玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

Plum Garden

2017-08-14 08:09:07 | 生きもの調べ
津田塾大学でタヌキのことを調べていますが、津田塾大学で出しているPlum Gardenというネット雑誌というのでしょうか、その編集にたずさわる学生さんから連絡があり、取材を受けました。その記事が公開されました。こちら



Plumとは梅のこと、津田梅子先生を記念した名前のようです。
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「玉川上水にはふん虫がいるよ」への感想 大人から

2017-08-01 21:03:27 | 生きもの調べ
大人の人からも感想が届きました(あいうえお順)。
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岩村陽恵
 まず、率直に思うことは糞虫とあんなに長い時間向き合ったのは初めてだったな~ということです。顕微鏡で体や顔を見るような機会もなかなかないですし、糞虫と一口に言ってしまって、知っていると思い込んでいたなと感じました。「ファーブル昆虫記」などでよく知られているのですが、自分の目で生きている糞虫を観察したのは初めてです。小さな体で働き者だということや、住宅地の中の玉川上水という小さな自然の中で生きていることを自分の目で見て確認できたことがよかったです。
 子どもたちはそれぞれ見たり聞いたり、聞いてなかったり(笑)、自由に感じ取っていたようすが見ていておもしろかったです。
 印象に残ったのは高槻先生が子どもたちの絵を見て回られているときに、その子が見ている糞虫と、描いている絵を何度もよく見比べて書き足りないところをアドバイスしていたことです。先生は本物を見ないでも糞虫が描けるはずなのに、絵だけ見てアドバイスしないんだなぁ~と思って、「観察会で虫を描くということはそういうことか!と。糞虫も個体によってそれぞれ違うんだ…」とも思いました。アドバイスをもらった子は、すぐ先生と同じように虫と自分の絵を何度も往復しながらじっくり見て、線を描き足していました。子どもはアドバイスをもらうとすぐにできるようになるんだな!と感心しました。私にとっては充実した時間となりました。
 またこのような機会がありましたらぜひ参加したいです。季節によっても玉川上水の様子が変わると思うので、春夏秋冬たくさん観察会があるといいなと思います。

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尾川直子
 高槻先生、地球永住計画のみなさん、ありがとうございます。助っ人で参加しました。大人ですが、感想文送ります。
 あのかんたんな仕掛けで、どうして糞虫はつかまってしまうのか、というところが気になってひっかかっていたので、帰り道に高槻先生にご質問できる機会があってよかったです。糞虫は目があまり見えないので、においをたよりにうんちの近くに一度着地してからたどりつこうとするが、水に着地すると羽が重くなって飛べなくなってしまうとのことでした。表現これで合っているでしょうか。一人で聞いてしまったので、お伝えします。
 子どもたちがとても意欲的で、うんちくさいうんちくさいと言いながら、うきうきしている様子が、真剣勝負の観察会の力だと思いました。うんちくさいという子どもたちは率直で、高槻先生が糞虫がいなかったらうんちだらけになってしまうと話されたとき、一瞬うんちに覆われた世界が見え、たくさんの糞虫がそれを食べて消えていくのが見えるようでした。大変説得力あるお話だったと思います。
 ふだんは見かけない目立たない虫をトラップで集めるとあんな密度でいること、派手なかっこいい虫じゃないけど、話を聞いてみるとおもしろい。大きくして見たり、スケッチしたりするとどうなっているかわかっておもしろいといういい観察会だなあと思いました。先生が自分でいろんなものを作って、糞虫を再現しようとされている姿勢が、子どもたちにとってとても刺激になったんじゃないかと感じます。参加できてよかったです。

<高槻の解説>
昆虫は翅が4枚ありますが、甲虫の場合は外側が硬く、内側にやわらかい翅があります。外側を鞘翅(しょうし)といい、甲虫は正式には鞘翅目(しょうしもく)といいます。内側の翅は鞘翅のなかに折りたたまれていて、展(の)ばすと長いです。飛ぶときは展ばして飛ぶのですが、水に濡れるとこれができなくなります。展びたとしても、濡れていてブンブンと震わすことができなくなります。それを「重くなる」というのならそれで正しいです。
    


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中川聡恵
 素晴らしい講座とご報告ありがとうございました。顕微鏡で細かい毛の部分等詳細も観察できて、親もとても楽しめる講座でした。また、「100均グッズ」であんなに素敵なものが作れるというのも本当に驚きでした!昆虫に関する講座でしたが、武蔵美で開催するのにぴったりの芸術作品!家でも子どもと虫の工作を楽しみたいと思います。
 頂いてうちに持ち帰った糞虫君がうんちをほぼすべて分解して、驚きです!
 人間のトイレにも糞虫や微生物を使って自然に帰る仕組みが全家庭に行き届いたら本当に素敵だなぁと思いました。
 本当に楽しく素敵な講座をありがとうございました。またの機会にお会い出来るのを楽しみにしております。

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柴垣茂之
 有卯はペットボトルを応用したトラップはぜひ作ってみたいとも言っていました。ウチはネコを飼っているので、餌となる糞は手に入りやすいです。
 いただいた糞虫は家に帰り着く頃には犬の糞をバラバラにしてしまい、
さっそくネコの糞を追加で入れたくらいです。
 子供から大人まで誰でも楽しめる観察会でした。身近なのに普段あまり目にしない生き物の事を知るのは楽しい事です。ありがとうございました。

<タヌフン博士のこたえ>
 ネコの糞が手にはいるようなので、それをお茶パックに入れて、割り箸などにつるしてみてください。トラップはただおいただけでは倒れるので、スコップをもっていって地面をほって立ててください。玉川上水でなくても、雑木林などでもいると思います。
 いまタヌフン博士はモンゴルにいます。草原にあった牛の糞を割ってみたら、大きめのエンマコガネがいました。日本では北海道にしかいない種類で、はねは茶色です。


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長谷川麻友美
苺依が「お母さん、背中がへこんでいるふん虫は雄だよ」と、教えてくれました。
性別の区別は背中でするのでしょうか?
また、お尻から突起を出すこともあるのですが、これはふん虫の生殖器なのでしょうか?

<タヌフン博士のこたえ>
 コブマルエンマコガネであればそうです。へこんでいるというより、2つのコブがあるために、そのあいだが谷間になっているということです。甲虫には仲間にはカブトムシもそうですが、オスとメスが違うものがあります。糞虫にもそういうのがいて、エンマコガネはだいたいそうですが、センチコガネは違いがありません。お尻の突起はオスの交尾器かもしれませんが、とぶための翅がおさまりきらなくて出ていることもよくあります。池田くんはそのことをスケッチしていました。 タヌフン博士



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長谷川麻友美
私は、中3の長女が幼い頃より、国分寺『おばあさんの知恵袋』、店主三田村さんを訪ねております。
https://kokubunjimonogatari.com/human/mitamura.html

三田村さんは幼い頃、どうしても海外のスポーツカーのパンフレットが欲しくて(メーカー名は忘れました)、本社へ英文でお手紙を出したそうです。
(当時三田村少年はカトリック系の学校に通っており外国語の授業があったそうです)すると、子どもが出した日本からのお手紙に対して、本当にパンフレットが送られてきたというお話しを今でも尚嬉しそうに話されていた事を思い出しました。
 また、動物画家薮内正幸さんは、幼い頃より国立博物館の先生へ一方的に質問手紙を出し続け、そして真摯な返信に勇気をもらっていたと息子さんからお聞きしました。
 今回の『ふん虫』観察会においても高槻先生は、とても分かりやすく子ども達に解説頂き、尚、観察後も子どもの質問に対し真摯にお答え頂きました。子ども達にとってかけがえのない観察会となったと思います。
 まさに、『観察会はその日だけで終わるのではなく、好奇心の点火をするもの
タヌフン博士@ウランバートル』ですね♪
 高槻先生、本当にありがとうございました。娘も紙粘土で糞虫標本を作るそうです♪

<高槻の返事>
長谷川様 皆様
 すてきなメールをありがとうございました。こちら(モンゴル)は15度で、いま野外から戻りましたが外では震えていました。ストーブをつけて人心地がもどりました。
 さて、子供の頃に先生に手紙を、で思い出したことがあります。私は子供のころから昆虫が大好きで、中学生のことはけっこういろいろなことを調べていました。蝶の進化と植物の進化に対応があるのではないかと思いましたが、だれにも相談ができず、愛読書だった昆虫図鑑の監修者である九州大学の白水先生に手紙を書きました、中2のときです。そうしたらていねいなお返事をもらいました。そのときのことは最終講義で話しました。 こちら

 私は最終講義を準備するときにネット検索で白水先生のことをしらべてみましたが、私が質問を書いたそのとしに先生は蝶と植物の進化にすいて学位論文を書いておられたということがわかりました。そのときあまりの奇遇にちょっと背筋がゾクゾクっとしました。最終講義では冗談で「パクったんじゃないの?」といって会場がうけていましたが、同じようなことを考えて子供から手紙をもらってうれしかったのだと思います。こちら
 この話には続きがあって、ある少年が私に手紙をくれて、骨のことをたくさん質問してくれました。私はそれに全部ていねいに答えたのですが、しばらくしてその子から返事がきて、作品が文部科学大臣賞をもらったそうです。こちら

 その子は2年後くらいに私がお手伝いしている麻布大学いのちの博物館の「子供教室」に参加してくれました。とてもうれしいことでした。子供の純粋な心は受け手に必ず届くと思います。

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山﨑恵美
 今回、高槻先生の観察会に参加させていただくのはタヌフン以来2回目ですが、前回と同じように、私達親子にとっては、とても貴重な体験でした。
 現代はありとあらゆる物があふれ、子供達は自然と向き合う時間がとても少なく感じます。そして、虫や草を触ったりする事や拒否する子供が増えています。そんな中、今回のような観察会に巡り逢えて、とても感謝しています。
 玉川上水を歩き、途中の草むらで何となく、ただの葉っぱと通り過ぎてしまうところも、高槻先生と一緒に歩けば楽しい発見が沢山!それもまた素晴らしかったです。
 息子は、まだ二年生で、感じた事を言葉に表現して形に残すことは、大人の力が必要な時もありますが、夏休みの宿題に、とても良い自由研究ができました。ありがとうございます。
 そしていつも思うのは、皆さんの情熱、とても素敵です!これからも、楽しみにしております。貴重な体験をありがとうございました。

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リー智子
 私が一番びっくりしたのは、高槻先生です。次から次に、いろいろなことを考えたり、作ったりするのが素晴らしいと思いました。もちろん内容も意味のあるものだし、子供達にとってもいい経験になったと思います。
 まさか「うんち」を食べる生き物がいる、というのは、子供達にとって驚きだったと思います。私も常識的に知っていましたが、本当に臭い犬のうんちを目の前にして、
「この虫たちは美味しい美味しいと思って食べるのか〜!」
と改めてびっくりしました。高槻先生に出会うまでは、玉川上水にこんな生き物がいるのを見たことはありませんでした。実際に自分たちの手で捕まえてまじまじと顕微鏡で見れたことは、子供達にとっても一生を変えるくらいのインパクトがあったと思います。これらの生き物が日夜せっせとうんちを食べて、世界を循環させていることが、何らかの形で子供達の心に残ったと思います。糞虫の顔のきょろっとした目、まつげのような毛が可愛かったです。
 私は、前日のトラップを仕掛けるところも参加できました。玉川上水でさまざまな調査ができること、それが子供だましではなく、シンプルだけどしっかり内容のあるものであることが素晴らしいと思います。それもこの世界で実績のある高槻先生がいるから実現できたのだと思うと、幸運だという気持ちでいっぱいになります。
 それから、関野先生が顕微鏡を運んだり、プロジェクターのために走り回るなど、雑用を進んでやってくださったことにとても感謝しています。私がきちんと紹介しなかったので、多分子供達は、関野先生のことをお手伝いの人としか見てなかったかもしれないです。関野先生はいつも自分のことをそんなに紹介しなくてもいいと言われます。そういう姿勢からも学ぶことが多くあります。
 引率の大人や、私たちスタッフにとっても、いい経験になったと思います。こういう一つ一つの積み重ねで、子供達、地域の人たちの意識が変わっていくと信じています。
 本当にありがとうございました。次の企画を楽しみにしています。参加してくださった方々、ありがとうございました。

<高槻の返事>
 大人は人を実績や肩書きで評価しがちで、実際多くの研究者などもそのようにふるまいますが、そうでない人もいます。関野先生は「そうでない」ほうの人です。私もそっちのほうです。世間の評価よりも、実際に自分が意味があると思うことを実質的に体を動かしてすること自体に意味があると思えること、それがたいせつだと思います。
 大人の集まりだと、自己紹介があって、肩書きの説明があったりしますが、そういうことが一切ない集まりでした。それでよい、主人公はコブマルエンマコガネなのですから。
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「玉川上水にはふん虫がいるよ」への感想 こどもたちから

2017-08-01 20:00:39 | 生きもの調べ
こども観察会「玉川上水にはふん虫がいるよ」の感想や質問

 2017年8月1日のこども観察会「玉川上水にはふん虫がいるよ」に参加した人から、観察会のあとに寄せられた感想を紹介します。初めに子供の感想、そのあとに大人の感想の順で、そのあとに私が返事をつけたものもあり、それについてまた意見をもらったりたのを紹介したりしています。
 観察会はその場にいることが大切で、一期一会というところがあります。それだけにその時間を大切にしたいと思います。でも私は観察会というのは、それと同時に参加者の好奇心に点火できるのが一番だと思っています。つまり一期一会ではあるけれども、そこからずっと続くものになってほしいと思うのです。大人はよく知識を得たい、植物の名前や鳥の名前を覚えたいと思って観察会に参加しますが、それだけだとそこで終わってしまいます。私は観察会に参加した人が、それまでに持ったことのない視点をもったり、動物や植物のことをもっと知りたい、自分でも調べてみたいと思うようになることが一番大切だと思います。今回は感想を文章にできない小さい子がいたので、保護者の方が質問して、そのことばを寄せてくださった例もあります。そうした感想や質問をきくと、観察会が印象に残り、好奇心に点火するという意味でよいものになったようで、うれしく思いました。

 観察会では糞虫トラップに入っている糞虫を確認し、室内に移って説明をしたあと、スケッチをしてもらいました。そして最後に生きた糞虫とイヌの糞をわたしました。

<糞虫の飼育についてのタヌフン博士の説明>
 糞虫は資源(糞)がなくなると探すために飛びます。だから容器はふたつきのプラスチックのものがよいです。底に砂でもしいて湿度管理のためもかねて枯葉か草などを適当に入れておくとよいです。脱脂綿に水をふくませてもよいです。犬の糞を小さじ1杯くらいいれてなくなるまで確認してから、次の糞を追加します。糞が多すぎて分解しきらないと容器が不潔になりますので、少なめがいいです。
大人の親指の先くらいのフンを容器に入れておくと数時間で分解するはずです。経過を観察する必要はありませんが、1時間おきくらいに見てもらうとよいと思います。デジカメで同じ角度から撮影すると時間的経緯がわかります。それでこどもが「すごいなあ」と感じてもらえばよいと思います。


以下は感想文で子供達は年齢順です。
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なかがわ ゆき(5歳)
 糞虫が出した糞が最初の犬の糞よりすごくちっちゃくなってるけど、なんで?その分糞虫が大きくなってるように見えないよ。魔法かけた?おならでとんでいった?
 糞虫を飼ってみたいけど、糞は臭くて嫌だから、糞じゃない餌も食べるのかな?

<タヌフン博士のこたえ>
ゆきちゃん
 ふんちゅうのふんをみたなんてびっくりしました。もちろん犬のふんより小さくなります。どんなどうぶつでもそのからだよりふんは小さいです。それと、ふんちゅうはたべものを食べても大きくなりません。ふんちゅうもたまごのときがあって、それから幼虫(ようちゅう)になり、このときは大きくなります。そしてさなぎというものになってねむりますが、そのさなぎからでてきてかたい体(からだ)のおとなのふんちゅうになります。そうするとその大きさのままです。かぶとむしでもくわがたでも、せみでも同じです。
 ふんちゅうはふんをたべるので、ほかのものではだめです。ときどきはミミズの死んだのなんかもたべるみたいだけど、それもくさいです。人にはくさいにおいだけど、ふんちゅうにはごちそうなんだ。ゆきちゃんはのんだことないと思うけど、ビールはとてもにがくてまずいけと、おいしいという大人がいます。いろいろないきものがいて、にんげんにはなかなかわからないこともあるけど、その生きものにとってすきなもの、たいせつなものがあることがわかるってすてきなことです。

<ゆきちゃんのお母さん>
高槻先生
丁寧なご返信ありがとうございます。
糞虫が大きくならないということが、以前カブトムシやクワガタを飼っていたので、その例えでとてもよく分かったようです。
 それにしても糞虫の体に比べて巨大なイヌの糞を、自分が消化分解することであそこまで小さな糞として出す糞虫は地球環境にとても優しく意味のある生き物だなぁと、先生がどんな生き物にも無駄はなく存在する意味があるという言葉に深く繋がる生き物だなと、単なる虫の観察をこえたものを教えてくれる生き物だなと思いました。
 水洗トイレが当たり前でウンチは流すものとそういう生活の中で生きている娘はまだ残念ながら、糞虫=クサイという印象が強くあるようですが、いつか匂いは臭くてもとても大切な生き物なんだということに気付いた時に、この観察会のことを思い出してくれると思います。その時のために、描いた絵や写真そして先生のコメントもしっかり記録に残しておきます。
 お忙しい中、子どもに分かりやすいようにご回答下さって本当にありがとうございます。私の学生時代にここまで丁寧に向き合って下さる教授はいなかったので、そういう意味でもとても感動しました
中川聡恵(結貴の母)

<タヌフン博士の返事>
 子供がなにかを不思議に思って質問したとき、それに私が答えてわかってニッコリ笑ってくれるのを見るのは、本当にうれしいものです。少なくとも私にとってそれは大きなよろこびです。


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たかつき あかね(1年生)




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やまざき はるき(2年生)





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高槻 柊(5年生)


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坂野はるか(5年生)



<タヌフン博士から>
最後の「タヌキ」というのは説明で使った発泡スチロールのタヌキ模型のことです。終わってからはるかさんがもっているのでプレゼントしました。



はるかさん
 すてきな感想文を送ってくれてありがとう。かんさつしてスケッチしたことや、タヌキのもけいの説明をよく聞いてくれていたこともうれしかったですが、一番うれしかったのは「動物からフン虫へと命あつながているんだな、と気づきました」と書いてくれたことです。それがタヌフンはかせがいちばん伝えたいことだからです。


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柴垣有卯(5年生)
 フン虫のかんさつ会はとても楽しかったです。とくに、フン虫をとらえるトラップのことが印象に残りました。トラップの水に入ってから、かなりたった後だと、フン虫が死んでしまうので、こういうやつの方がいいと思いました
あと、先生が作っていたタヌキやフン虫の模型などもすごいなぁと思いました。

<タヌフン博士のへんじ>
ゆうさん
 そのトラップをぜひ試してみてください。お父さんのメールによるとネコの糞が手にはいるようなので、それをお茶パックに入れて、わりばしなどにつるしてみてください。トラップはただおいただけではたおれるので、スコップをもっていって地面をほって立ててください。玉川上水でなくても、雑木林などでもいると思います。
 いまタヌフン博士はモンゴルにいます。草原にあった牛の糞を割ってみたら、大きめのエンマコガネがいました。日本では北海道にしかいない種類で、はねは茶色です。


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『ふん虫』
長谷川苺依(6年生)

 「玉川上水でおもしろいイベントがあるよ」とお母さんが『ふん虫観察会』を教えてくれました。私は、ふん虫という名前を初めて聞きましたし、最初はふんについている虫を見たいとも思いませんでした。
 みんなで先生が前の日に仕かけてくれていた犬のうんちの入ったふん虫トラップを見て回ると、ふん虫が入っていました。私が想像していたよりもすごく小さくてびっくりしました。そして、ふん虫トラップは水を入れてふん虫をおぼれさせる仕組みですごいと思いました。
 ふん虫を虫眼鏡で良く観察してみると、体が三つに分かれているように見えました。そして三つに分かれた体を良く見ていると、その形からふん虫がうんちのように見えてきました。
 私の家には外犬がいます。朝ごはんをあげるときにうんちを拾いますが、玉川上水と同じように私の家のうんちにもふん虫がいることが分かりました。これからは、虫眼鏡を持って犬の世話をしたいと思います。貴重な体験ありがとうございました。
 先生、アメンボは甘いにおいがしますが、ふん虫はうんちのにおいがするのですか。

タヌフン博士のこたえ>
苺依さん
 私はいまモンゴルのホテルにいます。明日からは草原に行くので、パソコンが使えなくなりますから、今日見ることができてよかったです。
 とてもすてきな感想文をありがとうございました。たしかにわざわざ汚いものにくる虫を探すなんておかしいですね。でも、私はそのことを調べることはとてもたいせつなことだと思います。
 トラップにきていたふん虫は小さかったですが、教室で見せたように、センチコガネのような大きさのものもいるし、もっと大きいのもいます。
 家の犬の糞にもふん虫がいたのですね、大発見ですよ。ピンセットでつまんで、古い茶こしで水洗いしてから虫眼鏡でのぞいてみてください。コブマルエンマコガネの可能性が大きいですが、違うのもいます。
 質問ですが、糞虫はとても硬い体をもっていて、糞の中を進めるように、豆のようになめらかな体をもっています。なのでからだがザラザラしているほかの甲虫だったらウンチがついてくさいかもしれませんが、いつもピカピカです。標本にするときはアルコールでふいてきれいにしますが、その標本はくさくありません。だからふん虫そのものはくさくないと思います。
 質問をありがとう。またきいてください。


これを読んでリーさんから質問がきました。
リー智子
高槻先生
 この文章を読んで思ったこと。糞虫を顕微鏡で見たときに、顔の拡大の方で長いまつ毛のようなものがたくさん生えているのを見ました。それを見た時には、ものすごくたくさんの太いまつ毛が生えているな、と思いましたが、それ以上のことは考えませんでした。
 このような生き物の形体というのは、その生き物の生活にとって無駄がなく、最も効率よくできているのではないかと思います。糞虫のまつ毛は、まん丸なでっかい目が糞の中でも見えるように、糞をかき分けるように生えているのかな、と思いました。

<タヌフン博士のこたえ>
リーさん、みなさん
 そうです。生物のからだはその動物、植物に生活にもっともふさわしい形になるように長い時間をかけて変化してきました。だから機能美がすばらしいのです。昆虫はとくにそのことがよくわかります。糞虫は糞を見つけ、糞の中にもぐりこんで、糞を分解するのに最適の体をもっています。
 ただし「まつげ」が目がよく見えるためではないかというのは違うような気がします。糞の中で人が見るような意味でなにかが見える必要はないはずです。食べ物そのものの中にもぐりこんで分解すればよいのだから見えればよいが、見えなくても問題はないと思います。でも確かに糞虫には長めで、しっかりした毛があるので、何かの機能をしているはずです。でもこれだという理由はわかりません。わからないことだらけなのです。
 なお、尾川さんとも話したのですが、糞虫は明暗には敏感に反応します。飼育箱で飼育していて、糞に集まっているので写真をとろうと明るいところに移動すると、あわてて土の中にもぐりこみました。だから明るさは感じています。でも林の中で糞にたどりつくのに糞を見て飛んでいるはずはありません。嗅覚です。飼育している糞虫は私が糞を入れようと近づけると、重なったようになっている触覚を、ちょうど閉じた指を開くように全開にします。「あ、糞の匂いがする。どっちだ?」という感じです。自然界では、糞を探してパトロールしていて、匂いがするとそちらの方向に飛んでいき、より強い匂いのほうに着地します。そこからはトコトコ歩いて糞にたどりつきます。
 モンゴルでは牛が糞をするとすぐにブーンと糞虫が飛んできます。


つづく
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玉川上水にはフン虫がいるよ

2017-08-01 18:54:55 | 観察会
こども観察会として「玉川上水にはフン虫がいるよ」を計画しました。こども観察会は津田塾大学でタヌキのタメフンを見るというのをおこなったことがありますが、その続編という意味あいもあります。

案内のチラシを作りました。



 前の日の夕方に糞虫トラップを準備しました。といってもただ、容器の上に割り箸をわたし、そこにお茶パックに犬のフンを入れてぶら下げただけのものです。これを9つ用意して、玉川上水の林の下におきました。容器の底には少し水を入れ、入った糞虫が飛び出さないようにしました。





 8月1日の朝、15人のこどもと保護者とスタッフが同じくらいの数集まりました。玉川上水沿いを15分ほど歩くと昨夜トラップをおいた場所に着きました。





トラップの構造を説明しました。



これまでの経験で糞虫の数がときどきゼロということもありましたが、2、3匹入っていることのほうが多いので、「入っていればいいけどな」と思いながら、覗くと、いました、いました。初めのトラップにすでに9匹ものコブマルエンマコガネが入っていました。水の上をさかんに足を動かしています。水ごと茶漉しで受けて、動き回る糞虫をシャーレに入れました。







 そのあとも9つのトラップ全部に、少ないもので3匹、多いもので11匹が入っていました。9つで62匹という多さです。わたし自身、上出来だなと思いましたが、こどもは多いのか少ないのか基準がないから、「そんなものか」という感じでしたが、大人はみな驚いていました。



「たくさん採れました。ひとつのトラップに7匹くらい来ていました。たった10メートルくらいにこれだけいたんだから、この広い玉川上水にはものすごい数の糞虫がいるということだね、たくさんの糞虫がいて、タヌキやイヌのウンチがあると、やってきてバラバラにしてくれるから、この林はきれいに保たれているんだよ。だから、こんな小さな虫だけど、とてもたいせつな働きをしているということだね。」
 少し天気に不安があったので、そのまま武蔵野美大に移動しました。

 教室ではとってきた糞虫の入ったシャーレを配り、見てもらいました。また実体顕微鏡にセンチコガネとコブマルエンマコガネを置いて見てもらいました。





そのあとで少し説明をしました。初めに糞虫とは動物のウンチを食べる昆虫であること、その重要な供給源はタヌキであることを話しました。そして、発泡スチロールで作ったタヌキの模型を使って食べ物の移動の話をしました。その模型は腹に切れ込みをいれて、それを開くと中に胃袋が見えるようにしました。そして、食べ物が食道をとおって胃袋に移動し、それから腸を通ってお尻の穴からウンチとして出る話をしました。



 わたしは最近100円ショップが気に入っていて、なにかこういうときに使えるものはないかと物色するのですが、腸を説明するホースのようなものがないかと思っていましたが、ピッタリのものはありませんでした。ところがこどものおもちゃのところに、細い風船に空気を送り込んでふくらませ、動物などをつくるおもちゃがありました。細長い風船10本くらいと、プラスチックの注射器みたいな道具で100円だったので、これでもいいやと思って買ってきました。これに空気を入れると60センチくらいになりました。それと腸とは全然違いますが、こどもの注意を引くという意味では大成功。こどもたちはあとでこれで遊んでいました。



 さて、こうしてもたらされた糞を食べるのが糞虫で、ウンチは臭くて汚いものですが、糞虫がいるおかげで土の中にもどっていき、自然がきれいに保たれている、だから糞虫はとても偉い働きをしているという話をしました。
 わたしはこの日のために、もうひとつ準備していたものがあります。それは紙粘土でつくった糞虫です。コブマルエンマコガネは長さ7ミリくらいの小さなものですが、顕微鏡で見ると実にカッコいい形をしています。それをみながら紙粘土で長さ15センチくらいの巨大糞虫模型を作ったのです。紙粘土で胴体を作り、別に6本の脚を作ってボンドでくっつけました。そのあとで、黒絵の具をぬり、乾いたらニスを塗りました。そうしたら、実に糞虫らしいツヤがでました。この模型を入れたのも100円ショップでみつけてフィギュアケースです。




 説明をしたので、いよいよスケッチをしてもらうことにしましたが、その前にひとことアドバイスをしました。それはスケッチブックの大きさを考えて、おもいっきり大きい絵を描いたほうがよいということです。あとはよく見て自由に描いてもらうことにしました。







 どうやらわたしが説明した脚がギザギザだということが印象的だったようで、例外なく脚にギザギザを描いていました。


作品についての説明は不要でしょう。こどもの描く絵はエネルギーに溢れています。そしてひとつひとつが個性的です。

スライドがだいぶ進んだところで、スライドプロジェクターの準備ができたので、少し糞虫のスライド解説をしました。自動撮影カメラによるタヌキが糞をする動画、コブマルエンマコガネが馬糞球を分解する早送り動画などをみてもらいました。

「小さい糞虫だけどすごいよね。もし糞虫がみんなくらいの大きさだったら、あの糞はこの教室くらいの大きさがあるんだよ。それを分解してしまうんだからすごいよね」

 最後に「認定証」をあげて、記念撮影をしました。



 認定証には自分で描いたコブマルエンマコガネのイラストを入れました。








そしてもってきた飼育箱に2匹のエンマコガネと犬の糞をひとさじ配りました。もちろん糞はとても臭いです。みんな「くさい、くさい」と鼻をつまんだりしていましたが、なんとなくうれしそうでもありました。



 私は生まれたときから水洗トイレの生活をしてきたこの子たちが、排泄したらすぐにジャーっと流れてしまい、言ってみればウンチに対して「親しみ」もなければ嫌悪感もないということが、こどもの心にどういう影響を与えるのかわからないでいます。はっきりしているのは、そういう育ち方をするこどもは人類の長い進化史の中にはいなかったということです。その意味で、こういう形でもよいからウンチのことを考えてみること、ウンチを食べる糞虫がいることを知ってほしいと思いました。
 スケッチをすることや、私の解説を聞いたことが、こどもたちの心になにかの形で残ってくれたらうれしいことです。

 準備をし、こどもたちを集めてくださいましたリー智子さん、ありがとうございました。武蔵美大の関野吉晴先生には会場の準備をしていただきました。写真の一部は豊口さんにご協力いただきました。

この講座が終わってから子供たち、大人からも感想が寄せられました。こちら

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2017年8月の観察会

2017-08-01 05:40:11 | 観察会



 今月は高槻がモンゴルに行ったので、観察会は27日と遅くなりました。8人の人が参加してくれました。
 鷹の橋のところにミズキがあります。初夏に白い花を咲かせていましたが、それが白っぽい果実になっていました。
「秋になると黒に近い紫色になって、果柄が赤くなるので、コントラストがあってとても目立つようになります。黒は人の眼にはあまり目立たないのですが、鳥は見える波長が違うらしく黒が目立つことが実験的にわかっています」
 中央公園の脇を歩きましたが、あまり花はありませんでした。今年は8月に入って雨がよくふったせいかキノコがとても多く、また歩道にカビなのか白い模様のようなものもよく見ます。涼しくなったので秋になったのと間違えてキノコが出たのではないかという声もありました。
 久右衛門橋のところはいつもなんかの花があるのですが、今日もヤブミョウガ、ミズヒキ、オニドコロなどが咲いていました。ミズヒキは去年も説明したのですが、次のような説明をしました。
 「ミズヒキは赤い花ですが、実は花の下のほうは白いんです。だからこうなります」
 と1本は上側を見せ、もう1本は下側を見せました。
 「おお!ほんとだ」
 「これを紅白のめでたさとして贈り物に添えたのだと思います。それを芸術心のある人が抽象化してあのデザインにしたんですね。すばらしいと思います。」
 「それからタデ科の特徴として、葉や花の付け根が鞘になって茎を抱いています。このあたりにもあるイヌタデだと花がくっついて咲きますが、ミズヒキは離れてつくので印象がかなり違います。でもちゃんと鞘があります。」
 そこにトクサがあったので、爪を磨いてみました。
 その先は初夏にホタルブクロが咲いていた場所ですが、探すとアズマネザサの中に枯れた花がありました。見ると花筒はなくなっていましたが、萼が花の時期よりは大きくなってレースのように葉脈が見えていました。


ホタルブクロの萼(豊口)


 ヒヨドリジョウゴの花が咲いていましたが、気の早いのは果実をつけていました。
「ヒヨドリジョウゴは果柄が段々構造になっていて、「モビール」のようです。小さい果実ですが、よく見ると萼がちゃんと5枚あって「ミニトマト」という感じです」


ヒヨドリジョウゴの果実(豊口)

 そのあとはこれというものはありませんでしたが、津田塾大学の南側にムラサキシジミがいました。この蝶は幼虫がカシ類の葉を食べるので、シラカシが多いこのあたりにいるのは納得ができます。翅を閉じて裏側しか見えなかったのですが、表側は鮮やかな青です。


あとでムラサキシジミの翅を開いたところを見ました(豊口)

 鎌倉橋を超えると柵の中に何ヶ所かマヤランが咲いていました。


マヤラン

 キツネノカミソリとヒガンバナもありました。これらはユリ科で、花が咲く時に葉がないという点で共通です。ただしキツネノカミソリのほうは春に葉が出て枯れてから開花、ヒガンバナのほうは花が終わってから葉が出るという違いがあるそうです。

  
   キツネノカミソリとヒガンバナ

 すごいトゲトゲのイモムシがいました。ルリタテハの幼虫です。
 

 ヒヨドリが枝にとまっていましたが、逃げようとしません。そのまま行こうとすると、飛び立ちました。同時に
「ひながいる!」
という声がします。見ると嘴(くちばし)の黄色いのが2羽、ぴったりとくっついています。さっきのヒヨドリはこのひなを見守っていた親鳥に違いありません。


ヒヨドリのひな

 その先にヌスビトハギがありました。
「まだ果実にはなっていませんが、見てわかるように、いわゆるマメの花です。このメシベの子房が発達したのが鞘に入った「豆」なわけです。エンドウなどは数個の種が入っていますが、ヌスビトハギはこれが2つだけで、しかも鞘が大きくくびれています。これがドロボウの足跡だっていうわけですが、どうもよくわかりません。私はサングラスに似ていると思います」


ヌスビトハギの説明


というとみんなが
「そのころ、サングラスがあるわけない」
ともっともな意見。
リーさんが
「泥棒が地下足袋を履いた足で、音を立てないように爪先立ちして歩くと、先だけの足跡が地面についてこういう形になるということじゃない?」
「そうか、なるほど、そうかもね」

 
 ヌスビトハギの花と果実(豊口)

 商大橋の近くにセンニンソウがありました。ヘクソカズラ、オニドコロなども。つる植物が多いのは林縁の多い玉川上水の特徴といえます。
 「センニンソウはClematis属のつる植物で、クレマチスという園芸植物があるし、テッセンというのもありますが、あれもClematisです。」
 リーさんが
「果実の毛が仙人のヒゲみたいって言うんでしょう?」
「そう、種子の先に鳥の羽みたいな毛が生えていて、これがひとつの花に4本あって、たくさんの花があるから、光があたったとき、とても印象的に輝きます。それが仙人のヒゲみたいだというわけです」

 
 センニンソウの果実(2016.12.4, 玉川上水)

「センニンソウはキンポウゲ科ですが、同じ科にオキナグサというのがあります。これで思い出すのは、関野先生がグレートジャーニーのときにモンゴルで出会ったプージェーという少女のことです。その子ははじめ関野先生をきらいで、無視するんです。<私は羊の世話が忙しいの、邪魔しないで>という感じです。そのプージェーが<この花にはかわいそうだけど、でも羊が元気になるためにはしかたないの>と言うんです。長い冬のあいだに体力をなくしている羊が春の最初に食べるのがこのオキナグサなんです。とてもきれいな花です。それを知っている少女はきれいな花だけど、羊が生き延びるためには食べられてもしかたがない。羊が生きるということはそういうことなのだとわかっているわけです。羊がいなければ自分たちの生活もない。

  
 モンゴルのオキナグサ2種

 それは都会住まいの私たちが忘れがちなことだけど、私たちだって同じこと。生きるということはほかの命をもらうこと。プージェーのあのことばは忘れられませんね。最終的には心を開いて関野先生と仲良くなるんですよね」
 関野先生はいつものように微笑みながら聞いていました。
「そのオキナグサという名前も、センニンソウと同じように花が終わると果実に長い毛があるので、それがおじいさんの白髪のようだというわけです」

 
 オキナグサの果実(2006.6.15, 八ヶ岳)

 
 センニンソウとオキナグサの説明(豊口)


 その後、野草保護観察ゾーンに着きました。ここで今日の調査の説明をしました。昆虫は8群に分けることにし、それぞれの説明をしました。

 
 訪花昆虫のタイプわけ

 花はシラヤマギク、ワレモコウ、ツルボ、ヘクソカズラ、センニンソウ、ノアザミ、オミナエシ、ツリガネニンジンなどが咲いていました。今日は訪花昆虫の調査を予定していたので、その意味の説明をしました。花はさまざまな昆虫を受け入れる皿形、長い吻(口)をもつ昆虫限定の筒型に分けられます。皿形はワレモコウ、ツルボ、センニンソウ、オミナエシ、筒型はヘクソカズラ、ノアザミ、ツリガネニンジンで、シラヤマギクは筒型ではありますが、筒が浅いので吻の短い昆虫も吸蜜できるようなので、中間型としました。
 ここまでで、だいぶ時間が経ってしまったので、8種の花を選んで10分間の記録をとってもらいました。

 
 
 記録する参加者(豊口)


 記録としては短時間でくりかえしもとっていないのですが、それでもクサギにはガやチョウが来て、ツルボにはハエが来るなど、筒型の花には長い吻(口)の昆虫、皿形の花にはハエなど吻の短い昆虫が切る傾向は垣間見えました。

皿形の花

 
  アキカラマツ・ハチ(クマバチ)(豊口)

 
  オミナエシ・ハチ(豊口)

  
  オミナエシ・ハチ(豊口)

  
  オミナエシ・ハエ

中間的な花
 
  シラヤマギク・甲虫(クロウリハムシ)(豊口)

  
  シラヤマギク・ハチ(豊口)

筒型の花
  
  クサギ・蛾(オオスカシバ)(豊口) 

  
  クサギ・蛾(ヒメクロホウジャク)(豊口)

 
  クサギ・蝶(カラスアゲハ)(豊口) 

  
  クサギ・蝶(ナガサキアゲハ?)(豊口)

 それにしても豊口さんの撮影はすばらしい。

 最後に少しまとめのような話をしました。
「いま私たちは玉川上水花マップ作りという活動をしています。もともと40キロあった玉川上水はいまでも30kmあります。ここに100ほどの橋があります。ここを毎月分担して歩いて代表的な花を撮影して、どの橋とどの橋のあいだにあったかを記録してきました。それは膨大なデータで松岡さんに手伝ってもらって冊子を作ることになりました。この活動はとてもおもしろく、やりがいがありますが、でも、あったことを示すだけです。それに比べると今日のような調査はその、存在する花がどう生きているか、どういう花の構造をもって授粉のためにどういう昆虫をひきつけているか、という生き物のつながりをあきらかにします。それは、ただあることを示すのとは大きく違い、深い意味があります。そのほかにも種子をどう広げるか、種子ではなく地下茎などで増えるなどのこともあります。そうした生き物の生きているようすを示したいと思っています。
 そもそも、こんなに自動車がびゅんびゅん走っている五日市街道沿いにこんなに豊富に野草があって、昆虫がいるということ自体が驚きなわけです。そのことを多くの人に知ってもらいたいと思っています。」
 今日は虫媒花にくる訪花昆虫を調べたのですが、私は少し時間をとってオミナエシを観察しました。そのとき、花と花のあいだにクモの巣があり、クモがいました。もちろん吸蜜ではなく、吸蜜にくる昆虫を待ち伏せしているわけです。ハチが近づいたとき、すばやく反応していました。ここにも生き物のつながりがあります。豊口さんもワレモコウにクモがいるのを撮影していました。

   
  オミナエシで待ち伏せするクモ ワレモコウで待ち伏せするクモ


記念撮影


 今回も豊口さんの写真を使わせてもらいました。ありがとうございました。


追記 訪花昆虫の結果

 訪花昆虫は観察会で9セットのデータをとりましたが、その後豊口さんがひとりで7セットをとってくれました。下の表がその結果で、表の上に筒状の花、下に皿形の花を、それから左側に吻の短い昆虫、右側に吻の長い昆虫をまとめました。筒状の花とは、花に細い筒があってその奥に蜜があるので、吻の短い昆虫には蜜が吸えない構造になっています。皿形の花はそうではありませんから、誰でも吸蜜できますが、吻の短いハエやアブにはありがたい花ということになります。
 そうすると、予想されるのは筒型には吻の長いハチやチョウが多く来るだろう、皿形にはおもにハエやアブが多く来るだろうということです。



 表には種ごとに結果を示していますが、下に強引ではありますが、合計値を書きました。そうすると短吻の昆虫はたしかに皿形の花に多く来ていました。甲虫は筒型のほうが多いですが、いずれもキク科で、シラヤマギクは筒状ではありますが、筒が短いタイプなので、甲虫も吸蜜可能ではないかと思います。一方、長吻の昆虫は筒型にも皿形にもよく来ていました。ハチは皿形のほうが多く、チョウは筒型のほうが多いと、まちまちな結果でした。吻が短いほうは、筒型は吸蜜できないが、長いほうはどちらでも吸蜜できるのでありうることですが、それだけではなく、吻が短いほうは、筒型は吸蜜できないが、長いほうはどちらでも吸蜜できるので、この結果はありうることですが、それだけではなく、ハチにもいろいろいるので、もう少し細かな類型が必要なのかもしれません。
 実感としては、同じ花でも、空が曇ると昆虫がパタッと来なくなるなど、なかなかデリケートでした。ですから10分間の調査だけでは結論めいたことはいえないなという感じがしました。それでも短吻昆虫が筒型に来ないで、皿形に来るということは十分に読み取れるようです・
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