むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『責任という虚構』小坂井敏晶(ちくま学芸文庫)

2024年01月23日 | 読書
自己責任とか、説明責任とか、何かとメディアを騒がす責任であるが、そもそも責任とは何か? という問いの答えがこの本にあります。
現代における責任とは、自由意思にのっとった行動の結果のことであるでしょう。そもそも、自由意思ってあるのかということですが、脳科学、社会心理学では否定されている概念なのです。
脳科学では、脳は、右手を上げようとする意志より先に行動の方が早く作動し、右手を上げる信号を発するのに遅れて、右手を上げようとする意志を認識できる仕組みになっています。つまり、行動が先、その行動をしようとする意志がそのあとに認識されます。
すべての意志は、社会的・生物的な影響の積み重ねにゆだねられ、自由意志というのは虚構の一種でしかありません。
罪を罰するというのは、集団の道徳や習慣から逸脱した者を排除するための虚構によって成り立ちます。人殺しだろうが窃盗だろうが、それを裁かなければならないという社会があり、それに反するから罰せられるのです。
悪いことだから罰せられるわけではありません。なぜなら、それは自由意志にのっとって行われたと言われても、それは虚構でしかないからです。
面白いのは、虚構であるということが社会の中では隠蔽されていることです。つまり、自由意志があるから責任が生じるということが社会の中では真実だと信じられているからです。
あまりにも、普段の常識からかけ離れている内容なので、何を言っているのかわからない部分もあります。
わたしは、死刑養護派でしたし、自己責任という言葉にうなずいてやまない人間でしたが、この本を読んで変わりました。一読して損のない本だと思います。


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