
子どもの頃、児島襄著の『太平洋戦争 (上)(下)』(中公新書)を愛読していて、その中で、駆逐艦「野分」がたびたび登場して活躍する印象が残っていました。駆逐艦は、最前線で絶えず活動しており、大局にさえ影響を与えていたことになります。
この本を手に取ったのは、そんな「野分」の活躍を読みたかったのですが、そうとはなりませんでした。
筆者が野分に乗ったのは、1年にも満たない期間で、太平洋戦争も終盤です。従って、戦争前半の華々しい活躍は、さーっと流されて、後半の苦闘の部分が多く描かれていました。また、人事に対する記述が多く、乗組員中心の話になっています。
戦争中とはいえ、めまぐるしく人事が行われていたことに驚きました。生き残るには、ここでの運が大きく関与していたのです。
そんな中で、トラック島より引き上げるとき、スプールアンスが乗艦するアメリカ海軍最強の高速戦艦ニュージャージーとアイオワに40cm砲の砲撃を受けながら、追撃を振り切った場面などは、実際に筆者が体験したことなので迫力が違いました。
野分の最期については、行方不明とされていましたが、アメリカ軍の資料が開示され、今度はハルゼー率いる高速戦艦部隊(またもやニュージャージー、アイオワ基幹、軽巡洋艦3隻、駆逐艦8隻)に捕捉される撃沈されたことがわかります。
野分の乗組員の生き残りは居ませんでしたが、重巡「筑摩」のただ一人の生き残りの証言により、野分は単艦戦場に残り撃沈された筑摩の乗組員を多数救助していたことが知られました。
常に最前線で戦った駆逐艦の姿が垣間見れる一冊でした。
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