佐藤匠(tek310)の贅沢音楽貧乏生活

新潟在住の合唱指揮者・佐藤匠のブログです。

ポピュラーソング考~高校生はいつも高校生~

2012年03月22日 01時49分08秒 | ポピュラー

 

 歳をとるとCD買わないとか聴かなくなるとか、

という理由には、いろいろあると思うんですね。

 

 時間が無くて聴けなくなるとか、

結婚したりでそこにお金を割けなくなるとか、

 

 僕が一番感じる大きな理由というのは、

大人はある程度を過ぎると、

歌の力を頼らずにある程度は生きていけるようになるから、

でないかと思います。

 

 自分が中学生とか高校生とかの時の、

自分の好きな歌手への入れ込み方といったら、

結構凄かったと思います。

やっぱり、心にいろいろなものを抱えている時、

歌の力を必要とするのかなと思うんですね。

 

 でも、ある程度いろいろ経験して悩んでいくと、

自分の心というのは変わっていくわけで、

一般的には「成長」というわけですが、

そうすると、歌に求めること、というのが、

少しずつ変化していくのではと思うんですね。

 

 いつまでも同じ悩みや苦しみを抱えているわけでないので、

そういうものを歌っていく歌手からは離れていくし、

逆に、売れているものとか流行しているものは、

常にそういう世代を対象にしているから、

例えば、僕なんかは、

大人の立場からそういう曲を見て、

正直言って「稚拙だ」と思ったりしてしまうんですね。

そうやって、そういう世代の曲から離れて、

結局、大人が歌を欲する場合というのは、

昔から好きだった歌手の歌を聴くか

(恐らく歌手とともに育ち成長している感覚。

”応援”言っても良いかと思う。)、

昔聴いていた曲を懐かしんで聴く

(ここ最近はこのパターンを対象にするCDが多い、

これは”娯楽”というイメージかと思う)、

とかですよね。

 

 結局、

高校生はいつも高校生だし、

中学生はいつも中学生だから、

自分がそこを通過していってしまうと、

大人という立場からしかそれらを見ることができないので、

その世代の歌の表現が「稚拙だ」と

感じたりするんですよね。

 

 でもやっぱり、

稚拙は稚拙だと感じたり。

例えばですけど、ファンの方には恐縮ですが、

ソナーポケットとか、西野カナとか、

ナオトインティライミとか、

ストレートなこととかそういうものって、

何と言うか、僕のように屈折している人間からすると、

やっぱり素直には受け入れられなくて、

そこはやっぱり、何か一手間加えてくれとか、

もっと複雑なところを表現してくれとか、

そう思うわけですね。

 

 僕が年取ってから福山雅治の曲を聴くようになったのは、

彼が年相応の曲を書くようになっていったからだと思います。

それほど離れていない世代として、

「Hello」とか「Melody」とか「All my loving」とかは

当時の僕には受け入れがたい曲で、

それで昔好きじゃなかったんですけど、

ラジオを通じて、今の曲を聴くようになって、

年齢に応じた誠実な曲作りをしていることが分かって、

今の曲を、年齢に応じた受け止め方が出来る曲だと思い、

そうやって好きになるパターンもあると思うんですね。

 

 意外と、このパターンが、

この業界に少ないのだと思います。

尾崎豊の話を前ここに書いたんですが、

僕自身は彼が活動再開した時の曲から好きになったので、

僕は彼が大人になっていくにしたがって書いていく曲を

聴いていたいと思っていたんですね。

でもそうでなく「卒業」とか「15の夜」の頃に好きになった人とかは、

マスコミも含めて、

彼が大人になっていくことをある意味拒んだ、

それに彼自身は悩んでいたのではと、

彼の活動再開後の曲を聴いていて感じていたんですね。

いつまでも彼は十代の教祖ではないはずで、

でも高校生はいつまでも高校生で、

大人になるにつれて人は歌から離れていくから、

成長していった彼の曲は、

売れる売れないの話をしていくと、

前述の通り難しい、ということなんだと思います。

 

 ポピュラーソングに、

別に難しいものを期待しているわけじゃないんですね。

でも、「分かりやすいもの」への疑問というか、

それは多分僕自身が常に思っていることなので、

話が逸れますけど、

そう考えると、いわゆる職業作詞家が書く詞って、

昔の曲でも、

改めて聴くと非常にスッと入って来るんですよね。

「世界中の誰よりも僕は君が好きだよ」

とは、正直職業作詞家の方は書きませんよね(笑)。

人の心のひだにいかに寄り添うかというか、

そういう曲こそ、大人になった人たちに

本当に受け入れられるものなんじゃないかなと

感じるんですね。

 

 でも、そこはメインターゲットじゃないから、

昔聴いていた曲を懐かしむ娯楽としての聴き方に

アプローチすることになってしまうんですね。

 

 歌手が成長していくことを

そのまま曲にしていくことの難しさ。

という話でした。