玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

はじめに

2024-12-31 23:10:52 | はじめに


 玉川上水は17世紀の中頃に作られた水路で、江戸市民の生活用水に、また流域の農業用水の動脈として機能してきました。長い年月を経て変化もしてきました。中でも昭和になって杉並以下が暗渠になったこと、小平より下流が上水の機能を失ってしばらく空堀になったことは大きな変換点でした。1986年の清流復活によって水流は戻りましたが、この水は処理水で水量も少なくなりました。上水機能の制約に伴い、戦後は上水沿いの緑地の木々が育ち、今では樹林帯となっています。そこにはかつての武蔵野の雑木林を思わせる樹林があり、野鳥が住み、林の野草も豊かです。そして多くの人々がその自然に親しんでいます。
 私たちはこの玉川上水の自然を良い形で未来の世代に引き継ぎたいと願っています。しかし、心配なこともあります。例えば小金井ではサクラを残して樹木が皆伐されました。また玉川上水全体で多くの樹木が伐採され、雨や冬の霜柱のために岸の土壌流失が起きています。さらには玉川上水を横切る道路が計画されてもいます。このようなことを考えると、このままでは玉川上水の自然がどうなるか気がかりです。
 そこで同じ思いも持つ人々と手を取りあい、行政によりよい管理のあり方を求める活動をすることにしました。そのために私たちは、自然のことを調べ、客観的なデータに基づく提言をしたいと思っています。

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活動記録 こちら

緊急のお知らせとお願い
玉川上水でも特に良い状態の樹林があり、シュンランなどの野草も多く、コゲラを代表とする鳥類も豊富です。ところがここを分断する道路が予定されています。私たちはこの場所の樹林伐採を見直してもらいたいと願い、都知事に要望書を出し、その署名をお願いすることにしました。以下のサイトをご覧いただき、ぜひ署名をお願いします。

ネット署名サイトは こちら


道路予定地の景観

現在の署名数は5097筆です。みなさまも、周辺の方に声をかけてご協力ください!


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お知らせ
2024年6月に「玉川上水の野草たち - 東京の市街地を生きる - 」が出版されました。郵送料は180円ですが、協力費とともに300円以上を以下に入金いただければ郵送します。申し込むときは宛先を明記ください。

ゆうちょ銀行
口座記号番号 00150-3-487811
口座名 玉川上水花マップネットワーク





ギャラリー 青らんぎ

+++ 「もう木を伐らないで」の出版 +++
玉川上水での野草観察の楽しみ、小金井の桜並木のための伐採、小平の328号線の計画など、玉川上水の樹木ば伐採されることについて、行政との交渉や、動植物の調査に基づく玉川上水のすばらしさの発見などを力を込めて書きました。ぜひご一読ください。またご近所の図書館に希望を出してもらえるとありがたいです(高槻)。


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もくじ (準備中)



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玉川上水小平地区「328号線」予定地の群落の現状(中間報告)

2024-06-27 21:44:43 | 生きもの調べ
玉川上水小平地区「328号線」予定地の群落の現状(中間報告)

高槻成紀

「小平328号線」の計画が予定されている小平市の東鷹の橋と久右衛門橋の間(約340 メートル)の群落の2024年時点での現状を記録する目的で調査をした。左岸(北側)の調査が完了したので、中間報告をしておく。

方法
 調査地は久右衛門橋から東鷹の橋の間で、この中央部分が「328号線」予定地である(図1)。


図1. 調査地の範囲(水色枠内). 赤破線は道路予定の範囲

調査地のほぼ中央部分の景観を図2に示した。歩道があり、南側に低い柵があり、その先は緩斜面となって上水に達し、旧崖となる。高木にはコナラ、クヌグ、イヌシデが多く、元々は連続的な樹冠であったが、ここ数年のナラ枯れで伐採され、明るくなった。


図3. 調査地の左岸(北側)の歩道、柵、斜面の様子。右奥が上水。

 調査プロットは久右衛門橋から上流に向かって左岸(北側)の歩道の上水側にある柵から上水の「肩」までの緩斜面にとった(図3)。

図3. 調査プロットのイメージ図

 柵には2 m間隔に支柱が立っているので、久右衛門橋近くの支柱を0とし、そこから10 m間隔のプロットをとった。プロットは幅2 mの長方形とし、斜面が崖になる「肩」の部分までとした。この長さは場所により3 m程度から5 m程度までの幅があった。
 プロットの左手前を原点とし、そこからスタートして「面積-種数曲線」を得るために、10 cm四方から初めてほぼ面積が倍になるように調査区を拡大して、最終的に2 m× 約4 mの面積をとった。そして、出現した種ごとの被度(%)と高さを測定した。この場合、下生えの植物に着目したので、高さが1.5 m以上は除外した。またプロットの外側に幹があって枝を伸ばしてプロットに入り込んでいるものは記録に含めた。この積を「バイオマス指数」として算出した。このプロットは隣接する上流側のものも取ったので、10 m間隔に4 m幅を調べたことになる。久右衛門橋から東鷹の橋までは約340 mあり、68のプロットをとった。

結果
 面積-種数曲線のデータをとった30のプロットの平均値を図4に示した。種数は4 m2くらいまでは急速に増加し、その後伸びが鈍くなり、16種で最大となった。


図4. 面積-種数曲線(平均値)

種数
 68のプロットで通算111種が出現した。プロット数に対する種数増加を見ると12プロット程度までは急角度で増加したが、その後は増加が緩やかになった(図5)。ただし頭打ちにはならず、ほぼ直線的に増加した。


図5. プロット数-種数曲線

出現頻度
 プロットへの出現頻度を種ごとに求めて、上位から順に並べたのが図6aである。これには種名を省いているが、グラフの形からわかるのは高頻度種はごく限られており、中頻度が20種ほどで、半数以上はごく低頻度でありグラフは長い裾を引くということである。これはごく少数種はほとんどのプロットに出るが、かなりの種は半分程度のプロットで見られ、多くの種はたまにしかみられないということである。


図6a. 出現頻度曲線

 出現頻度が上位15位までを取り上げると図6bのようになった。上位3種はスイカズラ、コナラ、イヌツゲであり、これら3種は非常に高頻度であった。これに次いで頻度30程度のものにアオキ、ネズミモチ、ウグイスカグラ、ムラサキシキブなどが続いた。


図6b. 頻度上位15位までの頻度曲線

 バイオマス指数(被度×高さ)を種ごとに求め、頻度同様上位から順に並べたのが図7aである。これも頻度同様、多い種は少数に限られ、グラフはL字状になった。


図7a. バイオマス指数を上位順に並べたグラフ

 このうち上位10種を取り上げると、ムラサキシキブ、シラカシ、スイカズラ、イヌツゲ、ウグイスカグラ、マルバウツギ、ケヤキ、エゴノキ、ノイバラ、ナンテンの順であった(図7b)。草本はつる植物のスイカズラだけであり、高木・亜高木がシラカシ、ケヤキ、エゴノキの3種だけで、多くは低木であった。これらの多くは頻度も高く、これらがこの場所の下層植生で重要な位置を占めている。


図7b. バイオマス指数の上位10位までの推移

バイオマス指数の推移
 バイオマス指数のプロットごとの合計値の推移を見ると久右衛門橋側で大きいが100 – 150 mで少なくなり、その後上流で再び多くなった(図8)。


図8. バイオマス指数の東から西への推移. X軸の数字は距離(m)

 これは橋の近くは樹冠がないためにある程度の範囲は明るく、下生え植物の成長が良いためと考えられる。上流(図8の150 m以上の範囲)では東鷹の橋から離れている場所でも多かったが、これは2021年くらいから増えた「ナラ枯れ」のために枯れたコナラ、クヌギが伐採されて樹冠が失われ、明るくなったためである。

主要種のバイオマス指数
 バイオマス指数の平均値が大きかった10種を取り上げる(図8. 9)。


図8. 調査地で量的に多かった10種

 ムラサキシキブは明るい林に生育する。調査地では全体にあったが、0−50mで量も頻度も高かった(図9(1))。


図9(1). ムラサキシキブのバイオマス指数の推移

 シラカシは安定した林の樹冠を形成し、林床にも生育するが、調査地では広く見られ、特に150-250 m辺りに集中的にあった。


図9(2). シラカシのバイオマス指数の推移

 スイカズラは林縁などに生育するつる植物であり、本調査地では0-100 mと200-330 mに集中的に生育した。スイカズラは歩道脇の柵に絡まるのがよく見られたが(図3)、同時に林床に水平に伸びて生育しているのもよく見られた。


図9(3). スイカズラのバイオマス指数の推移

 イヌツゲは暗い林に生育する。調査地では量的には少なかったが満遍なく出現し、100-150 mでは少なかった。


図9(4). イヌツゲのバイオマス指数の推移

 ウグイスカグラは明るい林に生育するが、調査地では0-100 mに集中的に出現するほか、他の場所でも断続的に出現した。


図9(5). ウグイスカグラのバイオマス指数の推移

 マルバウツギは林縁に生育するが、調査地では50-250 m辺りに出現し、0-50 m、280-340 m辺りにはなかった。


図9(6). マルバウツギのバイオマス指数の推移

 ケヤキは樹冠を形成し、実生は明るい場所に見られるが、調査地では30-80 mに集中的にみられた。


図9(7). ケヤキのバイオマス指数の推移


 エゴノキは明るい林の亜高木層や低木層に生えるが、調査地では場所の偏りはあまりなく、点々と出現した。


図9(8). エゴノキのバイオマス指数の推移

 ノイバラは林縁で藪を作るが、本調査地では0-20 mの林縁の他明るい場所で点々と出現した。


図9(9). ノイバラのバイオマス指数の推移

 ナンテンは林床に生えるが、本調査地では250-300 mで集中的に出現するほか、所々で少量見られた。


図9(10). ナンテンのバイオマス指数の推移

 このほか量的には少ないが注目される種を取り上げる(図10, 11)。


図10. 注目すべき4種

 アオキは暗い林の林床に生育するが、本調査地では0-60 mと250-330 mで多く生育した。


図11(1). アオキのバイオマス指数の推移

 ヘクソカズラは空き地などに生育するが、本調査地では260-340mに限定的に出現した。なぜ0-100 mになかったのか不明である。


図11(2). ヘクソカズラのバイオマス指数の推移

 ノカンゾウは直射日光が当たる草原的な場所に生えるが、調査地では0-50 mの明るい場所だけでなく、250 m以西でも見られた。


図11(3). ノカンゾウのバイオマス指数の推移

<総合評価>
 以上を総合的に見ると、本調査地においては久右衛門橋で樹林帯が途切れて明るくなるため、0-50 mには明るい場所を好む低木や草本類が多かった(図8)。これに次ぐ西側の50-80 mは暗く、これらの植物は少なくなった。本来であればこの状態がさらに西まで続くのだが、ナラ枯れに伴う伐採のために明るくなったために200 mより西側でも植物量が多くなっている。ただし東鷹の橋はごく小さく、久右衛門橋を通る府中街道ように自動車が走る舗装道路ではないからもともとは樹冠は繋がっていて直射日光は当たらず、植物量は少なかったが、現在はナラ枯れ伐採のため多くなった(図8)。
 ムラサキシキブ、マユミ、ガマズミなどが多いのは伐採後に増加したためだが、ここがこれまでずっと安定的な落葉樹林であったかというと、そうではない可能性がある。というのは、この辺りにノカンゾウがかなりあったからである(図11(3))。このほか、ツリガネニンジンもあった。これらはかろうじて生き延びており、開花はしていなかった。このことは、この場所がかつては明るい草原状態であったことを示唆する。これらは多年草であり、ナラ枯れ後に明るくなってから侵入したとのではない。おそらくかつてこの辺りは現在の小金井のように草原的な環境であり、これら陽性草本はコナラなどの樹木が生育してから徐々に減少しているものと思われる。
 一方で − 盗掘の懸念があるために公表しないが − この調査地ではシュンラン、キンラン、チゴユリ、マンリョウなどが生育していた(図11)。これらはノカンゾウ、ツリガネニンジンなどが消滅しつつあるのとは対照的に、落葉樹林が形成されて安定した林になりつつある中で生育するようになったものと推察される。


図12. 安定した林に生育する種

  このように見てくると、長い時間の中で草原的環境が落葉広葉樹林に変化しつつあり、樹木の管理の仕方によって下層植物が影響を受けながら盛衰を見せていることが理解される。ムラサキシキブ、ウグイスカグラ、エゴノキ、マユミ、マルバウツギなどはこの場所ではごくありふれた低木であり、花や果実が林に彩りを添えているが、東京都の緑地においては必ずしもそうではなく、これらが豊富なこのような場所は玉川上水全体でも限定的であり、保全上の価値が高いといえる。

 今後、右岸(南側)でも調査を行いたい。
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活動記録 

2024-06-18 09:15:10 | 活動記録
2024.6.17 「七夕の日、東京が変わる!−蓮舫さんとともに多摩地域大集会」で発言 こちら
2024.6.16 学習会「小平の玉川上水が危ない 4」 こちら
2023.12.3 学習会「小平の玉川上水が危ない 3」 こちら
2023.9.1 東京都庁の水道局に質問状を持参するも拒絶 こちら
2023.8.20 学習会「小平の玉川上水が危ない 2」 こちら 動画
2023.7.20 史跡玉川上水整備活用のための作業説明会(小平市・立川市域) こちら
2023.7.14 東京都建設局北多摩北部建設事務所を訪問 水口 高槻
2023.7.10 坂上多津夫氏(元津田塾大学職員)に話を聞く会を開催 こちら
2023.6.2 分断道路を考える集まりを開催 こちら
2023.5.7 シンポジウム「小平の玉川上水が危ない」を開催 こちら 動画
2022.10.4 水道局の説明会に参加(高槻)。こちら
2022.10.3 玉川上水の柵設置についての要望書(こちら)を提出しました。
2022.10.3  緑地事務所職員と新しい柵の現地視察会を行いました。
2022.7.9 三鷹市区域の玉川上水整備に関する説明会 報告鈴木
2022.7.9 史跡玉川上水整備活用のための作業説明会(大塚)こちら
2022.5.18 玉川上水の新しい柵について東京新聞が取り上げました。こちら
2022.5.15  新しい柵についてのアンケートを実施しました。こちら
2022.5.9 「玉川上水の樹林の有無と土壌流失について」をまとめました。こちら
2022.5.1 小平の新しい柵を見る観察会を行いました。こちら
2022.4.26 本会が実施した玉川上水についてのアンケートがまとまりました。こちら
2022.4.7 高槻が広報誌「アサココ」に「玉川上水の野草たち」というシリーズをはじめました。こちら
2022.1.31 『玉川上水の野鳥と緑地』パンフができました。こちら
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「七夕の日、東京が変わる!−蓮舫さんとともに多摩地域大集会」

2024-06-17 09:23:25 | イベント
6月17日に小金井で「七夕の日、東京が変わる!−蓮舫さんとともに多摩地域大集会」がありました。「はけの自然と文化をまもる会」の横須賀さんに声をかけてもらって市民トークリレーで発言することになりました。定員600人くらいの会場は満員で、予約なしに来た人も多く1000人ほどが集まったそうです。

満員の会場

事前から熱気がすごく、蓮舫さんが登場すると大声が沸き起こり、こういう場に不慣れな私はかなり驚きました。


熱く語る蓮舫さん

蓮舫さんは間違いなく華があり、人を惹きつけるものを持っていると感じました。「いつどこ誰が何を語って決めたかを透明にする」ということを強調し、賛同の声が沸き起こりました。彼女への期待があることはもちろんですが、このところ続いている不透明なトップダウンの決定に対する不満が沸々と湧き起こっているのだと思いました。それを打破してくれるのが蓮舫さんという期待があるのでしょう。

その後、プラカードを持って蓮舫さんが壇上で会場を背後にし、全員がプラカードを持って記念撮影をしました。それから市民トークリレーとして8人が登壇し、私も発言しました。大観衆を前にして、私は柄にもなくアガッてしまいました。ま、それもご愛嬌です。発言内容は文末にあげておきます。

 市民トークリレー話題は、地球温暖化、給食問題を含む多摩格差、生活困難者問題、飼育動物の殺処分、ハケの破壊道路計画、PFAS問題など多岐に渡り、皆さん熱弁を奮い、会場からも賛同の声が上がりました。
 それから、都議、国政関係者の登壇、発言がありました。菅直人元首相、小池晃共産党副委員長はさすがに話がうまく、笑いもとりながら蓮舫支持を訴え、このままいけば都知事選は間違いなく上手くいきそうな気分になるほどでした。
 現実にはそううまくはいかないと思います。しかし、市民の声が行政に届かないという意味では、今ほどひどい時代はなかったと思います。このままではこの国は民主国家とはいえなくなるようで気が重くなります。中国やロシアのように独裁者がいないだけにその改革が難しいともいえます。私自身としては、蓮舫さん個人を支持するというより、現状を打破したいという意味で、投票で意思表示をしなければならないと思いました。

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 高槻と申します。大学で生態学を学んできた研究者です。蓮舫さんが「緑と共生する東京」を表明されたことを強く支持します。

 私は小平に住んでいるので玉川上水の動植物を調べてきました。
 東京に人口が集中した1960年代には小平には雑木林がいくらでもあり、里山の動植物に溢れていました。しかしその後は宅地化によって雑木林がどんどん減っていき、今ではごく限られた場所にしか残っていません。そうした中で玉川上水は羽村から杉並までの30kmにわたって細いながら繋がった樹林があり、そこには豊富な野草があり、昆虫や鳥がいて、いわば避難所のようになっています。そのことでどれだけ多くの都民の生活が豊かなものになっているかしれません。
 その玉川上水の中でも小平は特に状態の良い樹林があるのですが、ここに樹林を分断する道路計画があり、それができると野草や昆虫や鳥類が住めなくなってしまいます。この計画は昭和の高度成長期に立てられたものです。
 玉川上水の動植物の中には貴重な動植物もありますが、玉川上水の価値はそれだけでなく、かつてありふれていた武蔵野の雑木林の動植物が残っていることにあります。それが高度成長期に立てられた道路計画によって永遠に失われることになろうとしています。私はそれはしてはいけないことだと思います。それは私たちの世代の責任であり、私たちが選んだ行政の責任でもあります。
 これは玉川上水の一部でもある井の頭公園や、玉川上水ではありませんが、ハケに連なる野川公園など、多摩の残された自然に共通のことです。

 東京都は常に時代の変化を見極め、近未来、遠未来のあるべきビジョンを見据えながら、残された自然を次世代に引き継ぐ姿勢を持つべきです。そのことを蓮舫さんに期待し、支援したいと思います。

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学習会4 (2024.6/16) の記録

2024-06-16 18:57:01 | 講演
204年6月16日の14時から小平市中央公民館で「学習会4」として、昭島での物流センター計画とそれに関連する運動について、長谷川博之さんにお話を聞きました。

話をする長谷川さん

 その概略を発表資料から紹介します。この大型物流センターは西武新宿線の西武立川駅の向かいの、玉川上水が暗渠になっている部分の南側にあたります。資料によると次のとおりです。

開発地域は、元々は、「昭和飛行機工業(株)」の所有地で、戦時中は、飛行機整備工場や滑走路があった。2021年外資系資本のGLPに買収され、その後、中国系企業に再買収されている。GLPは、総資本7000億円とも。世界でも有数の不動産会社で、日本では、150社あまりが、すでに稼働している。関東では、近隣の神奈川県や千葉県、埼玉県には、すでに建設されており、東京都では、昭島が初めての建設になる。その広さ、デズニ-ランド1個分、東京ド-ム12個分である。


計画 水色が物流センターの建物、黄色がデータセンターの建物、赤線が幅16メートルの「東西道路」

 高槻はGLPが作成した計画の説明パンフレットを見ましたが、実によく書けていて舌を巻きました。流石に日本中で物流センターを作る実績を上げてきた大企業だと思いました。
 これに対して長谷川さんは次のような問題点を指摘しています。

開発計画の問題性
1)住宅地のまっただ中の開発・周辺道路の狭隘さ(片側一車線)から来る生活破壊
2)近接する住宅地の日照権や風通しの環境悪化、良好な景観の消失
3) 物流施設やデ-タ(電算情報)センタ-への高電力供給や施設からの熱発生や冷却水の処理
4)ゴルフ場の芝地や樹林の伐採敷地内のコンクリ-ト被覆による緑被率や地下水浸透能、CO2の吸収能の大幅な減少、4871本におよぶ樹林の伐採と移植
5)開発地域周辺で予想される生態系への悪影響
 a)玉川上水
 b)代官山

 代官山のオオタカについては先日の朝日新聞に取り上げられていました。昨日無事に巣立ったそうです。調査によると、鳥類は現地調査で44種、文献を含め75種が記録されているとのことです。参考までに、玉川上水の鷹の台では、1年の調査で33種(こちら)、10年間の調査で84種が記録されています(こちら)。

 ここまでは主に動植物の話でしたが、この後、実際の反対運動が紹介されました。長谷川さんは高校の生物学の先生でしたが、2年前に退職し、この活動に専念するようになったとのことでした。資料によって紹介すると・・・

開発計画に対する市民運動や手続き状況
1)地元住民による反対運動「昭島巨大物流センタ-を考える会」が立ち上がり、これまで、2年1ヶ月余り、運動や学習会等が行われてきた。考える会だけでなく、渋滞予測のシミュレ-ションチ-ムやオオタカチ-ムが誕生し、市民側は、運動の広がりが出ている。日本自然保護協会や日本環境会議の支援も得られている。
2)都の環境アセスメント審議会が開催され、2012年12月「調査計画書」に対する意見書234通、2014年2月「環境影響評価書案」に対する意見書463通出されている。今後(6月以降)、「GLPからの見解書」、「都民意見を聞く会」の後、アセスメント審議会で最終審議が実施予定。
3)都の景観審議会、自然保護審議会の開催要請を行ってきたが、拒否・無視されている。都議会への陳情を提出。環境・建設委員会では採択されなかったが、警察・消防委員会では、趣旨が採択された。6月本会議でも、取り上げられる可能性が出てきた。党派によるかけ引きや思想差別、環境局の都議への圧力、市民差別のようなことが平然と普通に行われていることに、驚きを禁じ得ない。
4)昭島市は、この開発地域に、「地区計画」を策定しようとしており、すでに、素案の説明会を開催した。過去2回の懇談会やル-ル説明会も開催してきて、さまざまな市民意見が出されたが、反映されてはいない。
  当初とは打って変わって、GLP寄りの姿勢が目立ち、新設の東西道路を容認してきている。代官山については、地区計画に伴う緑地保全条例をつくると言っている。しかし、代官山については、所有者が代わったにもかかわらず、新たな協定書や管理方針や条例制定のための動きや調査は、まったくしていない。  
5)市民運動では、今後、住民監査請求や公害紛争調停も視野に入れる動きがある。特に、昭島市に対しては、当面、地区計画に対する住民監査請求を予定。そこに、「自然の人権訴訟」ならぬ「自然の生命権監査請求」を抱き合わせで、請求する予定。

 実際の活動の中で、行政とのやりとりもし、憤りや無力感を感じることも少なくなかったそうです。以下はその列記です。

環境アセスメント制度の問題
1)開発周辺地域の課題が対象になっていない。特に、周辺地域の交通渋滞や道路のメンテナン スなどがまともに取り上げられない。
2)他の条例との連携が図られていない。景観条例上や自然保護条例上の課題とは連続性がない、ばらばらの対応である。
3)開発後の影響力を、調査、評価することが抜けてしまっている。(事後調査報告は、形だけのもの)
4)住民アセスや自主アセスで補っている面が多すぎる。条例アセスで、点検すべき課題を整理し直してほしい。特に、動植物の保護の課題。
5)事業者側の調査やシュミレ-ションの公開性が希薄で、コンサルタント会社が最初からわからない。何をしているのかさえわからない。調査の不十分さが昔から指摘されてきたが、通り一遍だけの調査で、開発許可が下りている実態がある。今回の最大の問題は、GLPの環境影響評価書案が瑕疵や不備があまりに多いこと。
 6)アセスメント条例の自治体による違いがあり、準備書の段階から、真剣に取り組む自治体もあれば、準備書を公共事業以外は省いてしまう自治体もある。アセスメント審議会の専門家に偏りが見られる自治体もある。
7)都道府県の条例扱いとなる問題には、開発地域の地元自治体の消極性・無責任さが目立つ。都道府県任せの市区町村が多い。都道府県と市区町村の連携を促す仕組みが必要である。
8)アセスメント制度は、事業者と住民とのコミュニケ-ションツ-ルと言っている(環境省OB)が、事業者による住民への恣意的差別が背景にあり、コミュニケ-ションは成り立っていない。

長谷川さんは行政が「あなたたちのような小さな市民団体の声をいちいち聞いていられない」と言われ、空いた口が塞がらなかったそうです。そして「この国は民主国家と言えるだろうか」と感じたそうです。
 長谷川さんは溢れる思いを立て板に水で話されたので、私は消化不良でした。参加者からいくつか質問、発言がありました。私が覚えているものを上げておきます。

- 生物調査の内容にクモが入っているようですが、小平ではクモは調べられていません。
<長谷川>調査によって内容には違いがあるようです。GLPのものはかなり詳しく、鳥類などは珍しいものもたくさん見つかっていて、開発酢べきでないとなりそうですが、そうはなっていません。
- 話の初めの方で政治とは別に動植物を守りたいということで活動してきたという話と、最後に話された政党によって聞いてもらえる党と聞いてもらえない党があるというのは一貫性がないのでは。
<長谷川>矛盾はあるが、現実に開発に対する考え方が大いに違う。私は人にとって自然はなくてはならないものだと思う。
- 都市生活をする以上、自然を犠牲にしているのだから、都市生活者が開発をするな、つまり自然を守れというのはそもそも矛盾している。
- その土地にふさわしい動植物がいて、それに悪い影響を与えて胃はいけない。小金井のようにサクラだけにするなどは間違っている。
<長谷川>玉川上水を庭だと思って園芸植物を植える人がいる。園芸、造園感覚は生物多様性の保全に反する。
-しかし人にとって庭園というのは、単純なものばかりではない。イギリスの庭のように多様性を重んじるものもある。そういう人は野生植物を含む植物の多様性を守ろうとしている。単純に園芸は生物多様性に反するとは言えない。
-自分の生活を考えると、昭島のものには反対する気持ちがある反面、ネット注文してすぐに届くという生活は変えられないし、これからもっと進むと思う。昭島に雇用が生まれることもプラスのことだと思う。

たくさんの発言があり、記録を取っていなかったので、ごく一部の記録になったと思います。長谷川さんの情熱溢れるお話には学ぶものが多く、小平の328号線問題にとっても参考になるところがたくさんありました。

参加者の方で、追加情報があればご一報ください。

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