玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

2018年3月25日の観察会

2018-03-25 20:37:23 | 観察会
2018年3月25日の観察会

今回はたまにはいつもとは違う場所を歩こうということで、武蔵砂川駅に集合して、下流の玉川上水駅まで歩くことにしました。サクラが開花宣言し、暖かくなったので、この土日が花見日和ということになっていますが、この辺りのサクラはまだ一部か二部咲きというところです。
 武蔵砂川の駅から玉川上水まで100メートルほどあります。そこまでは畑の脇を歩くのですが、玉川上水に行くとかえって少なくなると思い、ホトケノザ、ナズナ、オオイヌノフグリなど畑地雑草の説明をしました。


道端の雑草を観察する

ナズナは、花の脇に未熟ではありますが、果実ができていたので、ルーペを取り出して見てもらいました。このルーペはなかなかのもので、「虫眼鏡のいいやつ」をはるかに超えています。倍率は10倍で、除くと違う世界が広がるという感じです。
 実際、のぞいた皆さん「うわー!」と声をあげていました。それで見ると、ナズナの種子も、ホトケノザの花の上にある「坊主頭のような毛」もしっかり見えました。


ルーペを覗く


ホトケノザ 花の上に坊主頭のような毛が生えている

 畑にはナズナが点々と生えていましたので、説明をしました。
 「さっき見てもらったように、ナズナの果実の中にある種子は弾けて広がります。この畑の中のものもそうで、見てもらうとタンポポのような葉があります。これをロゼット葉と言います。地面を触ってもらうとわかりますが、春になると地表は意外と暖かいのです。ここにピタリとロゼット葉をつけると、熱をえることができます。光合成は化学反応ですから、暖かい方が合成が進みます。畑は直射日光が当たるので、種子を運び、ロゼット葉を持つナズナはいち早く定着できるわけです・」

畑の中にもしかしたらタヌキのものかもしれない足跡がありました。でもネコかもしれません。


畑の足跡


 玉川上水に着くと、豊かな清い水が流れていました。



 この辺りは小平より上流にあるし、畑もあるので、タヌキにはすみやすそうに思いますが、実際にセンサーカメラで調べて見ると、あまり撮影されません。この辺りから小平監視所までは上水として機能しており、水はきれいでなければなりません。そのため枯葉が入らないように両岸の低木類は刈られます。多分そのためにタヌキにはすみにくいのだと思います。

 ノカンゾウの葉が伸びているのが目につきました。


ノカンゾウ


 ルーペの受けが良かったので、それも使いながら植物の説明をしました。タチツボスミレが咲いていたので、5枚の花弁、距、托葉などの説明をしました。



 カラスノエンドウが咲きかけていたので、その花の構造を説明しました。メシベの作りを説明し、基部の脂肪が大きくなったのがエンドウのサヤデ、カラスノエンドウはそのミニミニのものができます。その説明をしていたら、茎の先にY字型にのびた托葉が目につきました。
「これで他のものに絡まろうとしているんです。これを微速度撮影して早送りしたのを見たことがありますが、ゆっくりと首振り運動をして頼るものに触ると巻きつきます。ほら、これ、巻きついています」
「あ、ほんとだ」


カラスノエンドウのつる


 脇にヒメカンスゲがあったので、はじめに雄花と雌花が別々であること(雌雄異花)などを話しました。
「スゲの葉はこういうふうに真ん中でV字に折れ曲がります。茎はなく地面か葉が出ます。ここにヤマカモジグサがありますが、イネ科は稈(カン)と呼ばれる茎が中空な円柱です。新聞紙を丸めればチャンバラの刀になるように、結構丈夫になります。限られたモノで丈夫で長いものを作るには中空の円柱は有効なのだと思います。稈のうちムギのように太いのがワラで、ストローに使いました。今はストローはプラスチックになったけど、もともとはワラでした。これを敷いて暖かくして作ったのがストローベリーなわけです」
「へー、そうなんだ」
「はい、イチゴは確かにわらを敷いて育てます」
と食べ物好きの漆原さん。
「だからスゲは背が高くなれず、地表植物ですが、イネ科はススキのように2メートルになる大きなものもあります。それは稈から葉が出せるからです。スゲのはと違い、イネ科の葉は付け根に鞘(しょう)があって稈を取り巻いてます。
 リーさんが「上を切られても大丈夫なんですよね」と言いました。以前、説明したことを覚えていたみたいです。
 「そう、さっきカラスノエンドウの説明をしたけど、こういうのは成長点が上にあるから、切られるともう伸びられなくて、傍から枝を伸ばさなければおしまいです。それに比べたら、イネ科は成長点が下にあるから、上の方を除かれても大丈夫です。これは草食獣とイネ科の関係で重要で、草食獣とイネ科の出現は生物の歴史では新しい出来事です」



 この先、玉川上水は直進しますが、金比羅橋の手前で大げさにいうとU字型に南に曲がります。その辺りにハルガヤがありました。
「ハルガヤはsweet vernal grassと言います」
「vernalって?」
「春ということです。この草を乾かすと甘い匂いがします。シカみたいな野生動物にとっては冬が一番厳しい時期で、夏に脂肪を蓄積して冬を乗り切ります。シカが死ぬのはこの時期で、春の草を食べられないで死んでいきます。事情はウシでも同じで、ハルガヤやチモシーなどは春早く芽生え、秋遅くまで緑になるように品種改良されました。実は、今日本中でシカが増えていますが、牧草を食べているんです」
「へえー」
金比羅橋の近くにヒトリシズカがありましたが、花には少し早いようでした。この辺りは古い農家の雰囲気があってなつかしいような気持ちになります。


金毘羅橋から上流を見る


近くの公園に行くと、ウグイスカグラが咲いており、場所的にも良さそうだったので、ここでスケッチをしてもらうことにしました。
「なんでも自分の描いてみようというものを見つけて自由に描いてください。」







「今エゴノキが葉を出し、伸びようとしています。私はこの時期のエゴノキが好きで、2枚の葉がツンと上を向いて伸びていて、それが枝にたくさんついています。光を受け止めるように見えるので、背後が暗いと葉の明るさが際立って、踊っているように見えます」


エゴノキの新芽


 それぞれに対象を選んで個性的なスケッチができたようです。















漆原さんのエゴノキのスケッチには文章も添えてありました。

枝をちぎられた先端から雫を垂らすエゴノキ。少しなめるとほんのり良い木の香り。玉川上水の豊かな水をたっぷり吸いとって、葉を茂らせるための栄養をたくわえているのだろう。ペアになった新葉は春の朗らかな陽気の中で踊っているよう。

 公園を出ようとすると、入るときには気づきませんでしたが、ニリンソウが咲いていました。


ニリンソウ


 金毘羅橋を渡ってからは上水の北側を歩きました。
「さっきヤブデマリの葉脈が平行だということを説明しましたが、このミズキも真ん中の主軸(中肋)から出るのは平行です。ただし葉の縁に近づくと先の方にカーブします。これを「葉脈が流れる」と言います。ミズキは去年伸びた枝が鮮やかな赤なので、私は山陰なのですが、正月にこの枝に紅白の丸い小さな餅を飾ってました」


ミズキ


 ところどころにオオアラセイトウ(ショカツサイ)がありました。
「同じ外来種でも、オオブタクサなどは迷惑だと言って刈り取られますが、オオアラセイトウはすっかり日本の景色になじんで、これを見て迷惑だという人はいません。明らかに差別ですが、致し方ないところです」


オオアラセイトウ


 もう少し歩くと柵の中にシュンランが咲いていました。
「式典などでシンビジウムという豪華なランが飾られますが、シュンランの属名はCymbidiumなんですね。ランには派手なものがありますが、シュンランは花びらも緑色で渋目のランです。葉っぱだけ見るとヤブランと似ていますね」


シュンラン


 私は気づかないで通り過ぎてしまいましたが、豊口さんはアマナを見つけていたようです。


アマナ

 一休みして記念撮影をしました。


記念撮影


 玉川上水駅が近くなった頃、民家の近くに園芸種のラヌンキュラスが咲いていました。同じ属の花は日本の野草にもキツネノボタンなどいくつかあります。RanunculusのRanaはカエルのことで、カエルのいるような湿地に生える花ということです。花は光の具合でテラテラと光沢がありますが、英語ではこれをbuttercupと言います。バターのような質感のコップのような花ということですが、花のツヤをバターになぞらえるのは牧畜民ならではです。天の川をmilkywayというのもそうですね」




ラナンキュルス



 玉川上水駅のすぐ近くにヒトリシズカが咲いていました。


ヒトリシズカ


 玉川上水駅に着くとここのサクラはほぼ満開でした。


玉川上水駅のサクラ


 今回も豊口信行さんの写真を使わせてもらいました。ありがとうございました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

街道横断

2018-03-15 23:33:45 | 生きもの調べ


3月11日に津田塾大学内で回収したタヌキの糞から玉川上水沿いにおいた2枚のカードが出てきて、学外との出入りがあることがわかりました。<こちら
 津田塾大学の正門前には府中街道が走っていて、その向かいに雑木林があり、実はそこにも1箇所タメフンがあるのを確認しています。1月にのぞいたら、新しい糞がないようでした。ところが、3月14日に再訪して、枯葉を丁寧にのぞいて探したら5個の糞がありました。その一つに緑色のマーカーが3枚も入っていました。番号から1月8日においたものであることがわかりました。


1個の糞から出てきた3枚のマーカー


このマーカーは大学の南東部においたので、タヌキは間違いなく府中街道を横切っています。府中街道はかなりの交通量ですから、危険がいっぱいです。実はタヌキは交通事故にあいやすく、死体は「ゴミ」として処理されています。


丸い色はマーカーの色、三角はタメフンの位置、点線が動きの最短距離

 私は玉川上水沿いにある横断歩道のところに「タヌキが横切ります、やさしい運転を」などと書いた看板を作ったらどうだろうと思います。そして押しボタン式信号機の下の、タヌキが届くくらいの高さに「タヌキ用」というボタンをつけたらいいのにと思います。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーカー回収

2018-03-13 05:10:26 | 生きもの調べ

 3月11日に観察会を行い、津田塾大学でタヌキのフンを持ち帰りました。それを水洗したら、ソーセージに潜ませていたプラスチックマーカーが出て来ました。
 持ち帰ったタヌキの糞はタメフン1から2個、タメフン3から5個でした。タメフン1から1枚のマーカーが発見されたのです。見ると青の7番でした。


ついに回収されたマーカー


これは11月26日にキャンパス外の玉川上水沿いにおいたもののうち、一番東側においたものです。なぜわかるかというと、位置はマーカーの色で、日にちは番号で特定できるからです。1から10の番号は、11月26日においたものです。位置については下に図を示します。

 タヌキが入った場所の特定はできませんが、キャンパス南東の柵の隙間が有力です。というのは、柵のすぐ外に幅1メートルほどの用水があり、タヌキにとってはわたるのは大変そうなのですが、小さな橋があり、柵の隙間はその橋のすぐ近くにあるからです。想像をたくましくしてイメージ図を描いて見ました。


マーカー入りのソーセージを食べて、用水の橋を渡って「裏口入学」したタヌキのイメージ


 マーカーが入っていた糞がされたのは3月4日以降のものですから、3ヶ月ほどたってから、つまりソーセージの「賞味期限」はずっとすぎてから食べたということになります。

 ここまでのことを3月12日に報告しました。実は観察会の当日、みんなで「タメフン3」に行ったとき、ピンクのラベルを見つけていました(こちら)。カキ、センダン、ムクノキなどの種子がタヌキに運ばれているのを説明しているときに見つかったのです。


ピンクの8


 でも、それは今回のものではなく、1年以上前にキャンパス内にたくさんのマーカーをおいたときのものだと思いました。というのは、そのときここにマーカー運ばれて、時間が経って糞が分解して土の上に露出し、時々見つかっていたからです。今回も、その一つだと思いながらも、「ずいぶん時間が経ったのに、まだあるのかな」という気持ちがあったのも確かです。それで、確認のためにマーカーを作った棚橋さんに写真を送ったら
「た、高槻名探偵!そ、それは今回のマーカーです!」
という返事がありました。8番は古いマーカーにもあったのに、なぜ今回のものだとわかるかというと、マーカー作りに使うナンバリングの道具で違うフォントを使ったので、同じ番号でも区別がつくからです。ピンクは「裏口通路」に近いところにおいたものですが、タメフン3はキャンパスの一番北にあるので、キャンパスを南から北まで移動したことになります。


津田塾大学の空中写真。下の丸は玉川上水沿いにおいたマーカーの色を示す。
オレンジ色の三角はタメフンの位置で、点線は移動の最短距離


 注目すべきは、このマーカーは糞の中にはなく、マーカーだけが地表にあったことです。このことは11月26日においてあまり時間が経たないで食べられ、ここに排泄された後、雨が降って糞が流れてしまったことを意味します。だから青7とは食べられた時期が違います。

 いずれにしても懸案であった、津田塾大学キャンパス内にいる「ツダヌキ」が玉川上水から「裏口入学」し、その「出入り」がセンサーカメラで確認され、さらに玉川上水で食べたマーカーがキャンパス内のタメフン場から回収されたことで物的証拠として確認されたということです。これもたくさんのマーカーを作り、一枚一枚をソーセージに入れては播くという地道な作業をした棚橋早苗さんの努力の賜物です。

 「タヌキがどこで食べて、どこでウンコをしようが、それがどうしたんだ」
ですって?

 まったくどうもしません。

 射す光の、吹く風の、踊る枯葉の、意味のわからない人にはわからないように。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月11日の観察会

2018-03-11 20:24:39 | 観察会

 3月11日に観察会をしました。今回の目的は津田塾大学キャンパス内に新たなタメフン場を見つけることです。というのは1月23日に新雪の上に残されたタヌキの足跡が玉川上水沿いの林にたくさんあったので、ここに見落としているタメフンがあるだろうと思い、それをローラー作戦で見つけようというものです。

観察会後のマーカー発見の話はこちら


記念撮影


この写真は最後に撮影したものですが、津田塾大学に行くまで鷹野橋から玉川上水沿いに歩きました。まだ3月、あまり花もなかろうと思っていましたが、早速ヒメカンスゲの花を見つけました。それで雄花と雌花があること、風媒花であること、日本には多くのスゲがあることなどを話しました。


ヒメカンスゲの説明


それからウグイスカグラが咲いていたので、その説明をしました。それからクサボケも咲いていました。

コナラのドングリがたくさん落ちていて、発根したものもあったので、その説明をしました。


根を出したコナラのドングリ


「ドングリのどっちが上でしょう?」
「尖ったほう」
「なんで」
「普通そう置くから」
「でも、これが帽子なら、こっちが上じゃない?」
「そうか」





「でも、これを見ると根を出している。根が下なのだから、この幼い植物にとってはこっちが上というわけだ」
「そうか」
「でも、母樹に花が咲いたときは、帽子の側が花の基部になるから、そのときはこっちが下なわけだ」
「はあ」
「ドングリは種子で、中身は子葉です。これが双葉になる。大きいということは大きな植物としてスタートできるから死亡率が低く無駄がないが、親は負担が大きい。だから豊作のあとは凶作になります。これはクマにとっては大ごとで、ドングリがならないと遠くの林まで探しに行きます。これに対してススキのような植物は小さな種子を大量に作ってどこにでも飛んで行きます。ほとんどは暗いところや水の中に着地して死んでしまいますが、少しでも明るい場所に着地すればよいわけです。動物でいえば、サルの仲間のように大きい子供を少数産んで大切に育てるものと、マンボウのように一億もの卵を産んで全く育てないものがいます。動物でも植物でも同じことがあり、前者は安定した環境が、後者は不安定な環境が好都合です。」



 津田塾大学に着くと、まず守衛さんに提出していた名簿を確認し、番号札をかけました。それからキャンパスマップを見ながら、今日、行くべきところを説明し、芝生で自己紹介をしました。


マップで今日の行程の説明


自己紹介


 それから玉川上水沿いにマーカー入りソーセージをおいてくれた棚橋さんにその説明をしてもらいました。


説明する棚橋さん


 それから、まず、そもそもタヌキのタメフンとはどういうものであるかを見てもらうことにしました。行く途中にフッキソウが咲いていたので、その説明をしました。


フッキソウ


 グランドの脇に去年アマナがたくさん咲いていたので探しましたが、流石に早すぎたようです。


アマナを探す


ついでに「花マップ」の説明もしました。


花マップの説明


 それから「タメフン3」とよんでいるタメフン場に行きました。フンはありましたが、思ったほどの数はありませんでした。周りにカキ、ムクノキ、エノキ、センダンなどの種子がありました。またアオキなどの芽生えがあることに気づいた人もありました。


タメフン場で観察する


 私が分析用の糞を集めていたら、麻布大学の若林さんが「なぜ、糞を一つ一つ分けて拾うのですか?」と質問しました。私は答えました。
 小学生の身長を測定して平均値を出すとします。背の低い子から高い子まで結果が得られます。これを、サンプル数が少ないからといって同じ背の高い子を何度も測定して平均値を出したら、事実と違うものになりますね?それを「サンプルの独立性」と言って、1人からは1つのデータしかとってはいけません。個人なら1つということがわかりやすいですが、糞の場合は1回の排糞を1サンプルとします。だから色や形や鮮度などから1回分と判断したものをとります。場合によっては2、3個のこともあるし、1個だけのこともあります。

 歩いているとケチャップの容器があり、タヌキの噛み跡がありました。よくマヨネーズの容器にこれがあります。



 それから津田梅子のお墓に行き、ご挨拶を兼ねて東日本大震災の被災者に黙祷を捧げました。
 最近、1月に集めた大量の糞を水洗して2個だけドングリが出てきたことを報告しましたが(こちら)、それはタヌキはドングリを食べるという意味ではなく、むしろこれだけあるのにほとんど食べないという意味だという説明をしましたが、そのことを示唆するように、大量のドングリ(シラカシ)が落ちていました。


シラカシのドングリ


 それから玉川上水沿いの林に行き、柵をくぐり抜けるタヌキの写真を見ました。


パソコンで写真を確認



フェンスをくぐるタヌキ


そして、タメフンを探すために、ラインを作って歩きました。





列になってタメフンを探して歩く


林の一角で体制を整えるとき、前回の観察会で水洗してもらった糞からの検出物を紹介しました。


タヌキの糞からの検出物


 残念ながら結果的にタメフンは見つかりませんでした。これだけの人数でほぼくまなく歩いたので、ないということだと思います。だから雪の上に足跡がたくさんあったのですが、そのことはタメフンと直接は連動しないということのようです。

 自然を相手にしていると、こちらの思うようにならないことはよくあります。今回は高校生や朝鮮大学校に入学の決まった朴君なども参加してくれました。タメフンが見つからなかったのは残念でしたが、そういうことを学んでくれたらよいと思いました。

写真をご提供いただいた豊口信行さんと棚橋早苗さんにお礼申し上げます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タヌキの糞にドングリ

2018-03-08 07:07:08 | 生きもの調べ
ちょっと意外というか、不思議に思っていることがあります。クマはドングリが大好きで秋の糞びはドングリがいっぱい入っています。ドングリはでんぷん質だから、脂肪に変えて冬眠に備えるわけです。津田塾大学にはシラカシがたくさんあって大量のドングリが落ちています。それを同じ食肉目のタヌキが全く食べません。私は去年100個以上の糞を分析しましたが、全く出て来ませんでした。だから論文に次のように記述しました。

津田塾大学の森林で最も優占するシラカシや個体数が少ないので調査区には出現しなかったコナラやスダジイなどは大量の堅果類(ドングリ)を実らせ,林床に多数落下するにもかかわらず,タヌキの糞からは検出されなかった.タヌキがドングリの種皮・種皮を食べないで,種皮を除いて子葉部だけを食べるとか,飲み込まれた子葉部が完全に消化されて糞に出現しないとは考えにくい.したがって,津田塾大学の森林での供給量の豊富さを考えれば,タヌキは実質的にドングリ類を食べていないと考えられる.ただ,東京都八王子市でのタヌキの糞分析例では少数例で,微量のドングリの種皮が検出されたことがある(Takatsuki et al., in press).ほかにも皇居でシイ・カシ類の種子片が出現しているが,出現頻度は8.8 %にすぎない(酒向ほか, 2008).そのほかの多くの分析事例ではドングリは検出されていない.これらの情報から,タヌキはドングリが豊富に供給されても,ごく少量を低頻度にしか利用しないと思われる.このことは,同じ食肉目のツキノワグマUrsus thibetanusがドングリ類を好んで採食すること(橋本・高槻, 1997)を考えれば,興味ある現象である.例えば,コナラ属の堅果の出現頻度は,秩父山地のツキノワグマの場合, 25 %(1993年)または67 %(1994年)であったし(Hashimoto, 2002),岩手県では95 %〜100 %であったし(坂本・青井, 2006),中国山地では85 %(9月),28 %(10月),47 %(11月)であり(大井ほか, 2012),いずれもタヌキよりもはるかに高頻度であった

 その結論は変わらないのですが、今年はマーカーのチェックのために、分析はしませんが、ふるいで水洗しています。すでに50個以上は調べました。そうしたら3月2日に回収した糞の中の1個からドングリの破片が出て来ました。中身(子葉)が一部欠けた状態で、外側の殻もありました。ほとんど未消化の状態なので、どれだけ栄養になっているかわからないし、150個以上見た中のわずか1個ですから、「ほとんど食べない」という結論は変わりませんが、ごく稀には食べることがあるという「小さな発見」があったということです。林には今でも大量のドングリが落ちています。


津田塾大学のタヌキの糞から検出されたドングリ。上は殻の破片、下の2つが中身(子葉)。格子間隔は5mm

以上の報告を書いた後、1月10日に拾っていたタメフン3と読んでいるタメフン場の大量の糞を3月10日に全て水洗しおわりました。潰れたり、くっついたりしていてどれが1個かわからなくなっているので、およその量しかわかりませんが、60個くらいです。たくさんのカキとブドウの種子が出てきましたが、その中に1個だけ、シラカシのまったく未消化なドングリが出てきました。同じ結論ではありますが、「タヌキはドングリを食べないわけではない、ただしほとんど未消化だ」ということです。


タヌキの糞から出てきたシラカシのドングリ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする