玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

東大和市の観察会 2018.10.27

2018-10-27 09:39:38 | 観察会
<作業中>




<はじめに>
 しばらく前に玉川上水の観察会の常連の棚橋さんから、彼女が関わっている東大和市で行なっている子供に体験をさせている活動にワンポイントで動植物の指導をしてもらえないかと打診がありました。東大和市で行うので、野火止緑地がいいだろうということで下見に行きましたが、意外に植物が貧弱で観察会はむずかしそうでした。ただ一応と思い、センサーカメラをおいたらタヌキの写真が写り、タヌキが住んでいることは確認できました。ただそれだけでは観察会にならないので、玉川上水を勧めました。玉川上水は微妙に小平市に属すので東大和市としてはあまりよくないようでしたが、子供にとっては市ざかいは意味がありませんから、観察を玉川上水で行い、座学を東大和市の施設で行うということで折り合いがつきました。

<玉川上水沿いを歩く>
 10月27日当日は雨の予報だったのですが、小雨決行のつもりでした。8時半に玉川上水駅に集合し、9時に佐野館長(東大和市南郷公民館)から挨拶があって、玉川上水に向かいました。天気は大丈夫そうでした。
 最初に玉川上水が江戸時代にできた運河であることを説明しました。歩き始めたらコナラのドングリがたくさん落ちていたので、
「一人が3個拾って、++くんが持っている袋に入れてね」
とある男の子にチャック袋を持たせて、集めてもらうことにしました。
「ドングリが落ちてるけど、もともとはこういう帽子みたいなものがついてるんだよ」と殻斗を見せました。しばらく歩くと、クヌギの木があり、丸い大きなドングリが落ちていたので
「同じドングリでもこちらは丸いね。それに帽子もモワモワと長いものが伸びているね」
と、これは別の子に袋を渡しました。

 カジカエデがあったので説明しました。
「カナダの国旗を知ってますか?あのカエデの形と良く似ているのがこのカジカエデです。カナダのはシュガーメープルといってシロップをとります」


カジカエデの説明をする


 林のあるところを抜けて左側に小平監視所という、水を東村山の浄水場に流す場所があり、明るい道になります。チカラシバやエノコログサなどが生えていました。その一部にイノコズチがあったので、ある男の子の背中に穂をつけて下に引くと、シャツに果実が直線状につきました。




イノコズチの果実を背中につける


「わあ」
と歓声が上がりましたが、その子は何が起きたのだろうという顔をしていました。
 同じような「ひっつきむし」のコセンダングサがありました。


コセンダングサ

 これも同じように別の男の子のシャツにつけました。このトゲには逆棘が付いているので、その説明をボードに描きましたが、あとで写真をみると、子供達は全然、聞いていなかったようです。


ボードに説明を描くが、子供たちは聞いていない


 その先でまた林になり、林縁にアオツズラフジがあったので果実をとって種子を取り出しました。この種子はアンモナイトみたいな不思議な形をしているのです。そこで、ファーブルという名前の実態顕微鏡と、ルーペを2つ取り出して見てもらいました。
 子供達は我先にと覗いていました。


「ファーブル」を覗く


ルーペで果実を見る


「あ、貝みたいだ」
「そうだね、貝殻見たいな形をしているね。アンモナイトという貝にそっくりなんだ」

アオツヅラフジの種子

それから、上水の水面に最も近づける場所があるので、そこにおりました。子供は魚を見つけて
「魚がいる!」
と歓声をあげていました。ここで写真を撮ってもらいましたが、この年頃の男の子というのはじっとしていないものです。


玉川上水の水の近くまで降りる

その後、クリ、ノイバラ、シロダモ、ナンテンなどの果実を採集してもらいましたが、子供は果実を取るのが好きなんだなと感じました。


シロダモの果実をとる


ノイバラの果実をとる


ナンテンの果実をとる


30分ほど経ったので、記念撮影をしてから畑のあるところでUターンすることにしました。


記念撮影


ヒヨドリジョウゴ、タチバナモドキ

ノイバラ、シロヤマブキ


シロダモ、 ゴンズイ

クズ
当日、見られた果実


<室内で>
 玉川上水の駅を通過して、線路の北側の東大和市民センターに移動しました。歩いて5分ほどでした。2階の部屋は広い部屋でした。採集してきた果実を机に並べました。
「自分が好きな木の実を選んで」
といって選んでもらいました。


おもいおもいに果実を選ぶ


ドングリにも色々あることを知ってもらうために、「帽子」の違うコナラとシラカシ、それにドングリ全体を包むスダジイを配ってもらいました。

そのあとで、スライドの説明をしました。
「今日は玉川上水を歩きましたが、ここにはタヌキがいます。そのタヌキをセンサーカメラで玉川上水と周りの公園などで比べると、玉川上水の方が多くいることがわかりました。東大和の自然としては野火止用水の方がいいので、下見をしてきました。その時、センサーカメラを置いてきました。そうしたらタヌキが写りました。だからあそこにはいるんですね。でも、木の実が少ないので、観察会は東大和じゃないけど玉川上水にきたわけです」


野火止緑地で撮影されたタヌキ

「小平の津田塾大学ではタメフンというタヌキのトイレがあることがわかったので、そこにカメラをおいておいたら、フンをしているタヌキも写りました。それから糞の中身を調べると食べ物がわかります」


フンをするタヌキ(津田塾大学で)

といって津田塾大のタヌキの食べ物の季節変化を示しました。
「タヌキが糞をしたところには春になるとこんなに芽生えが生えてきます。だからタヌキは植物のタネを運んであげています」
「それから、タヌキが糞をすると、糞虫という虫がきてバラバラにします。だからタヌキがいることでいろいろなことが起きるんだよ、生き物はつながって生きているんだ」
それから都市で生きるタヌキは交通事故にあることなども話しました。





話を聞く


それから話題を果実に移しました。はじめにそれぞれが選んだ果実の直径を測定しましたが、これは保護者の手伝いが必要でした。次に種子を取り出して、その直径も測定してもらいました。


果実をルーペで観察する








果実や種子を計測する


「ちょっと食べてみよう、けっこう甘いなあ」


これは種子の大きさの変異に比べて果実は5-10mmくらいに集中していることを知ってもらおうという狙いがありました。
「なぜこのくらいの大きさが多いと思う?」
と聞くと、いくつか考えが出ましたが、ある子が
「鳥とかが食べやすいから」
と的確に答えました。


考えを述べる

ただ、グラフの読み方などを含めて小さい子には少し難しかったようです。

その次に色チャートをホワイトボードに貼り、自分の調べた果実の色のところにマグネットを付けてもらいました。






色チャートとマグネット


「自然界にはこういういろいろな色があるんだけど、木の実は赤いほうにかたよっているね。なんでだろう?」
これもいくつかの考えが出ましたが
「林の中で目立つと動物に見つけやすいから」
と的確な答えが出ました。
 このあたりで始めてから2時間半が経過したので、子供達は少し疲れてきたようでした。

 次にドングリの話をしました。大人もあまり知らないのですが、ドングリの「中身」は子葉です。そのことを実感してもらうために、カラを外してもらいました。これはカッターが必要なので保護者にしてもらいました。
「中身が出てきたら、優しくもむようにしてください。そうすると2つにパカっと分かれます。カッターで切ったように分かれるでしょう?これが2枚の葉なんです。アサガオを育てたことがあるかなあ」
「ある」
「タネから双葉が出ていたよね、あれとドングリの中身は同じんだ」
「へえー」

 説明のあと、時間があまりなくなりましたが、それぞれに木の実をスケッチしてもらいました。描き方の指導などはできそうもないので、自由に描いてもらうことにしました。








スケッチをする


シロダモのスケッチ(高槻)



子供と作品(露出の関係で作品が見えにくいですが、ご容赦ください)


 ガマズミやアオツヅラフジのような動物に食べられて種子を運ばせるもの、ドングリのように食べられたら死んでしまうけど、地面に蓄えられて、動物が忘れたら発芽するもの、それからイノコズチのように動物の体について運ばれるものなど、動物に種子を運ばせる果実を見てきましたが、最後に動物ではなく風に種子を運ばせる果実の例としてマツを紹介しました。松ぼっくりから果実を取り出して椅子の上から落としたら、クルクルと回転してゆっくりと落ちていきました。




マツの果実を落とす


<まとめ>
 全体としては、心配した天気はなんとかなって野外を歩けたのがよかったと思います。子供達はじっとしていられなくて走ったりふざけあったりしていましたが、果実を集めるのは好きなようで割合集中していました。室内は解説の内容を欲張りすぎて、小さい子たちには辛かったようです。この点は今後の参考にしたいと思います。
 この観察会をきっかけに、子供たちが今後、野外に行ったときに、果実に関心を持ってくれるようのなってくれれば幸いです。

 写真は豊口信行さん、林雅一さん、棚橋早苗さんが撮影してくださいました。ありがとうございました。
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2018年10月の観察会

2018-10-21 09:35:47 | 観察会


10月は第3日曜日の21日に観察会をしました。ずっと雨や曇りが続いていたのに、カラッと晴れてとても気持ちの良い日和になりました。気温もちょうどよく、少し風もあってとても快適でした。
 今回は果実を観察し、倒木のようすを見ようと思ったので、集合をいつもの9時半ではなく9時にし、鷹野橋から2.3km下流の小桜橋までを往復することにしました。

<倒木>
 鷹野橋から下流に向かって歩き始めましたが、鷹野橋のすぐ西側(上流)に太さ50cmくらいのコナラが倒れているのがありました。玉川上水をまたぎ、さらに歩道を塞いでいたようで、倒れた10月1日のうちに片付けられていたようです。
 その東にも幹が折れたコナラがあったので太さを測定してもらいました。周が119cm(直径38cm)ありました。


木の周囲を測定する


「9月31日の深夜に台風24号がきて強い風が吹きました。南風だったので私は玉川上水の南側の木が根返りをして北側に倒れただろうと予測しました。それで、私たちが進めている花マップという活動(こちら)で玉川上水30kmの範囲の倒木を調べることにしました。調査の内容は橋に番号をつけて橋と橋の間の区画になんという木が倒れていて、それの太さと向きを記録しています。倒れるといっても根返りだけでなく、幹が折れたものもあるので、その区別もしています」



「実は私は昨日、明治神宮で調査をしたのですが、驚いたことに明治神宮では枝は落ちていましたが、倒れたり幹が折れたりした木は全くありませんでした。全部を見たわけではないですが、ほとんど無傷だという印象でした。木がまとまった林を作っていると、それが面となって風が吹いてもお互いに守りあうのだと思いました。それに比べれば玉川上水は東西の壁のようなものですから、南から風が吹けばまともにダメージを受けるわけです」
 花は少なく、わずかにヤブランが咲いていたくらいでした。久右衛門橋を超えると大きなコナラが倒れており、これは根返りでした。その木がフェンスを直撃してフェンスも壊れていました。







この木の周は195cm(直径62cm)ありました。

「こういう大きな木が倒れると、これまで複数の木が覆っていたところに穴が空きます。そうすると光が射して下の植物が育ちます」


できた隙間(ギャップという)


他にも木が倒れて、玉川上水をまたいでいるようなのがありました。



<秋の果実>
 この辺りはもともとやや木が少なく明るいので、ムラサキシキブ、ガマズミなどの実がありました。


ムラサキシキブ、ガマズミ


この後で見たのですが、ヤマコウバシやシロダモも果実をつけていました。


ヤマコウバシ、シロダモ


「ヤマコウバシはクロモジの仲間のヤマコウバシがありました。みなさんの食べる羊羹には付いていないかもしれないが、高級な羊羹にはクロモジの爪楊枝が付いています。ほんのりといい香りがします。これもクロモジほどではないが、ほら、こうして枝をおるといい香りがします。<コウバシ>は香ばしいですね」
「常緑ですか?」と関野先生
「いや、落葉樹ですが、ただ冬の遅くまで茶色い葉をつけていて、冬の方が目立つ木です」

 サンショウもありました。先月も体験をしてもらったので、今回も葉と少し果実をとって
「この葉っぱを手のひらにおいてパンと叩いてください」
「あ、ほんといい匂い」
「それからこの赤い果実をちょっとでいいからかじってください。これが<サンショは小粒でもピリリと辛い>です」


サンショウの実をとる


ちょっとかじってみてください


 ヤマノイモの果実があったので、中に入っている種子を取り出してクルクルと回転して落ちる様子を見てもらいました。


ヤマノイモの果実


ヤマノイモの果実が落ちる様子を実験


それからコセンダングサ、キンミズヒキ 、ヌスビトハギ、イノコズチなどの果実があったので、男子学生のシャツに、いかに巧みに果実が付着するかをデモンストレーションしたら、みなさん喜んでいました。


コセンダングサの果実


 そう言いながら、私自身も藪から出てきたらズボンにヌスビトハギの果実がたくさんついていました。


ズボンにヌスビトハギの果実がたくさんついた


秋は植物がいかに工夫して種子を散布しようとしているかを観察する良い機会になります。

<さらに歩く>


大きなケヤキがあったので記念撮影をしました。直径は1mに少し足りないくらいでした。


ケヤキの前で記念撮影


ホトトギスが咲いていました。
「10月になると夏の花の残りがあるという感じですが、これとヤクシソウはこのくらいから咲きます。あまり訪花昆虫がいないだろうと思うのですが、逆に限られた花を探して集中するということがあるのかもしれません」


ホトトギスとホトトギスを観察する関野先生


林の下にフユノハナワラビがありました。



「これはシダですが、普通のシダが葉の裏に胞子嚢という胞子の入った袋をたくさんつけていますが、これは葉には胞子嚢がなく、地下で繋がった<胞子茎>という株を伸ばします。光合成する葉と胞子を作る葉が別れているということで、原始的なシダです。ツクシはスギナというシダの胞子茎で。これと同じです」

それから先では倒木はありませんでした。

 それからチャノキがありました。今日はビギナーが多いので
「この白い花、大きめの果実がありますが、なんだと思いますか?」
「・・・・・」
「お茶です。名前はチャノキと言います」
「え?あの飲むお茶ですか?」
「はい、この辺は畑の生垣などにもよく使われるから、なんかの機会にタネでも飛んできたのかもしれませんが、時々見かけます」


チャノキ

「思えばこの植物のためにインドの歴史が変わり、イギリスの歴史、したがってアジアの歴史も変わったんですね。アジアでは古くからお茶の飲んできたし、イギリスでは紅茶を飲むことが生活の一部になっていますが、あの時代に熱帯から船で運ぶのは大変なことでした。ヨーロッパ人が嗜好品として飲むために、熱帯雨林を伐採してお茶畑を作り、刈り取るための奴隷もいたし、工場を作って社会も大変化をしました」
「あれは中毒性はないんですかね。私はお茶が大好きで飲まないではいられないけど、考えてみたら依存症みたいなもんですよね」
と言ったら医学博士でもある関野先生がお茶の成分と人体に与える効果について専門用語で説明してくれましたが、よく覚えていません。


お茶の成分や薬効の説明をする関野先生

ともかく、1つの植物が世界の歴史を変えたと思うと感慨があります。この植物が普及した以降は人間が当たり前のように飲んでいますが、「それ以前」があったわけで、何を飲んでいたのだろうかと思います。
「いろんなハーブがありますから」
と関野先生。

小平の玉川上水では林が立派で、武蔵野の雑木林の植物がよく残っていますが、橋があると林が切れるので、明るい場所に生える植物が出てくる傾向があります。

<明るい場所の植物など>
 橋の近くにイヌタデが咲いていました。ピンクの可愛らしい花です。花には中に雄しべや雌しべがあるわけですが、この時期のイヌタデの「花」は中にパンパンになるくらい大きい種子が入っています。だから普通の虫媒花が、訪花昆虫を惹きつけるために花を目立つ色にしていることを考えると、いまの時期のイヌタデの花はその機能は持っていないことになります。種子を取り囲んでいるという意味では果実の果皮の働きをしているということになります。では多肉果のように、その色で動物に食べさせて種子散布をしているかといえば、なんともいえません。動物にとっては外見が同じピンクの花では区別がつかないはずだからです。
「これを見てください。1ミリくらいの小さな種子ですが、ソバと同じ形をして、断面が三角形です。ソバはタデの1種です」


イヌタデの花と種子


「はい、指紋までバッチリ撮れました」と棚橋さん。

 商大橋の近くではセンニンソウがまだ花をつけていました。暖かかったせいかハチなどがたくさんきていました。よく見るとカマキリがいました。カナヘビの小さいのを見つけた人もいました。それにクモの巣があってツマグロヒョウモンが死んでいました。明らかにクモに襲われて体液を吸われたようです。


クモに捕まって死んだツマグロヒョウモンとクモ(ジョロウグモ?)


カマキリ


よく見るとクモの巣がいくつもありました。クモはこの花に今シーズン最後の機会とばかり、昆虫が吸蜜にしようと集中していることを知っていて巣をかけているようです。皆さん、興味深げに観察していました。


センニンソウやクモを観察する


 小桜橋まで行く予定で、気持ちの良い空気の中をのんびりと歩きました。この辺りは南岸に野草保護観察ゾーンがあって、時々訪花昆虫の調査をするのに訪れていますが、今日は倒木をチェックするためにずっと北側を歩きました。北側は林が続くのですが、桜橋が近づくあたりには木が少なく明るいところが多いようでした。
「ここを見ると、ツルウメモドキ、ヤマノイモ、ヘクソカズラ、ノブドウ、クズ、エビヅルと、色々な植物がありますが、今言ったのは全部つる植物です。こういう明るい場所は草本類が育つのに都合がいいのですが、玉川上水の場合はすぐ隣に木もあるので、草本のうちでもツル植物にとって都合がよく、伸びては他の植物に絡まったり、覆ったりして上に上に伸びます」
「今回、台風でかなりの木が倒れ、枝もたくさん落ちて明るくなりました。だから、今後こういう場所につる植物が増えるという形で群落の変化が起きるはずです。玉川上水の植物は常に変化しているということで、それが今私たちが花マップ(こちら)を記録している理由でもあります」
 ツル植物といえば、津田塾大学の近くでツタがあったので説明しました。
「これはツタという植物で、ナツヅタとも言います。もう1つキヅタという常緑のものもあります。ツルとツタはどう違うと思いますか?」
少し間があって、
「ツルは絡まるけど、ツタはなんかへばりつくという感じ」
と関野先生。
「そうですね。ツルは絡まる植物があってそれにぐるぐると巻きつきますが、ツタは吸盤を持っていてくっつきます。だから棒のようなものでなくても、岩や壁のような面的なものでも伸びることができます。ツタの吸盤があるので見てください」


ツタの説明をする


エビヅルを見る関野先生


<締めくくり>
 小桜橋に着きました。
「予定ではここまでの往復でお昼くらいまでとしていますが、すでに11時40分です。いつもながら時間の見積もりが悪くてすみません。色々出会うものがあるので、それはそれでいいと思います。ここからは一橋学園駅が近いので、そちらで帰る人もおられるので、ここで一応シメとします。ありがとうございました」
 ほとんどの人はここで駅に向かいましたが、私と棚橋さんはUターンして南側を歩いて鷹野橋まで戻ることにしました。南側には野草保護観察ゾーンがあるので、アキノノゲシ、ノコンギク、ナンテンハギ 、オミナエシなど草原の花が咲いていました。


アキノノゲシ、ノコンギク、ナンテンハギ 、オミナエシ

倒木はほとんどなく、鎌倉橋の東におそらく大きな木が根返りになったようで、跡がありましたが、片付けられていました。


倒木の跡


 今回は、24号台風の影響を軸に、植物群落は、構成種の違いが環境の変化に応じて変化することで常に変化しているのだということを実感できたと思います。天気にも恵まれて楽しい時間を過ごすことができました。

 写真は主に棚橋さんが撮影してくださいました。リーさんの写真も使いました。ありがとうございました。

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2018年10月7日の観察会

2018-10-07 21:07:55 | 観察会



津田塾大学のタヌキについて一緒に調べている棚橋さんと豊口さんが9月29日にマーカー入りソーセージをおいてくれました。今回の調査はそのマーカーの確認を1つの目的にしました。少し説明が必要です。

 これはタヌキの動きを調べるための作業です。マーカーとはプラスチック片で、色と番号で区別できます。これをソーセージの中に入れておいておくと、タヌキが食べてタメフン場で糞をします。そうするとどこからどこまで動いたかがわかります。
 津田塾大学のタヌキは構内においたマーカー入りソーセージを食べ、かなりの数がタメフン場で回収され、構内をあちこち動いていることはわかりました。次の段階としてキャンパスの外の玉川上水沿いにおいたら、それが構内のタメフン場で出てくるだろうかということです。
 私は10月2日に回収し、構内3箇所のタメフン場のいずれからも回収ができました。もう一度回収して本日7日の観察会でマーカーが出るかどうか調べようと思っていたのですが、用事が立て込んで土曜日に行こうとしたら、津田塾大でイベントがあって土日は入構できないことがわかりました。
 一方、10月1日未明に台風24号が暴風を吹かせ、各地でたくさんの木が倒れました。玉川上水でも被害があったということなので、その観察もしたいと思いました。
 今日、集まってくれた人にはタヌキに興味がある人が多かったので、室内でのふん処理だけでなく、野外の糞を見てもらいたいと思いました。そこで、津田塾講内ではないですが、その向かいにある雑木林の中にもう一ヶ所タメフン場を確認しているので、それを見に行きました。

 幸い糞はありました。7、8月には分解されてほとんど集まらなかったのですが、9月中旬以降は少し見つかるようになりました。タヌキのタメフンを見たことのない人に見てもらいました。


タヌキの糞


糞を回収する


 玉川上水沿いに上流に向かいましたが、倒木は思ったほどはありませんでした。高野橋の近くには直径60cmほどのクヌギが倒れ、玉川上水をまたいで対岸のフェンスを潰してさらに歩道を挟んだフェンスも曲げていました。すぐに処理されたようで、太い幹がチェーンソーで短く切って片付けてありました。


倒れたクヌギを見る


片付けられたクヌギの木


 これだけの木が倒れるということは、どれだけ強い風が吹いたか、想像に余りあります。

「hardwoodっていうことば知ってる?」
「いいえ」
「針葉樹のことをsoftwood、広葉樹のことをhardwoodと言います。実際広葉樹が硬いんです。木偏に堅いと書いて樫だけど、その通りなんだ。ところで、oakは樫と訳されるけど、ヨーロッパ人がoakと言うときは落葉樹のことで、ナラと訳すべきです。oakは、コナラのように新緑が爽やかで、紅葉もきれいな明るい林のイメージ、それに比べるとカシは常緑で暗い林なので、oakをカシと訳すのは誤訳と言っても良いくらい。だから、もちろん家具の材料としては広葉樹が高級だけど、幹が曲がるので、建築材としては使いにくい。ま、針葉樹で作るのは利便性を優先したもので、ホンモノとは言えないかな。鉄道の枕木もクリ材で、一番丈夫なんですね」
などと雑談。

 途中でサワフタギ、ゴンズイ、ノイバラなどの果実があり、多肉果の説明をしました。これからいろいろな果実が色づきます。


サワフタギ


ゴンズイ


ノイバラ


多肉果の説明

 
 10月なのに30度もあったらしく、妙に暑い日でした。武蔵野美大について、2日に拾ったものを含めて、タヌキの糞の処理をすることにしました。

「フルイは径が0.5mmのものと1.0mmのものがあります。内容を量的に評価するときは0.5mmに統一していますが、それは終わって論文にもしたので、今年は1mmで主な内容を取り出して出現の有無だけをチェックしています。だから、どちらでもいいですから、こうして糞を出して水を流し、歯ブラシてこすって中身を出します」


糞をシャーレに出して水洗する



「私は糞をチョコピーに喩えますが、水洗ではチョコを水で流してピーナツを出すわけです」
「ポリ袋には紙切れが入っています。実はこれは紙ではなく、プラスチックの薄いもので、表面がざらつくので、鉛筆書きができます。だから雨が降っても、水の中でも鉛筆で書けるのです。ウォータープルーフというわけです。これが便利なのは、間違いがないということです。よくポリ袋から出して別の容器に入れる時、ポリに書いてある情報を写すのですが、人が移す時、数の中には必ず間違いがあるものです。これは、不思議なことですが、どうしてこんな単純なことを間違えるのかと思いますが、そういうことはあるもんなんです。でも、最初に書いたこの紙切れがあれば、書き写すということがないので、間違いがなくなります。とても重宝しています」
「終わったらシャーレに出してください。その時、必ず紙切れをつけてください」
こうして取り出したところ、多くの試料にカキの種子が入っていました。またムクノキも高頻度でした。そのほかにはエノキとブドウがありました。少数例に昆虫の翅、おそらくカタツムリと思われる胴体と貝殻のかけらがありました。



水洗した試料


糞からカキ、ムクノキなどの種子を取り出す


 作業をしていたら、国立で稲刈りをしてきたという関野先生が合流して糞洗いをしてくださいました。


糞洗いをする関野先生

 金子さんは近所で見知らぬ動物を見つけたのですが、まだへその緒をつけ、目も開いてなくて、なんだろうと思い、獣医さんに相談してもわからず、ネットで調べてどうやらタヌキらしいということで育て始めたそうです。大きくなったので、野外に放したけど、どうしているか気になるそうです。それはそうでしょう。私は金子さんから少し前にその相談をもらい、やり取りをしているうちに、観察会に参加することにしたとのことでした。金子さんがスマホに残している保護した時のタヌキの赤ちゃんの動画を見せてもらい、その可愛さに歓声が上がりました。
「これを見たらほっておけないよね」
自然で無事に暮らしていることを祈ります。

 最後に今日の内容をまとめて黒板を使って説明しました。ポイントは次の3つ
1)マーカー調査の目的と経緯。今回はマーカー回収は不成功に終わった。
2)津田塾大学のタヌキの食性は関東地方の雑木林のものに比べて栽培樹木と高木の多肉果が多い。それは津田塾大学のキャンパスの深林管理によっている
3)津田塾大学のタヌキの食性の季節変化は冬の鳥類、哺乳類、春から夏にかけての昆虫、秋の果実という推移をとる(こちら)。今回は秋の内容が確認できた。


タヌキの食性の特徴を説明する


写真はいつものように豊口さんと棚橋さんの協力によるものです。ありがとうございました。
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