広く浅く

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秋田市高陽

2020-06-03 00:39:44 | 秋田の地理
他の市町村でどうなのかよく知らないが、秋田市の地名で住居表示実施済みのところは、「大字」に相当する部分が、各町名の頭に付いている。
千秋矢留町、千秋久保田町、千秋明徳町のように。「丁目」的扱いだが、「仁井田本町○丁目」のように重複するものも一部ある。
接頭語もしくは苗字みたいなもので、これを元に「千秋地区」「仁井田地区」と地域分けをすることが多い。秋田市役所の人口統計でも、「大字別」としてこの基準で集計している。

ちょっとまぎらわしいのが、小学校の通学区名を「○○地区」と呼ぶ時との区別。
大字と同じ名前の小学校も多いが、おそらくそのすべてが大字の範囲と学区域が一致していない。
「保戸野地区」では、大字の保戸野は全域(保戸野千代田町のごく一部だけ例外で泉学区)が保戸野小学区。加えて大字の旭北、千秋、大町の各一部も保戸野小学区。
一方、大字の旭北地区の残りは旭北小学区だから、そこでも一致しなくなる。

敬老会や秋の運動会「全市一斉スポーツレクリエーション大会」では、社会福祉協会・体育協会や町内会が関わる関係なのか、小学校区単位(日新小学区では新屋地区、旭南小学校では旭南・茨島地区など、呼称を変えることはある)で行うのが基本のはず。
介護保険の「地域包括支援センター」は、秋田市の場合、各センターが名乗る地域名と担当地域が、けっこうずれている。
ゴミ収集の曜日分けは、大字が基本のようだが、たまに例外もある。
要は事例に応じて、地域分けが違う。


さて、秋田市民に秋田市の大字に基づく○○地区を挙げさせた場合、なかなか出てこない、マイナーな地区があると思う。お住まいやゆかりのある方には申し訳ないですが。
「○○台」のような新興住宅地は、新しいのと、ほんとうに住宅ばかりで部外者が訪れる機会がないから。
あと「川尻」と隣り合って混同しがちな「川元」。川尻のほうが続く○○町の数が多く、小学校名でもあることから、隠れてしまっている。※先日の記事でも触れた通り、1965年の住居表示で川尻から分離したのが、川元の初出。

それから「港北(こうほく)」。「土崎港北(つちざきみなときた)」とは近いが別。
これは港北小学校があるが、小学校の名前だけで地名ではないと思う人がいるだろう。地名としては、港北新町と港北松野町の2つだけだけど、存在する(港北小は1948年創立、地名としては1978年初出なので、小学校ありきの地名ではあるのかもしれない)。
だけど、その2町の通学区は、港北小学区もあるが、飯島小と飯島南小のエリアもある。(中学校も土崎中/飯島中に分かれる)。


そしてもう1つ。港北と同様、続く○○町が2つだけの大字がある。これが本題。
ただ、秋田市民なら、見聞きする機会、訪れることも少なくはない場所かもしれない。1966年にできたので歴史もあるのだけど。
五十音順では、港北の次に来る。


それは「高陽(こうよう)」地区。
といっても、ピンとないかも。

町名は高陽幸町(さいわいちょう)と高陽青柳町(あおやぎちょう)。
高陽幸町のほうが知名度は高いだろう。新国道の交差点名にもなっているし、秋田中央警察署幸町交番があるから。
交番が「高陽交番」などでなく、ピンポイントな命名なのは秋田では珍しい。なお、先日の通り、2021年度中に泉北の新駅近くへ移転する計画があり、名称が変わると思われる。

交番のように「高陽」を外して下の「幸町」だけで呼ばれることもあるが、「青柳町」とはあまり言わない。
金融機関やコンビニなどの店舗名では、高陽もしくは幸町、青柳町を名乗るものはないと思う(マンションなどはある。後述)。その点でも影が薄い。港北では秋田銀行の支店などに使われている。
【3日追記】テレビや新聞で、施設などの所在地を伝える時、「秋田市保戸野の秋田中央郵便局」「秋田市手形の秋田大学」と大字レベルまでのことが多い。記憶も事例もないと思うが、高陽の場合は「秋田市高陽の」と言うだろうか。幸町・青柳町まで言ってしまうかもしれない。

Googleマップに加筆
高陽地区は、秋田市中央部、秋田市役所の裏一帯。上の地図の赤枠内。
地区としては泉、保戸野、旭北、山王、八橋に囲まれ、道路では南辺を旧国道、北辺を八橋大通り、東辺を新国道(新川向~高陽幸町~鉄砲町交差点)に囲まれる。西辺はけやき通りの北側の道(秋田テレビ前)の、1本東隣りの狭い市道。
大ざっぱに縦横500メートル四方といったエリア。東西でほぼ二分され、東側が高陽幸町、西が高陽青柳町。青柳町はほぼ縦長長方形だが、幸町は新国道のカーブに沿って三角形に近い形状。
旧国道を通る路線バス将軍野線(元市営バス)には、高陽幸町、高陽青柳町それぞれバス停がある。

通学区は、全域が旭北小学校・山王中学校。
ただし、場所によっては八橋小、泉小、泉中のほうが近いように思える。特に八橋小は道路横断も少なくて安全そうだけど。
【3日追記】旭北小の学区を地図に示すと、高陽地区だけが北方向の保戸野小学区・八橋小学区に突き出して食いこんでいる配置になる。

秋田市では2001年まで「秋田市ガス局(秋田市営ガス)」があり、東部ガスと供給範囲をすみ分けていた(関連記事)。
中央地区では、市役所より北かつ新国道より西が、市ガスエリアだったので、高陽地区も該当する。ただ、例外的に新国道に沿ったほんの一部だけは、西側でも東部ガスエリアだった部分があったそうなので、もしかしたら高陽幸町の一部はそうだったかもしれない。


個人的な印象では「高陽地区」として単独でとらえるには狭いエリア。
小学校の学区の結びつきを基準にすれば、旭北地区(上記の通り、地名は旭北でも保戸野小学区の所もある)に含めればいいのだろうか。それとも山王地区(地名は山王でも川尻小学区の所もある【下の8日の補足参照】)だろうか。【3日補足・隣合うといっても、保戸野や八橋とひとくくりにするには違和感があると思う。】ちょっと宙ぶらりんな地名。
【山王地区の言い回しが分かりづらかったので8日補足】旭北小は山王中の隣にあり(したがって所在地は山王)、旭北小学区全域が山王中学区。そのため、学区と地名を関連付けて、山王地区は全域が旭北小学区と勘違いしそうになる。実際には、山王地区の一部は川尻小学区なので、旭北小学校区だからという理由で高陽を山王地区に含めるのは前提から間違っていることになる。

「高陽」は1966年に新たにできた地名で、それ以前は住居表示前の(大字)保戸野と(大字)八橋の各一部、さらに「花立町」だった。花立町は、その時に高陽幸町と山王二丁目になって消滅。
実は秋田市で地名以外では、それ以前に「高陽」が存在した。

秋田市立高陽中学校である。
終戦後、新制中学校が開校した時、秋田市中央部では現在より学校が分散して設置されたらしい。それが1953年になって統合されて現在に至る。
泰平中、久保田中、手形中というのが再編されて秋田南中と秋田東中になり、高陽中と成和中が統合されて山王中になった。

つまり、現在の山王中学校の前身の1つとして、ごく短期間だけ高陽中が存在した。
所在地は、現在の山王中学校の場所だったそうだ。
※ネット上では、成和中など他校も含めて、所在地や学区はおろか、存在した事実すらほとんど記録がない。山王中公式サイトの沿革にも、統合した事実のみ記載。教育委員会や図書館で調べれば分かるが、秋田市民でも知らない人が多い歴史かもしれない。【3日補足・当時の生徒だった人も、いずれ減っていくことになる。明治開校の小学校ならともかく、100年に満たないのに歴史に埋もれるのは早すぎる。】※その後、成和中の場所が分かった! 泰平中、久保田中、手形中についても。

そんなわけで、秋田市で「高陽」といえば、この地名とかつての中学校名以外には見当たらない。高陽中学校の由来も分からない。

「角川日本地名大辞典」で、高陽幸町、高陽青柳町を調べてみると、
「旧高陽中学校の通学区であり、この地域の一部を幸町と呼んでいたことによる」「旧高陽中学校の通学区であり、この地域の一部を青柳町と呼んでいたことによる」
とあった。

なるほど。エリアの一部の通称を小字相当とし、大字相当部分は、少し離れているけれどなじみがある高陽中学校の名をもらったということか。【3日補足・当時なら高陽中の記憶が多くの人にあっただろうし、「高陽」の普遍的で前向きなイメージも好都合・好印象だったのだろう。】
なくなった【3日追記・しかも多くの人の記憶からも記録からもほぼ消えてしまった】学校の名が、所在地ではない地名としてよみがえって残るとは、なかなか変わった地名だと思う。

ちなみに地名辞典では、地名としての秋田市山王は「官庁街団地として通称名の山王地区をそのまま継承して命名」としている。日吉八幡神社の通称が由来ということになるが、ここも地名より先に山王中学校ができているので、その影響も受けていると思う。港北もそんな感じだし、秋田市は学校名が地名に先行する傾向があるのかも。


さて、電柱などに取り付けられた「街区表示板」。
過去の記事のように、秋田市でも時期によっていくつかのバリエーションがある。
高陽地区では、時期的には昔の広告入りのものがあってもおかしくないが、見当たらず。標準的な(最新ではない)、カクカクした書体にふりがな付きがほとんど。
高陽幸町
4文字の町名って秋田市では少ないし、「さいわい」と4文字ふりがなも特徴的。

高陽青柳町 標準版

高陽青柳町 ふりがななし、書体も普通のゴシック体に近い
そして、
普通っぽいけれど
まず漢字はカクカクしていない古いタイプなのに、ふりがながある。しかも、
「あおやなぎちょう」!
ふりがなを間違っている。
他には見つけられなかった。表示板はまとめて作るものだと思うが、間違いに気づいて交換したものの、もれたのだろうか。

高陽幸町のショッピングモールの近く。
「駐車禁止」
狭い道路を渡った向かいにマンションがあって、そのマンションの駐車場には買い物客は駐めるなという、ショッピングモール設置と思われる看板。
マンションの名称に注目。「アビタシオン」はフランス語で「住居」の意味で「中高層の分譲住宅の名称に用いる語。」だそう(goo辞書・デジタル大辞泉より)で、とりあえず合っている。
「高揚」?!
もちろん、正しくは「ほくとアビタシオン高陽」。
2008年のオープン時からあった看板。看板を作る時に間違え、設置前もしくは設置直後に気が付いたようで、当時は上に「高陽」とシール貼りしていた。
それが経年で取れてしまって、もう5年以上だと思うが、そのままになっている。秋田市の会社じゃないから、間違えたのは仕方ないけれど。


全国的には、広島にはかつて「高陽町(こうようちょう)」という自治体が存在した(昔訪れた玖村駅辺りだ!)。今は広島市に編入されて、地名としては消滅しているが、「高陽ニュータウン」などがあり、通称として高陽町が現役らしい。広島市立高陽中学校、県立高陽高等学校、県立高陽東高等学校なども存在する。
以上、日光モータースレア標識と矛盾した交通規制と合わせて、高陽3部作でした。

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10 コメント

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マイナーとしてしまいましたが (taic02)
2020-08-21 23:08:47
本文ではマイナーとしてしまいましたが、旭北小学区でない山王中学区の者としては、昔から気になる存在でした。
幸町と比べると、青柳町は控えめな印象ではありますけれど…
県庁市役所が山王に移転したからこそ、発展した地域なのでしょうね。
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Unknown (Unknown)
2020-08-21 14:46:02
青柳町出身者です。
まさかこんなマイナー町を分析してくれる方がいたとは、、
嬉し恥ずかしです(^_^*)
昔は田んぼしかなかったところを公務員の人達が土地を買い家を建てたと80歳の祖母が申しておりました。
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秋田銀行 (taic02)
2020-07-06 23:29:15
本店営業部高陽出張所というのがあって、それが移転・昇格して、八橋支店になったみたいですね。
旧国道のマルダイの出張所は、言われてみれば記憶があります。
今はいとく新国道店にもATMがありますが、周辺の福祉会館や市役所にもATMがあって、官庁・オフィス街近くだけに便利な一帯です。
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Unknown (Unknown)
2020-07-06 22:31:15
秋田銀行高陽出張所というのが、過去にはありました(その名残が、現在の本店・八橋エリアになっていると推察)。

廃店後、しばらくしてから山王一丁目(マルダイ山王店跡地)地内に店舗外の高陽出張所を置いていた時期もあります。
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通わされる学校 (taic02)
2020-06-05 00:46:11
いちばん近い学校ではないところに通わされるような、理解できない学区分けも珍しくないようです。
交通安全など何らかの事情があるのかもしれませんが、単に昔からの成り行きでそうなっているものもありそうです。
今、秋田市では、学校配置の適正化の検討を進めていますが、そうした点にも踏みこんで検討したほうがいいと思います。
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Unknown (Unknown)
2020-06-05 00:07:08
御野場が四ツ小屋小学区、御野場新町が仁井田小学区という、不思議な地名があります(中学校は御野場中だが、所在地は仁井田字なので、仁井田小学区)。

仁井田緑町や蕗見町、潟中町など、そして、牛島西、南は大住学区、といった、区分けがよく分からないところもあります(こちらは、御野場中と城南中に別れる)。
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コメントありがとうございます (taic02)
2020-06-03 22:48:15
>りおさん
官庁街に近いですものね。八橋、保戸野千代田町、泉よりはやや早く宅地化されたのか、家や道の雰囲気が違います。
空き家や空き地が増えつつある感じもします。
Googleマップは冒頭の高陽地区を赤枠で囲った画像のことです。スマホで見ると、画像の下に文字が来てしまうので、分かりづらくてすみません。

>あんなかさん
西馬込は都営浅草線、大森の西、池上の北ですか。たしかに下町っぽいエリアですね。
昔、興味本位で田園調布駅周辺を歩いたことがありました。まさに歩いてはいけない気がして、早々に引き返したものです。
秋田市では泉や八橋の一部、寺内児桜なんかも、歩いていると大きなお宅があって、こんなところにと意外に思うことがあります。

>FMENさん
50年以上歴史があり、通るだけは通っている市民は多いと思いますが、エリアが狭いことと、直接の用事はない場所ということなのでしょう。
インパクトと珍しさでは、からみでん、イサノ、田五郎でしょうか。
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Unknown (FMEN)
2020-06-03 19:27:29
河辺雄和や大平台、南が丘などのあたらしい名前を除けばマイナーかも。
あとは本道、蛇野の学生街も。
ただ秋田は地名が面白くないです。
○○町が少なく、ユニーク地名が少ないので。
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本当の意味での高級住宅地・・西馬込 (あんなか)
2020-06-03 15:58:58
高陽青柳町は高級住宅地というイメージが強いのですが何だか影が薄いですよね。
本当の高級住宅地ってそうかもしれませんね。
田園調布より山本有三、川端康成、山本周五郎、北原白秋、川端龍子など 錚々たる文化人が住んでいた西馬込周辺の方が隠れ家的本当の高級住宅地という気がします。
実は此処は大田区なのですが蒲田や梅屋敷と同じ区とは思えない程です。
蒲田駅から西に進んである通りを過ぎると雰囲気は一変し路上には外車など高級車しか見掛けなくなりお上りさんの私が歩いて良いのだろうかと思うほど。
龍子記念館に行った市の出来事でした。(でも道に迷って辿り着けず)
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Unknown (りお)
2020-06-03 09:49:40
高陽のあたりは官公庁勤めの人が多く住んでいるイメージです。
以前高陽青柳町に住む友人宅に車で行ったとき、道の細さと一方通行の複雑さで大変な思いをしました。冬の季節、雪があるときには車で行きたくはないなと思ってしまいました。
ところで、本文にはGoogleの地図に加筆したような記載がありますが、画像がないようです。添付忘れでしょうか?
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