俳優の梅野泰靖(やすきよと読む)さんが亡くなった。劇団民藝の重鎮でテレビドラマにもたくさん出ている。映画では、『幕末太陽傳』(57)の放蕩息子・徳三郎、『男はつらいよ』シリーズの博(前田吟)の兄役のほか、刑事役や政治家役も多い。後年は三谷幸喜監督の『ラヂオの時間』(97・写真)『みんなのいえ』(01)『ザ・マジックアワー』(08)にも出ていた。
インテリとコミカルな役、小市民と小悪党の両方ができる達者な名脇役。名前は分からないけど、見たことはあるという人も多いのではないか。その、やすきよさんは、何を隠そう、高校の大先輩なのだ。だから、全く面識はないのだが、勝手に親しみを感じていた。
うちの高校の卒業生の中には、やすきよさんのほかにも、個性的な芸能人がいる。例えば、「湯の町エレジー」が有名な歌手の近江俊郎、小朝の師匠・春風亭柳朝、声優の富山敬、現千葉県知事の森田健作、中退だけど美川憲一、ドラマ「アッちゃん」などで名子役として活躍した蔵忠芳、ラッツ&スターの桑野信義…。
ところで、脚本家の桂千穂も亡くなった。男性であることはもちろん知っていたが、90歳だとは知らなかった。日活ロマンポルノや東映のアクション映画を書く一方で、大林宣彦監督の文学作、福永武彦原作の『廃市』(84)、赤川次郎原作の『ふたり』(91)と『あした』(95)、檀一雄原作の『花筐/HANAGATAMI』(17)も書く、という多面性を示した。不思議な脚本家だった。