はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

ジウI 警視庁特殊犯捜査係SIT

2009-03-14 15:33:09 | 小説
ジウ〈1〉―警視庁特殊犯捜査係 (中公文庫)
誉田 哲也
中央公論新社

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「ジウI 警視庁特殊犯捜査係SIT」誉田哲也

「武士道シックスティーン」で人気の誉田哲也が描くは警察モノ。主人公が2人とも女性で性格が正反対、と書くと前著を想起するかもしれないが、いや全然違います。
 レスリングと柔道を極めた基子は、戦い凌ぎ合う中にしか生の意味を見いだせない「武」な女性だし、交渉担当の美咲は人当たりが良く犯人の説得の他、頑なな被害者遺族の心をもほぐすことのできる優しい女性。2人は共に警視庁捜査一課の特殊犯係に属していたが、とある籠城事件をきっかけに道が分かれる。
 武の才能を認められた基子は、特殊急襲部隊、いわゆるSATに編入され、さらなる戦場へと駆り立てられた。籠城犯人のなすがまま、あられもない姿を全国に晒した美咲は、碑文谷署の交通課への転属を命じられた。ソリが合っていたわけではない2人は別々の道へ進み、今後一切関わり合うことなどないと思われていた。
 籠城事件の犯人・岡村の語る謎の男・ジウ。ジウの起こした誘拐事件。かつて警察が敗れたその事件に挑む東警部補と美咲。バラバラな捜査本部。SATで訓練に励む基子に突き刺さる男たちの侮蔑の視線。雨宮と基子のさばさばしたロマンス。様々な要素が渾然一体に絡まり合い、そして基子と美咲は再会する。そこは、血と硝煙の匂いの漂う戦場だった……。

 警察という圧倒的な男社会で生きる2人の女性には様々な危難がふりかかる。だけど2人はめげず、2人なりのやり方でそれにあらがい、それぞれの居場所を確保していく。
 その姿がいいな、と思える。可憐で、逞しくて、儚げで、目が離せない。本当に、この作者は女性を書くのがうまい。男性作家、なんだろうけど、いつも感心させられる。 
「武士道シックスティーン」みたいな爽やかさはあまりなく、どこか生々しさが匂う印象なので、そのへんは留意しておくべし、です。