はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

のりりん(4)

2012-06-01 19:43:29 | マンガ
のりりん(4) (イブニングKC)
クリエーター情報なし
講談社


「のりりん(4)」鬼頭莫宏

 轟との勝負もひと段落ついて、オヅちゃん(?)の件も片付いて、ようやく自転車に打ち込める環境が整った丸子。いつまでも借りてるわけにはいかないからと、自前の自転車を借りることにしたのだが、そこには意外なトラブルが待ち構えていて……。

 というだけのことに1巻かける、なかなか大胆な構成の4巻。
 自転車の仕組み、価格帯、ホイールの違い等々、一般人にもわかるような問題提起から始まって、最終的には法的に「軽車両」である自転車と、日本での自転車と公道の実態の違いという難しいところにまで触れていて、痒いところに手が届く仕様になっていたのに感心した(自動車で走っていて、もしくはジョギングしていて自転車が邪魔だと思うことはたびたびあったし、たとえ万人が納得できる解決策ではなかったにせよ)。
 まあでもなにより感銘を受けたのは、「男は30過ぎたら自転車」という一文だろうか。僕自身が30過ぎているからというのもあるが、そして自転車ではないけどジョギングをしているからというのもあるが。ともあれ自分自身の体のマネジメントをしっかり考えるようになったのはここ最近のことだ。筋肉、体力、精神力、社会人ならではの明日の勤務体制。もろもろの材料に日々の天候を掛け合わせて走る距離やルートやペースを考えて、自分の年齢と、自分の真実と向き合って走る。
 必要に迫られたからだ。昔のように動けない自分。にもかかわらず昔のように走れると思っている自分。歯がゆく切ない自分の年齢の真実と、僕は向き合う必要に迫られた。
 多くの若い人は知らないと思う。自分自身に衰えが迫ってきていることを。いやでもおとずれるその日のことを。

 それは愕然とする差異だった。
 思ったように動かぬ軌道。
 続かぬ心臓の拍動。
 あざ笑うように流れる汗。
 僕はもう若くない。





 でも、希望はあるのだ。自分が足を動かし続ける限り、体は必ず前へ進むのだから。
 この作品は、きっとそういう作品だ。
 身の丈に合った努力と人間関係の中で、ともかく最上と最高を目指す。ヒーローではなく、ヒロインでもなく、世界を救わぬまま、等身大の自分自身のままで、ただ一歩でも先へ。
 
 どんな終わり方を迎えるにせよ、最後まで読む価値のある作品だと思う。
 だからもっと多くの人へ。
 読んでください。いまはわからなくても、伝わらなくても、いつかきっと、自分が衰えを感じ始めたときに、胸に響く言葉が詰まった作品だから。