写真の後にToとあるのは豊口信行さんの撮影です。
例によって鷹の台駅に集合し、だいたいいつものメンバーが集まりました。4月1日に花マップの実習で歩きましたが、その時よりもはるかに緑が濃くなていました。
鷹野橋から下流に歩きました。「緑のトンネル」が爽やかな新緑に包まれていました。
この前、見つけていたムサシアブミを見つけて、テンナンショウ属の説明をしました。
ムサシアブミ
説明をする(To)
「あ、ホワイトボードが新しくなった?」
いつも解説に使うホワイトボードを更新したのに気づいた人がいました。最近改めたのです。
「はい、改めました。と言っても100円ショップですから」
でも観察会ではなくてはならない活躍をしています。
仏炎苞や雄花、雌花などの話をしました。
津田塾大学の角にある久右衛門橋で、タヌキ横断の話をしました。玉川上水沿いの数カ所にマーカー入りのソーセージをおいて、確認している4カ所のタメフン場で糞を採集して、マーカーの出現を確認しました(こちら)。そのうちの一つは津田塾大学の東側においたのソーセージに入れたのですが、府中街道の西にあるタメフン場から発見されたのです。ということは、タヌキは間違いなくこの交通量の多い府中街道を横切っているということです。
「私は、都市生活と自然のあり方というと大げさかもしれませんが、人が利便性を追求した結果、タヌキが交通事故にあっていることを多くの人が知るべきだと思うんです。それを「安全運転しましょう」という当たり前のことではなく、例えばここにタヌキ用の横断ボタンを作るようなウィットに富んだものを作ることで、「ああ、ここにタヌキがいるんだ」と思ってもらうようなことができたらいいなと思ってるんです。で、そのボタンの脇にでも、例えばムサビの学生さんがタヌキのイラストを描いた看板を作るなどもいいと思うんです」
「へえー、おもしろ〜い」
久右衛門橋を越えると、明るい場所があります。キンランが高さ30cmほどに伸びていましたが、中程に枯葉が付いています。
「この枯葉は少し前まで地面に落ちていました。ここに穴が空いていますが、初めはこんなに大きくなかったはずです。たまたまここに目を出したキンランが頭を突っ込んで、上に伸びて持ち上げるとともに、太さも増したので穴も大きくなりました。・・・それだけのことです」(笑い)
「おもしろー」
「この枯葉とキンランが奇跡的な偶然で出会ったわけで、・・・・人の出会いもそういうことです」
その写真は撮りませんでしたが、豊口さんが別のシーンをとっていました。
枯葉を突き抜けたイネ科(To)
ヒメコウゾが咲いていました。
「これが雄花、こっちのチョンチョンというのが雌花です。私がこのひと枝を手でちぎらないで剪定バサミで伐ったのはわけがあって、手ではちぎれないんです」
「・・・・」
「というのは、コウゾは和紙の原料で、繊維が丈夫で長いんです。だから手ではなかなかちぎれません」
ヒメコウゾ
その説明をしている時、タラララララというキツツキのドラミングの音がしました。私はとっさに「アカゲラだ」と言いましたが、正しくなくてアオゲラでした。ドラミングの音は少し先の方からするようだったので、みんなで近づいて行くと、どうやら玉川上水の対岸の南側のクヌギの木からのようで、そちらで見上げている人もいました。何度か音がしたので、だんだんと位置を絞ってゆくと、幹が折れ曲がるところに動くものがいました。まちがいなくアオゲラで、みんなも見ることができたようです。
アオゲラを見る
アオゲラ(To)
「アオゲラがいるということはその餌になる昆虫が豊富にいるある程度大きな木があるということです。実はこの辺りは玉川上水でも緑の幅が広くて、チゴユリなど森林の植物があります。しかも隣に津田塾大学のシラカシの林があるので、まとまった緑があるということです。
チゴユリ
実は私は去年、津田塾大学でタヌキの調査をしていてフクロウの死体を見つけました。この辺りの鳥に詳しい人がフクロウの声を聞いていたそうですが、私が死体を見つけた頃から聞こえなくなったそうです。フクロウがいるということは豊富なネズミがいるということです。フクロウはネズミ食に特化した猛禽類です。ネズミが生きるにはネズミの食物になる動植物があるということです。だから、こういう市街地にフクロウがいるということの意味はとても大きいんです」
ハコベが咲いていたので、「10枚」に見える花をルーペで見てもらいました。
「実は1枚の花弁が深く切れ込んでいるので、10枚に見えますが、実は5枚です」
「そうなんだ」
ルーペを覗く(To)
「このルーペすごーい!」
「いいでしょう。違う世界が広がりますよね」
「Peakですよね」
「そう、Peakというメーカーのもので、5000円くらいはしました。もっと安いのもあるようですが」
「でもやっぱりいいものは高いよね」
「そうですね、ま、私は酒もタバコもやらないから、これくらいはいいものをね」
「そうよね、ちょっとご馳走を食べに行くと、そのくらい使っちゃうもの、高いとは言えないわよね」
「そうそう」
この辺りにはチゴユリが咲いていました。またムラサキケマンもありました。すでに予定の時間はずれ込んでいました。
鎌倉橋
その先で、シュンランが咲いていました。用水沿いにモミジイチゴやタチツボスミレ、シャガなどが咲いていました。
シュンラン(To)
モミジイチゴ(To)
タチツボスミレ
「モミジイチゴは葉がモミジみたいな形をしているからで、イチゴはオレンジ色で、この仲間では一番おいしいです」
「いつ頃なりますか?」
「一ヶ月くらい先ですかね」
「食べに来るんでしょう」(笑iい)
見ているとキジバトがのこのこと歩いてきて私の足に触れんばかりに近づきました。
キジバト(To)
「ハトと言えば伝書鳩はすごかったんですね。電波通信が発達していなかった頃、手紙を早く伝えるには伝書鳩の働きは貴重で、新聞記事なども昭和の30年くらいまでは伝書鳩に運ばせたから、新聞社には鳩舎があったんです。第一次大戦後の時、イギリス軍は数万ばの鳩を飼っていて、それに対してドイツ軍はタカを飼って鳩を殺したそうです。なんだか戦争なのにほのぼのとしたような・・・。フランスとベルギーの戦争で、フランス軍が要塞に閉じ込められて包囲された時伝書鳩で援軍を頼み、その鳩が本部に着いて、疲労のために死んだら、勲章をもらったそうです。これもなんだか戦争なのにユーモアがあるような・・・」
このあと、カマツカ、コゴメウツギ、マルバウツギなどの蕾を見ました。いずれも典型的には5月の植物です。4月偈頌には咲いていても不思議はありませんが、まだ上旬ですから今年はかなり花が早いと言えます。
ニリンソウがありました。
ニリンソウ
「ニリンソウはAnemone属でヨーロッパにもあります。英語でなんと発音すると思いますか?」
「アネモネ」とフラットな発音
「ダメそれ日本語、英語はどこかにアクセントをつけなくちゃ」
「アネモーネ」
「ああ、アクセントがあるという意味では英語っぽかったけど、ハズレ。「アネーモニー」です」
「へえー」(笑いい)
「でね、枯葉の中から初々しい葉を出して清楚な花を咲かせるから、温帯ではどこでもこういう草にまつわる話があります。身分お高い家の娘がwかものと恋をする。その若者は身分が低いので、親が許さず、それを悲しんで心中をする。その地面から咲いたのがアネモネで、アイヌにもほとんど同じ話があって、花は同じ仲間のフクジュソウです。死んだような地面から初々しい植物が生まれてはすぐに枯れてしまうのを見て、全く違う国でも、同じようにティーンエイジャー・ラブを連想するのはおもしろいことです。清らかさ、儚さに対する感動があるんでしょうね」
その先にある水衛所で南岸に移って歩きました。イチョウが花を咲かせていました。
イチョウの花
南岸に出ると、いきなりウラシマソウがありました。
ウラシマソウ(To)
さっきムサシアブミの話をしたので、みなさん、興味を持って眺めていました。よく見ると結構ありました。
今回は、野草観察ゾーンで春の野草を見て、スケッチをしようと思っていたいのですが、結果的にはほとんど花はありませんでした。あったのはミツバツチグリ、ウマノアシガタくらいでした。それぞれについて簡単に説明しました。
ミツバツチグリ
ウマノアシガタ
少し奥の玉川上水沿いの柵にサルトリイバラが咲いてたので、ルーペを取り出して言いました。
サルトリイバラ(To)
「回しますから花を見てください。サルトリイバラはユリ科ですから、花は6枚に見えて基部の3枚が萼、上の3枚が花弁です。雌しべの先の柱頭も3つに別れているし、子房をも3室です。
リンネは偉大な分類学者ですが、敬虔なキリスト者でした。彼は被造物を讃えるために生物学を研究しました。神の創られたものは素晴らしいに違いないというわけです。実際、調べれば調べるほど、生き物は素晴らしくできています。リンネはそのことを誰よりもわかっていました。ヨーロッパでは国が違うと言葉が違い、同じものが別の名前で呼ばれることを知っていましたが、被造物を同じかどうかがわからないでは研究が進まない。だからラテン語の学名を作って共有できるようにしました。いまでも生物学はこの学名を基礎にしています。
どの学問でもそうですが、専門家は一般の人が知らない世界を知っています。それを特権のように感じる学者がいたし、今もいます。でもリンネは神の被造物は誰でもが正しく認識すべきだと考えた。それで、変異の大きい葉ではなく、花が本質的だと考えて、花による分類が必要だと考えました。その時、できるだけ簡便で客観的な区別点が必要だと考え、例えばユリ科の花は3を基本としているということに着目し、これが一つの区別点だとしたのです。
リンネは偉いですね」
「へえー」
しばらく歩きましたが、これという花はありませんでした。
ここにもニリンソウがありました。
「ニリンソウは山の植物です。それがこの交通量の多い五日市街道のすぐ脇に咲いている」
「そう、私なんかこの前わざわざ箱根まで見にいったのに」
「野草観察ゾーンは今ほど木が育っていなかった時代の玉川上水を知っている人たちが、かつての野草を蘇らせたいと考えて、上の木を伐るよう申請して実現したんですね。その結果、秋の七草のうち関東地方にある6種の全てが玉川上水沿いにあることがわかりました。ここにはノカンゾウ、ツリガネニンジン、ワレモコウ、オカトラノオなど、綺麗な花を咲かせる野草がたくさんありますが、夏から秋にかけて花を咲かせます。草原の野草は春に咲かないということはないと思いますが、ここではそういう傾向がありそうだということがわかりました。
できればスケッチをしようと思っていましたが、アオゲラを見たり、雑談をしすぎたので、その時間がなくなりました」(笑いい)
というわけで解散しました。
豊口さんはあとでフデリンドウやジュウニヒトエを見つけたそうです。
フデリンドウ(To)
ジュウニヒトエ(To)
今回も豊口信行さんの写真を使わせてもらいました。ありがとうございました。
例によって鷹の台駅に集合し、だいたいいつものメンバーが集まりました。4月1日に花マップの実習で歩きましたが、その時よりもはるかに緑が濃くなていました。
鷹野橋から下流に歩きました。「緑のトンネル」が爽やかな新緑に包まれていました。
この前、見つけていたムサシアブミを見つけて、テンナンショウ属の説明をしました。
ムサシアブミ
説明をする(To)
「あ、ホワイトボードが新しくなった?」
いつも解説に使うホワイトボードを更新したのに気づいた人がいました。最近改めたのです。
「はい、改めました。と言っても100円ショップですから」
でも観察会ではなくてはならない活躍をしています。
仏炎苞や雄花、雌花などの話をしました。
津田塾大学の角にある久右衛門橋で、タヌキ横断の話をしました。玉川上水沿いの数カ所にマーカー入りのソーセージをおいて、確認している4カ所のタメフン場で糞を採集して、マーカーの出現を確認しました(こちら)。そのうちの一つは津田塾大学の東側においたのソーセージに入れたのですが、府中街道の西にあるタメフン場から発見されたのです。ということは、タヌキは間違いなくこの交通量の多い府中街道を横切っているということです。
「私は、都市生活と自然のあり方というと大げさかもしれませんが、人が利便性を追求した結果、タヌキが交通事故にあっていることを多くの人が知るべきだと思うんです。それを「安全運転しましょう」という当たり前のことではなく、例えばここにタヌキ用の横断ボタンを作るようなウィットに富んだものを作ることで、「ああ、ここにタヌキがいるんだ」と思ってもらうようなことができたらいいなと思ってるんです。で、そのボタンの脇にでも、例えばムサビの学生さんがタヌキのイラストを描いた看板を作るなどもいいと思うんです」
「へえー、おもしろ〜い」
久右衛門橋を越えると、明るい場所があります。キンランが高さ30cmほどに伸びていましたが、中程に枯葉が付いています。
「この枯葉は少し前まで地面に落ちていました。ここに穴が空いていますが、初めはこんなに大きくなかったはずです。たまたまここに目を出したキンランが頭を突っ込んで、上に伸びて持ち上げるとともに、太さも増したので穴も大きくなりました。・・・それだけのことです」(笑い)
「おもしろー」
「この枯葉とキンランが奇跡的な偶然で出会ったわけで、・・・・人の出会いもそういうことです」
その写真は撮りませんでしたが、豊口さんが別のシーンをとっていました。
枯葉を突き抜けたイネ科(To)
ヒメコウゾが咲いていました。
「これが雄花、こっちのチョンチョンというのが雌花です。私がこのひと枝を手でちぎらないで剪定バサミで伐ったのはわけがあって、手ではちぎれないんです」
「・・・・」
「というのは、コウゾは和紙の原料で、繊維が丈夫で長いんです。だから手ではなかなかちぎれません」
ヒメコウゾ
その説明をしている時、タラララララというキツツキのドラミングの音がしました。私はとっさに「アカゲラだ」と言いましたが、正しくなくてアオゲラでした。ドラミングの音は少し先の方からするようだったので、みんなで近づいて行くと、どうやら玉川上水の対岸の南側のクヌギの木からのようで、そちらで見上げている人もいました。何度か音がしたので、だんだんと位置を絞ってゆくと、幹が折れ曲がるところに動くものがいました。まちがいなくアオゲラで、みんなも見ることができたようです。
アオゲラを見る
アオゲラ(To)
「アオゲラがいるということはその餌になる昆虫が豊富にいるある程度大きな木があるということです。実はこの辺りは玉川上水でも緑の幅が広くて、チゴユリなど森林の植物があります。しかも隣に津田塾大学のシラカシの林があるので、まとまった緑があるということです。
チゴユリ
実は私は去年、津田塾大学でタヌキの調査をしていてフクロウの死体を見つけました。この辺りの鳥に詳しい人がフクロウの声を聞いていたそうですが、私が死体を見つけた頃から聞こえなくなったそうです。フクロウがいるということは豊富なネズミがいるということです。フクロウはネズミ食に特化した猛禽類です。ネズミが生きるにはネズミの食物になる動植物があるということです。だから、こういう市街地にフクロウがいるということの意味はとても大きいんです」
ハコベが咲いていたので、「10枚」に見える花をルーペで見てもらいました。
「実は1枚の花弁が深く切れ込んでいるので、10枚に見えますが、実は5枚です」
「そうなんだ」
ルーペを覗く(To)
「このルーペすごーい!」
「いいでしょう。違う世界が広がりますよね」
「Peakですよね」
「そう、Peakというメーカーのもので、5000円くらいはしました。もっと安いのもあるようですが」
「でもやっぱりいいものは高いよね」
「そうですね、ま、私は酒もタバコもやらないから、これくらいはいいものをね」
「そうよね、ちょっとご馳走を食べに行くと、そのくらい使っちゃうもの、高いとは言えないわよね」
「そうそう」
この辺りにはチゴユリが咲いていました。またムラサキケマンもありました。すでに予定の時間はずれ込んでいました。
鎌倉橋
その先で、シュンランが咲いていました。用水沿いにモミジイチゴやタチツボスミレ、シャガなどが咲いていました。
シュンラン(To)
モミジイチゴ(To)
タチツボスミレ
「モミジイチゴは葉がモミジみたいな形をしているからで、イチゴはオレンジ色で、この仲間では一番おいしいです」
「いつ頃なりますか?」
「一ヶ月くらい先ですかね」
「食べに来るんでしょう」(笑iい)
見ているとキジバトがのこのこと歩いてきて私の足に触れんばかりに近づきました。
キジバト(To)
「ハトと言えば伝書鳩はすごかったんですね。電波通信が発達していなかった頃、手紙を早く伝えるには伝書鳩の働きは貴重で、新聞記事なども昭和の30年くらいまでは伝書鳩に運ばせたから、新聞社には鳩舎があったんです。第一次大戦後の時、イギリス軍は数万ばの鳩を飼っていて、それに対してドイツ軍はタカを飼って鳩を殺したそうです。なんだか戦争なのにほのぼのとしたような・・・。フランスとベルギーの戦争で、フランス軍が要塞に閉じ込められて包囲された時伝書鳩で援軍を頼み、その鳩が本部に着いて、疲労のために死んだら、勲章をもらったそうです。これもなんだか戦争なのにユーモアがあるような・・・」
このあと、カマツカ、コゴメウツギ、マルバウツギなどの蕾を見ました。いずれも典型的には5月の植物です。4月偈頌には咲いていても不思議はありませんが、まだ上旬ですから今年はかなり花が早いと言えます。
ニリンソウがありました。
ニリンソウ
「ニリンソウはAnemone属でヨーロッパにもあります。英語でなんと発音すると思いますか?」
「アネモネ」とフラットな発音
「ダメそれ日本語、英語はどこかにアクセントをつけなくちゃ」
「アネモーネ」
「ああ、アクセントがあるという意味では英語っぽかったけど、ハズレ。「アネーモニー」です」
「へえー」(笑いい)
「でね、枯葉の中から初々しい葉を出して清楚な花を咲かせるから、温帯ではどこでもこういう草にまつわる話があります。身分お高い家の娘がwかものと恋をする。その若者は身分が低いので、親が許さず、それを悲しんで心中をする。その地面から咲いたのがアネモネで、アイヌにもほとんど同じ話があって、花は同じ仲間のフクジュソウです。死んだような地面から初々しい植物が生まれてはすぐに枯れてしまうのを見て、全く違う国でも、同じようにティーンエイジャー・ラブを連想するのはおもしろいことです。清らかさ、儚さに対する感動があるんでしょうね」
その先にある水衛所で南岸に移って歩きました。イチョウが花を咲かせていました。
イチョウの花
南岸に出ると、いきなりウラシマソウがありました。
ウラシマソウ(To)
さっきムサシアブミの話をしたので、みなさん、興味を持って眺めていました。よく見ると結構ありました。
今回は、野草観察ゾーンで春の野草を見て、スケッチをしようと思っていたいのですが、結果的にはほとんど花はありませんでした。あったのはミツバツチグリ、ウマノアシガタくらいでした。それぞれについて簡単に説明しました。
ミツバツチグリ
ウマノアシガタ
少し奥の玉川上水沿いの柵にサルトリイバラが咲いてたので、ルーペを取り出して言いました。
サルトリイバラ(To)
「回しますから花を見てください。サルトリイバラはユリ科ですから、花は6枚に見えて基部の3枚が萼、上の3枚が花弁です。雌しべの先の柱頭も3つに別れているし、子房をも3室です。
リンネは偉大な分類学者ですが、敬虔なキリスト者でした。彼は被造物を讃えるために生物学を研究しました。神の創られたものは素晴らしいに違いないというわけです。実際、調べれば調べるほど、生き物は素晴らしくできています。リンネはそのことを誰よりもわかっていました。ヨーロッパでは国が違うと言葉が違い、同じものが別の名前で呼ばれることを知っていましたが、被造物を同じかどうかがわからないでは研究が進まない。だからラテン語の学名を作って共有できるようにしました。いまでも生物学はこの学名を基礎にしています。
どの学問でもそうですが、専門家は一般の人が知らない世界を知っています。それを特権のように感じる学者がいたし、今もいます。でもリンネは神の被造物は誰でもが正しく認識すべきだと考えた。それで、変異の大きい葉ではなく、花が本質的だと考えて、花による分類が必要だと考えました。その時、できるだけ簡便で客観的な区別点が必要だと考え、例えばユリ科の花は3を基本としているということに着目し、これが一つの区別点だとしたのです。
リンネは偉いですね」
「へえー」
しばらく歩きましたが、これという花はありませんでした。
ここにもニリンソウがありました。
「ニリンソウは山の植物です。それがこの交通量の多い五日市街道のすぐ脇に咲いている」
「そう、私なんかこの前わざわざ箱根まで見にいったのに」
「野草観察ゾーンは今ほど木が育っていなかった時代の玉川上水を知っている人たちが、かつての野草を蘇らせたいと考えて、上の木を伐るよう申請して実現したんですね。その結果、秋の七草のうち関東地方にある6種の全てが玉川上水沿いにあることがわかりました。ここにはノカンゾウ、ツリガネニンジン、ワレモコウ、オカトラノオなど、綺麗な花を咲かせる野草がたくさんありますが、夏から秋にかけて花を咲かせます。草原の野草は春に咲かないということはないと思いますが、ここではそういう傾向がありそうだということがわかりました。
できればスケッチをしようと思っていましたが、アオゲラを見たり、雑談をしすぎたので、その時間がなくなりました」(笑いい)
というわけで解散しました。
豊口さんはあとでフデリンドウやジュウニヒトエを見つけたそうです。
フデリンドウ(To)
ジュウニヒトエ(To)
今回も豊口信行さんの写真を使わせてもらいました。ありがとうございました。