ホラー小説家、ブラックウッドの傑作選集。
主にヨーロッパ周辺を舞台にした大自然に潜む怪異と遭遇する物語が収録されています。
この作家の特徴は、その自然描写の巧みさでしょう。舞台は河の中州から、砂漠、雪原、山の中まで様々なのですが、過不足なく読者をそこまで連れて行く筆力がありました。
そこでは、大自然の怪異の前に、点にすぎない人間の非力さが恐怖の源になるのです。
表題作の「木の葉を奏でる男」だけは、少し毛色が変わっていて、一神教を無視して自然を崇拝する男の生きざまを描いています。木の葉を奏でるとは、木の葉を口に当てて笛のように吹くことです。
全体を通して、自然への畏怖と崇拝が感じられ、ホラーと言うより、自然の恐ろしさを認めた自然賛歌としても読めるでしょう。
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