を棒で押すと・・・(リー智子撮影)
子供はもちろん大人も大声で喜びました。
3、4回繰り返しました。結果はわかっているのに、その度に皆さん大喜びしてくれました。
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お尻から糞(毛糸玉)が出て来た(リー智子撮影)
「動物ならなんでも、人間でも偉い人でも誰でも、口から食べ物を入れて、お尻からウンチを出す、これは皆同じです。だから自然の中にはどこにでもウンチがあり、だからそれを食べる糞虫がいる。糞というのはとても栄養があるからそれを食べて、分解するわけです。そのおかげで糞はすぐに分解されて土に環(かえ)り、植物の栄養になるわけです。だから<糞虫なんて汚い>と思うでしょうが、自然界で重要な働きをしているわけです」
「では玉川上水では糞虫の食べ物、つまり糞はどうなっているでしょう」
「私が思うに、犬の散歩で糞をしたら、草むらに残す人もいると思います。それにすぐそこの津田塾大学には確実にタヌキがいます」
「へえーそうなんだ」
「はい。そして玉川上水と行き来していることもセンサーカメラで確認しました」
「玉川上水は一時は埋めてしまおうとか、今でも道路を付けようとかいう動きがありますが、残そうという人もいたおかげで今こうして緑が残っています。玉川上水の中でも小平にはいい林が残っており、いい林があれば鳥もタヌキも昆虫もいます。玉川上水の自然を楽しむのにもいろいろあって散歩をして緑を見るという楽しみ方もあるけど、私はもうちょっと突っ込んでその生き物がどう暮らしているかを調べています。調べてみれば、いることさえ知られていない昆虫がいて、しかも重要な働きをしていることがわかる。そうすると、また玉川上水が違って見えます。そういうことを伝えたいし、特に子供に知ってもらいたいと思っています」
子供たちのスケッチもできたので(こちら)、記念撮影をし、挨拶をして解散としました。何人かはコブマルエンマコガネを飼育すると言って持ち帰りました。
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