70億の針 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)多田乃 伸明メディアファクトリーこのアイテムの詳細を見る |
70億の針 2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)多田乃伸明メディアファクトリーこのアイテムの詳細を見る |
「70億の針(1)&(2)」多田乃伸明
あるトラウマから他人と関わることを疎い、常に1人でいるようになった女子高生・ヒカル。片時もヘッドフォンを耳から離さず、修学旅行の夜すら浜辺でMP3プレイヤーの音に集中していた彼女は、宙を飛び交う謎の光源の直撃を受け、一度死んだ……はずなのだが、ふと気がつくと学校で授業を受けていた。何事もない日常が平気でまかり通っていくのをどこか違和感を感じながら暮らしていた彼女の耳に、不思議な声が届く。
声……テンガイはいう。君は一度死んだ。今は外宇宙から来たプラズマ生命体である自分と同化することで構成されている。君はひとりではない。君は全宇宙の生命を脅かすもの「災いの渦(メイルシュトローム)」を打ち倒さなければならない。地球上の人間の誰かと同化しているはずの災いの渦。それが今は近くにいて、これを取り逃がすということは……そう、世界中の70億もの人間の中から1人を探すようなもの。藁屑の中に落ちた針を拾うようなものなのだ。
ということを一息にいったわけではないのだが、戸惑い拒絶するヒカルを説得し、災いの渦と遭遇するまでが1巻。2巻は、父の死から始まった人間嫌いのヒカルのルーツに触れる、ひさしぶりに出来た友人との帰省旅行の話。
絵が良い。特別綺麗上手というわけではないけれど、陰影を生かした端正な背景とキャラの距離感が、奥行きを感じさせる。草木や虫の息遣いまでもが聞こえるような気がする。
ストーリーはいささか使い古された感のある異星間バトルものなのだが、練りこまれた心理描写と絶妙の相関関係が、読者を飽きさせない。おすすめ。