むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『襲来(上)(下)』帚木蓬生(講談社文庫)

2024年07月15日 | 読書
ユーラシア大陸をほぼ手中に収めたモンゴル帝国の元が日本に攻めてくた元寇。
蒙古襲来を題材にはしていますが、視点がユニークなため、その場にいたような緊迫感を味わえる構成になっています。
主人公は、千葉の片隅に住む孤児の漁師、見助です。
見助は、自分を拾い育ててくれた爺さんの葬式で、のちの日蓮上人となる僧に出会い心酔し付き人になります。日蓮は、念仏宗と対立し、このまま、念仏がはびこると国は内外から崩壊の危機を迎えるので、幕府は法華経に改宗すべきだと説きます。日蓮に対する幕府と念仏宗の迫害がひどくなり、草庵が焼き討ちされたとき、見助の機転で日蓮を脱出させて救うことができました。
見助は、かなを覚え、日蓮の信頼を得ることとなり、対馬へ行き、日蓮の眼耳となり外敵の来襲をしらせてほしいと命を受けます。
単身対馬へ渡る見助は、そこで13年の時を過ごしながら日蓮と文通をしています。ついに元の船団が対馬へ襲来して、親しくしていた人たちが皆殺しに会い、心を寄せていた女性も左手に穴を開けられ縄を通され連れ去られてしまいます。
見助は、ひとり山の中に用意していた隠れ家で、その一部始終を目撃するのでした。
その後、九州へもどり、防備の石築地の管理を手伝うことになります。
そして、再び、元がやってくる気配が濃厚になってくると再び対馬へもどり、狼煙台の番人となり、元寇へ備えるのでした。
このように主人公は、元寇の初めから終わりまで見る位置に置かれていて、見ていないところは、周りの人々から聞かされる立場にあり、それをまとめて日蓮に報告書を書く役目があるので、読者は、その場にいるように追体験ができる構成になっているのです。
主題は元寇でも日蓮宗のはじまりでもなく、見助の愚直なまでの師弟愛なのですが、それは読んでいただけると胸にせまるものがあります。

コメント
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