玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

玉川上水の保全

2017-04-01 02:38:52 | 玉川上水の保全
小平市中央公園近くの玉川上水の林の下生えの記録
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道路建設予定地

2017-04-01 02:20:57 | 玉川上水の保全






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2017年4月の観察会

2017-04-01 01:45:05 | 観察会

 4月16日、9:30に鷹の台駅に集まりました。参加者はせいぜい10人ほどという話だったのですが、軽く20人を超えていて驚きました。暖かい気持ちのよい日でした。
 鷹の橋に行くと緑が濃くなっていて驚きました。数日前にきたときはまだ薄い緑色だったのが、あっという間に鮮緑色にかわっていました。
 はじめに今日の段取りを説明しました。午前中に中央公園南側の玉川上水沿いの林の毎木調査をし、昼食をはさんで午後は津田塾大学向かいの雑木林でタメフン探しをすることを伝えました。
 津田塾大学のところにある久右衛門橋から西に50mの巻尺で「軸」をとり、木ごとに直径を測定し、記録係の佐藤さんに申告するようにしました。


巻尺を張って出発点から木までの距離がわかるようにしました。


測定をする関野先生


樹木の周を測定する


申告を記録する佐藤さん(右)

 こういう調査はまったく初めてという人も多かったので、たとえばコナラとクヌギはどう違うかとか、単葉と複葉、葉脈のこと、互生と対生など、基本的な話をしました。そのときに「100均」で買ったボードが大活躍してくれました。


ボードを使って解説する

 話したことを思い出すままに書くと、
- イヌシデなどの葉脈は主脈から葉の縁に向けてきれいな平行脈をとるが、ミズキの場合は縁に近づいてから縁に沿うようにカーブする。これを「流れる」という。



ボードに書いたイヌシデとミズキ

- ミズキは「水木」であり、この季節に、幹にきずがあると、ポタポタと樹液が出てくる。昔の人はそのことを知っていたのだろう。

- ガマズミの葉は全体に丸く、縁のギザギザ(鋸歯)は波状。多くの支脈はシデのように平行に伸びるが、葉の基部は支脈から出る2次の支脈が平行となる。これは基部のものだけ。

- ガマズミはスイカズラ科で対生。対生とは枝や葉が向かい合って出ることで、互い違いに出るのは互生。
- サクラの葉は、葉柄や葉の基部に腺がある。
- ムラサキシキブの葉のように葉の面に対して葉脈が低くなる場合は「打ち込む」という。
- コナラとクヌギは似ているが、コナラは今の時期、葉に銀色の産毛が生え、枝全体、木全体も白っぽく見える。コナラの鋸歯は波打つようで、外に出る部分がチョンと尖る。クヌギはその部分が針のように尖り、葉緑素はない。また、樹皮が「谷」と「丘」を繰り返すが、コナラでは「丘」が平坦だが、クヌギでは狭く、断面が三角形に近い。

 
クヌギの説明

- コナラはドングリをつけるが、ドングリの上下はどっち?帽子をかぶっているとみると、チョンと尖ったところがアゴで下みたいだけど、枝についているのは「帽子」のほうだから親木との関係でいうと帽子のほうが下のはず。地面に落ちてからは、根が出るのが下、目が出るのが上のはずだ。ここで私の知識があいまいになり、チョンのほうからは芽が出るのはいいのだが、では根は帽子のある「お尻」のほうかというとあやしくなったところで、スマホで調べた人がいて、どうやら根も芽もチョンのほうからでるようです。そうなると上も下もありません。


ドングリはどっちが上?の説明

 そうした解説とは違い、やや話し合いの要素のあるやりとりがありました。毎木調査をしたところは東西に流れる玉川上水を南北の貫く位置になります。そこでその話題になりました。
 私たちがこの日したように、私は動植物の向き合ってコツコツと事実を記載しています。そのこと自体が目的で、しいて目的といえば「自然の話を聞く」ことが楽しく、そのことに価値があると思っているからです。動植物がいかに懸命に生きているかということが体感されると、その生息地を奪うことが罪深いことだと心の底から思えるようになります。まして、ここは400年近くも前に掘られた運河ですから、歴史的な価値もあります。そこをさほど必要とも思えない道路を強引につける必要があるか、はなはだ疑問だと思います。私がそういうことを考えていたとき、ウィルソンという生物学者の書いた文章にであい、その言葉が心に突き刺さりました。
 アマゾンの森林を伐採するのは、食事のために火を得るのに、ルネサンス時代の名画を燃やすようなものだ。
 ありふれたコナラやイヌシデを伐採してはならないという法律はどこにもありません。だから行政は合法的におこなうことになんの文句があるかと言います。そういうレベルでの正当性、つまり裁判で勝つか負けるかでいえば、私たちが負けるのは明らかです。しかし私たちは法に抵触するかしないかというレベルでものごとの決断をしているわけではありません。この場所にある林そのものの存在価値が尊いという気持ちを共有することのすばらしさが道路建設の是非を問う基準になってほしいと思うのです。

 この日は高校生も参加していました。彼は映像を撮ることに興味があるそうですが、毎木調査の結果を聞いて、限られた樹種が繰り返し出てくることに疑問を持ったようでした。そして「なぜなんですか?そのためにコナラやイヌシデを植えたんですか?」と質問してきました。「そうか、林そのものの成り立ちを知らないのだ」と思い、以下のような説明をしました。ちょうど向かいにヒノキの植林があったので、言いました。
 「あそこにヒノキ林があります。あれは植えたものです。ヒノキはよい材木ができるので経済価値を求めて植林したものです。でも、このコナラ林はそうではありません。そうではありませんが、経済価値がまったくないということでもありません。
 津田塾大学が都内から引っ越してきたのは1920年代ですが、そのときの写真があってみると、このあたりは全部雑木林で、北のほうには畑が広がり、家は一軒もありません。意外なことですが、畑で作物を作るにはそれと同じ面積の雑木林が必要だそうです。緑肥をとるためでもあり、薪や炭をとるためでもありました。
 <潜在自然植生>という概念があります。その土地に本来あるべき植生ということで、ここであればモミやカシの林だとされています。高尾に多摩森林科学園がありますが、あそこにはそういう森林があります。そういう林を伐採すると、モミやカシは再生力がなく減っていきますが、同じ林にあったコナラ、クヌギ、サクラ類、シデ類などは生き残り、増えて生きます。それがヒコバエで、最初は枝ですが、それが幹になって20-30年たつとまた刈り取られる大きさに育ちます。そういう伐採年代の違う林があってローテーションで使っていたわけです。いまの玉川上水にこれらの木が多いのは、そういう薪炭林の名残です。質問に答えれば、いま多い木は植えたのではありませんが、放っておいたのでもなく、繰り返し伐採するという影響下に成り立った林ということになります。
 ところで、そういう雑木林はタヌキにとって理想的な環境だったと思われます。夜に畑に行けば食べ物もあるし、危険であれば林に逃げ込めば大丈夫です。雑木林にはさまざまな果実がなるし、昆虫もいるので、一年中食べ物もあります。きっと農家の残飯などもあさったことでしょう。その雑木林は1950年代まではこのあたりで幅広くあったのです。それが東京オリンピックのあった1960年代に東京の人口の大爆発によって宅地が増え、一気に減少して、今は玉川上水の緑地が最後の駆け込み場のようになっています。津田塾大学にはよい林があって玉川上水に隣接していますから、タヌキのよい住処になっています。
 最初の話にもどれば、そういう意味でも、現在ある玉川上水に道路をつけたり、これ以上緑を減らすようなことは、すばらしい芸術作品の意味を理解しないで、焚き付けに使うような愚かなことだと思います。」

 毎木調査は単純な作業でしたが、作業の合間に私がした話をリー智子さんが都市の緑地のあり方、あるいは私たちと自然のあり方のほうに展開してくださったので、話題が自然にそのような流れになりました。こういう話ができたのは、こうした地道な作業の背後にある意味を確認する上で意味があったと思います。



玉川上水の価値などについて話し合う



調査が終わったので、集合写真をとってひとまず午前のシメをしました。

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 お昼をすませてから、津田塾大学の西側を走る府中街道をはさんでなかなかよい雑木林があります。これはかつてある人が大学に寄付したのだそうです。玉川上水とは違い、下刈りをしておらず、周りが柵で囲われ、林を斜めにつっきる歩道にも柵があるので、人はほとんど入らないようです。そのためアオキを主体としたヤブになり、落ち葉が厚くつもっています。


津田塾大学向かいの雑木林内のようす

 津田塾大のキャンパス内のタメフン場から、この林に置いた餌に入れたマーカーが回収されているので、タヌキは府中街道を横切って往復していることがわかっています。だからこの林にもタヌキのタメフンがあるはずだと踏んでいました。
 ここを10人あまりで南から北にほぼ平行に歩きました。藪がすごいので歩きにくく、襟元に木屑が入ったりしてたいへんでした。半分くらい歩いて津田塾大の正門を超えたくらいのところで、私が歩いていたところにタメフンがありました。新しい糞もあり、エノキやムクノキの実生(みしょう)もありました。外見で何かが入っているのはわかりませんでしたが、一部のものには哺乳類の毛がありました。


発見したタヌキのタメフン(左)と糞を採取する高槻

 そこで撮影したり、糞の採取をしたりしているうちに、遅れていた関野先生たちが来て、別のところでもタメフンではないが糞があったということで、そこに行きました。たしかに糞があり、外見からモチノキの種子がたくさん入っているのがわかりました。これは常習的なタメフンではないようでした。そういう糞はもう一カ所あり、一応3カ所で見たことになりました。


モチノキの種子の入った糞

 藪の中を歩き回るというのは力も使うし、なにか緊張感もあるので、林から出たときほっとしたような気になりました。
 今日は2つの作業をしてちょっと疲れました。皆さん、ご協力ありがとうございました。写真の多くは豊口さんと棚橋さんの撮影によるものです。
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