田中雄二の「映画の王様」

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『人生模様』

2018-12-21 12:01:04 | 1950年代小型パンフレット

『人生模様』(52)(1993.9.11.)



 アメリカの作家オー・ヘンリーの短編小説を基にしたオムニバス映画で原題は「Oヘンリーのフルハウス」。ヘンリーの小説は、そのほとんどが短編で、一本の映画にするには短過ぎる。しかもその短編内で、物語がきちんと構築されているので、映画用に新たな話を付け加えて引き延ばすと全体の構成が崩れてしまう。その意味では、独立した五つの話をオムニバス形式で組み合わせるという、この映画の手法は最適であろう。しかも、それぞれの話に、当時フォックスが売り出そうとしていた新人女優たちを配し、ベテランがしっかりと脇を固めるのだから、これは見事なハリウッド商法と言えなくもない。

 まずナレーターが登場する。何とこれが『怒りの葡萄』などを書いたジョン・スタインベックだというから驚いた。“動く”スタインベックを初めて見た。

 越冬のために何とか刑務所に入ろうとするルンペンだったが…。第1話「警官と讃美歌」(ヘンリー・コスタ―監督)では、チャールズ・ロートンが原作のイメージ通りにルンペン紳士を演じてくれる。ここで街の女として登場するのが、かのマリリン・モンロー。だが「モンロー特集」と銘打たれたビデオで、彼女目当てにこの映画を見た人がかわいそうになるぐらいの端役だった。

 20年ぶりに再会した幼なじみの2人。だが、それは警官と犯人という形でだった…。第2話「クラリオン・コール新聞」(ヘンリー・ハサウェイ監督)は、当時の大悪役リチャード・ウィドマークを生かすために無理をして、原作の味わいを殺してしまった、という気がした。

 病床の女は、窓から見える蔦の葉が全て落ちた時、自分も死ぬと考える。それを知った貧乏画家は…。第3話「最後の一葉」(ジーン・ネグレスコ監督)は、アン・バクスターとジーン・ピータースを姉妹にしたところに疑問が残る。なぜ原作通りに友人同士にしなかったのだろうか。画家役のグレゴリー・ラトフがいい味を出している。

 2人の男が町長の息子を誘拐し、身代金をせしめようとするが…という、第4話「赤い酋長の身代金」(ハワード・ホークス監督)は傑作だった。ホークスが、達者なコメディリリーフのフレッド・アレンとオスカー・レバントを見事に使いこなしている。

 若く貧しい夫婦の贈り物を巡る行き違いを描いた第5話「賢者の贈りもの」(ヘンリー・キング監督)は、妻役のジーン・クレインの美しさが光り、この切なくも美しい物語を輝かせている。そしてこの話をラストにすることで、話によって出来に凸凹はあるものの、トータルとしては、市井の人々のクリスマス話として、心地良く見終わることができるのだ。

パンフレット(53・国際出版社)の主な内容
「警官と讃美歌」物語 チャールス・ロートン、マリリン・モンロウ、デヴィッド・ウェイン/「クラリオンコール新聞」物語 ディル・ロバートソン、リチヤード・ウイドマーク/「最後の葉」物語 アン・バクスタア、ジーン・ピータース、グレゴリイ・ラトフ/オー・ヘンリーのことなど(清水俊二)/原作者(オー・ヘンリイ)の略歴/「酋長の身代金」物語 フレッド・アレン、オスカア・レヴァント/「賢者の贈物」物語 ジーン・クレイン、ファーリイ・グレンジヤア


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