まずは、本の題名と帯の文句(第2次世界大戦、最期の全面戦争)にやられました。第二次世界大戦末期のソ連対日参戦については、戦争の勝敗に関係なくソ連の野心によって起こされ、満州はひとたまりもなく蹂躙された局地戦というイメージだったのですが、「日ソ戦争」「全面戦争」として見ることもできると目から鱗が落ちた気分でした。
太平洋戦争前の日本陸軍の仮想敵国は、中国・ソ連であり、本来予想されていた戦争であったはずです。そして起こりえるなら、日ソ両軍の全面戦争になる可能性も秘めていました。
太平洋戦争が劣勢になるにつれ、日本はソ連との戦争をまったく望んでおらず、それどころか連合国との戦争の仲介すら期待していたのです。それをスターリンは、時間稼ぎに利用し、終戦間際に宣戦布告、終戦後まで戦いを継続していくのでした。
戦後、多くの日本人が軍・民問わずシベリアへ連行され、関東軍の文書は焼却され、ソ連側の記録は鉄のカーテンの中という状況で、断片的な証言が一人歩きをしている現状でした。冷戦終結後、ロシアからの資料が少しずつ手に入るようになり、米国保有の資料も研究が進み、日ソ戦争の全貌が客観的にみられるようになってきました。
この本を読んで、今まで通説とされてきた事柄が覆るような大きな事実は、それほどないイメージですが、ソ連側の死傷者が意外に多く、前線の日本軍はかなり善戦していたということが新しく認識できました。
しかし、大きな国家戦略の過ち(ソ連に対する楽観的過ぎる対応)を戦闘で覆すのは無理であったということになります。
また、アメリカ軍・中国国民軍・中国共産党の利害も複雑に絡んでいますので、多大な援助をして千島列島を取られてしまったアメリカや、同じく協力したにも関わらず満州の利益は共産党に持っていかれた中国国民軍など、現在までつづく極東の秩序が作られた戦争だったのです。