秋田市中心市街地の再開発を巡って、日赤病院跡地がドーノ、県立美術館移転がコーノと、各方面で喧々囂々、侃々諤々の議論になっている。
僕としては、中心市街地は身近ではあるがあまり具体的な思い入れがなく、どうすればいいのか考えが思い浮かばない。どんな形であれ、おカネの無駄遣いにならず、地元の人も旅行者も楽しめて賑わいのある、秋田県の代表駅の駅前にふさわしい街になってほしい。
そういうわけで、再開発の「計画」については記事にするつもりがなかったが、その事業の1つである「タウンビークル」についてだけは、当記事で取り上げたい。
以下、僕の記憶で書いている部分もあるので、誤認識等があればご指摘ください。
1.「タウンビークル」とは
中心市街地を循環する乗り物として、秋田市は「仲小路タウンビークル」運行を計画している。
「ビークル(Vehicle)」は気軽な乗り物といったような意味合いかと思うが、「タウンビークル」は耳慣れない言葉で、ネットで検索してもよく分からない。秋田市による造語だろうか?
秋田市の資料などを総合すると、
1)車両は低床・小型・電気式(バッテリー駆動)バスを使用。
2)秋田駅から中心市街地にかけて循環運行する。
3)運賃は無料で、運行経費は駐車場の収益を充てる。
といった概要。
2.個人的におかしいと思う点
まずは、上記を受けて、僕が個人的におかしいと思う点を以下に挙げてみる。
数年前に秋田市がパブリックコメント(意見公募)を実施した際にも、ほぼ同じ内容を提出したが、公表された結果よれば、僕と同じ点を指摘されている方が複数おられた。
1)なぜ「電気式」バスなのか?
秋田市は異常に「電気式」バスにこだわっていると感じてしまう。たしかに環境負荷は少ないし、将来的にはスタンダードになるだろう。
でも、現時点では技術が円熟していないし、車両価格も高価だろう。(先月、北陸電力が富山市内で実証試験を行ったが、それと同種のものだろうか。映像では日野ポンチョを改造したものに見えた)
取りあえずはハイブリッド式でもディーゼル式でもいいじゃない。路線バス車両を借りたっていい。いずれにしても自家用車をちょこちょこ乗り回すよりは環境負荷は少ないだろうから。
2)運行エリア・ルートが中途半端
駐車場との絡みなのか、運行エリアが狭い。
当初(パブリックコメント時)は「秋田駅~仲小路~日赤病院跡地」で折り返すようなごく短いルートだったが、パブリックコメントの結果を受けてか、今朝の新聞記事(後述)では、「駅~広小路~通町橋~ニューシティ前(間もなく解体されるけど)~中央通り~駅」と、若干経路が延びている。(でもこれじゃあ仲小路を通らないから「“仲小路”タウンビークル」とは言えないんじゃない?)
それにしたって、冬期間や足腰の悪い方はともかく、この程度なら待つより歩いた方が早いかもしれない。既存のバス路線とも競合するので、あまり存在意義が見いだせない。
以前、僕が“妄想”したような、既存路線と競合しない「バス空白エリア」を中心に運行することはできないのだろうか。
3)無料でほんとにやっていける???
今でさえ、駐車場が有料なのを敬遠して、秋田駅前に出掛けない人は多い。よほど魅力的な再開発をしないと、駐車場収入が増えないのではないだろうか。
ましてその儲けをバス運行に充てるなんて。本当に大丈夫?
タウンビークルに乗る側にしても、タダでは気が引ける。100円程度の運賃を徴収したらいいのではないだろうか。その上で、商店で買い物した客には無料乗車券を渡すとかすればいいだろう。
3.「無料買い物バス」の失敗を忘れたの?
上の項目の続きだが、「秋田市街地の無料循環バス」といえば、僕は1997~1998年に秋田商工会議所が「無料買い物バス」なるものを試験運行していたのを思い出す。
確か30分間隔の運行で、駅→広小路→竿燈大通り→大町西交差点→通町→ニューシティ→中央通り→駅というルートで、やたらと時間がかかった記憶がある。
何がいけなかったのか知らないが、試験運行のみで終わってしまった。
次の項で触れるが、同時期に循環バスを試験運行していた弘前市では、後に本格運行になり、現在まで運行され続けている。それと比較すれば、秋田市の無料買い物バスは「失敗」だったと言わざるを得ないと思う。
秋田市で再び計画されている無料バスであるタウンビークルが、(運営主体などは違うけれど)無料買い物バスの二の舞になりそうな気がしてしまうのは僕だけだろうか。
車を使わなくていいまちづくりという点では大いに賛同できるから、電動車と無料へのこだわりを捨て、ルートを見直せば、成功する確率が高くなると思うのだが…
4.弘前を見習え
循環バスについては、鳥取市の「くる梨」を見習えと以前アップしたが、もう1つ、青森県弘前市が非常に参考になると思う。(以下の経緯はWikipediaによる)
秋田市で無料買い物バスが消えたのと前後する1998年9月、弘前商工会議所が「土手町循環100円バス」の試験運行を始めた。
弘南バスの小型バスが20分間隔で、駅・土手町商店街・大学病院・弘前市役所・弘前公園などを回るルート。
乗客からは1回100円を徴収し、不足分を商工会議所が補助していたと思われる。
試験運行開始からわずか半年後の1999年4月からは、収支が良好なため商工会議所の補助なしの弘南バスの正式な路線となり、2002年4月からは10分間隔に増便されて、現在に至っている。
増便後は中型バスも使用されるが、古い車が多い
さらに、弘南バスでは、弘前駅の裏側(城東地区)でも100円の環状バスを運行し、住民やさくら野弘前店(旧弘前ビブレ)の買い物客に利用されている。
城東環状バスは新しい車両
運行開始から11年も経つわけだが、最終便の繰り上げはあったものの大幅な変更点はなく、弘前市民にはすっかり定着し、観光客の利用も多い。
弘前市は観光地であるが、人口20万人に満たない、秋田市より小さな街。
その街で土手町循環バスが10分間隔で運行して商売が成り立っているというのは、すごいことだと思う。しかも、おそらく行政が関わらずに、商工会議所の助けも借りずに、バス会社だけでやっている。
沿線に商店街・病院・観光地・市役所など、多くの施設があることもあるだろうし、運行する弘南バスの企業努力もあるだろう。
車両がボロっちいとか、同社の一般路線バスと倍近い運賃差が生じているとか、気になる点もなくはないが、秋田は大いに弘前を見習うべきではないだろうか。
ほかにも、秋田県内では五城目町や鹿角市で新たに循環バスが運行されるそうだ。
ダイヤ(本数や曜日)、運賃(200円程度)などはともかく、秋田市より小さい町にどんどん先を越されていってしまっている。
5.「社長として反対」は分かるけど
昨日、秋田商工会議所などの代表が、行政に対して「中心市街地を計画通りに再開発してね」と要望した。
それに関する報道で、一部新聞(魁と毎日)が会見において商工会議所会頭がタウンビークルに反対の意志を示したことを取り上げていた。
秋田商工会議所の会頭は、秋田市などで路線バスを運行するバス会社の社長が務めている。
商工会議所の会頭としてはコメントしないが、バス会社社長としてはタウンビークルに反対。既存交通機関の経営を圧迫するとともに、財源が不安定で問題があるから。
という考えのようだ。
おおむね僕も同感だ。ただ、さらに会頭さんでなく社長さんは、
魁によれば、
「民間でもできる仕事を行政がやる必要はない」と言ったそうだ。
でも、僕に言わせれば、あなたのバス会社は「仕事ができていません」よ。
だから行政がやろうとしてるのかもよ(?!)。(無料という点は僕も疑問だけど)
もう細かく書く気もないが、秋田市の路線バスがこの会社でなかったら…と思ってしまうことが何度も何度も何度もある。
また、毎日によれば、
「行政が無料バスをやること自体問題。会社として100円バスはできるかもしれない」ともおっしゃった。
おぅ! だったら100円バスをやってもらおうじゃないの!!
でも「かもしれない」ってのが頼りないね。弘南バスを見習ってください。御社よりは小規模な企業でしょうけれど、11年前からやってますので。
何度も言うが、我々一般人は、もっと公共交通に関心を持ち、利用しなければならないし、自治体や国も支援をしてほしい。そしてもちろん、バス会社には人一倍がんばってほしい。現状では秋田市のバス事業はこの会社に頼るしかないんだから。
例によってあまり期待しない方がいいのかな。「かもしれない」だからねぇ。
※2011年10月の社長のインタビューではこんな感じです。
僕としては、中心市街地は身近ではあるがあまり具体的な思い入れがなく、どうすればいいのか考えが思い浮かばない。どんな形であれ、おカネの無駄遣いにならず、地元の人も旅行者も楽しめて賑わいのある、秋田県の代表駅の駅前にふさわしい街になってほしい。
そういうわけで、再開発の「計画」については記事にするつもりがなかったが、その事業の1つである「タウンビークル」についてだけは、当記事で取り上げたい。
以下、僕の記憶で書いている部分もあるので、誤認識等があればご指摘ください。
1.「タウンビークル」とは
中心市街地を循環する乗り物として、秋田市は「仲小路タウンビークル」運行を計画している。
「ビークル(Vehicle)」は気軽な乗り物といったような意味合いかと思うが、「タウンビークル」は耳慣れない言葉で、ネットで検索してもよく分からない。秋田市による造語だろうか?
秋田市の資料などを総合すると、
1)車両は低床・小型・電気式(バッテリー駆動)バスを使用。
2)秋田駅から中心市街地にかけて循環運行する。
3)運賃は無料で、運行経費は駐車場の収益を充てる。
といった概要。
2.個人的におかしいと思う点
まずは、上記を受けて、僕が個人的におかしいと思う点を以下に挙げてみる。
数年前に秋田市がパブリックコメント(意見公募)を実施した際にも、ほぼ同じ内容を提出したが、公表された結果よれば、僕と同じ点を指摘されている方が複数おられた。
1)なぜ「電気式」バスなのか?
秋田市は異常に「電気式」バスにこだわっていると感じてしまう。たしかに環境負荷は少ないし、将来的にはスタンダードになるだろう。
でも、現時点では技術が円熟していないし、車両価格も高価だろう。(先月、北陸電力が富山市内で実証試験を行ったが、それと同種のものだろうか。映像では日野ポンチョを改造したものに見えた)
取りあえずはハイブリッド式でもディーゼル式でもいいじゃない。路線バス車両を借りたっていい。いずれにしても自家用車をちょこちょこ乗り回すよりは環境負荷は少ないだろうから。
2)運行エリア・ルートが中途半端
駐車場との絡みなのか、運行エリアが狭い。
当初(パブリックコメント時)は「秋田駅~仲小路~日赤病院跡地」で折り返すようなごく短いルートだったが、パブリックコメントの結果を受けてか、今朝の新聞記事(後述)では、「駅~広小路~通町橋~ニューシティ前(間もなく解体されるけど)~中央通り~駅」と、若干経路が延びている。(でもこれじゃあ仲小路を通らないから「“仲小路”タウンビークル」とは言えないんじゃない?)
それにしたって、冬期間や足腰の悪い方はともかく、この程度なら待つより歩いた方が早いかもしれない。既存のバス路線とも競合するので、あまり存在意義が見いだせない。
以前、僕が“妄想”したような、既存路線と競合しない「バス空白エリア」を中心に運行することはできないのだろうか。
3)無料でほんとにやっていける???
今でさえ、駐車場が有料なのを敬遠して、秋田駅前に出掛けない人は多い。よほど魅力的な再開発をしないと、駐車場収入が増えないのではないだろうか。
ましてその儲けをバス運行に充てるなんて。本当に大丈夫?
タウンビークルに乗る側にしても、タダでは気が引ける。100円程度の運賃を徴収したらいいのではないだろうか。その上で、商店で買い物した客には無料乗車券を渡すとかすればいいだろう。
3.「無料買い物バス」の失敗を忘れたの?
上の項目の続きだが、「秋田市街地の無料循環バス」といえば、僕は1997~1998年に秋田商工会議所が「無料買い物バス」なるものを試験運行していたのを思い出す。
確か30分間隔の運行で、駅→広小路→竿燈大通り→大町西交差点→通町→ニューシティ→中央通り→駅というルートで、やたらと時間がかかった記憶がある。
何がいけなかったのか知らないが、試験運行のみで終わってしまった。
次の項で触れるが、同時期に循環バスを試験運行していた弘前市では、後に本格運行になり、現在まで運行され続けている。それと比較すれば、秋田市の無料買い物バスは「失敗」だったと言わざるを得ないと思う。
秋田市で再び計画されている無料バスであるタウンビークルが、(運営主体などは違うけれど)無料買い物バスの二の舞になりそうな気がしてしまうのは僕だけだろうか。
車を使わなくていいまちづくりという点では大いに賛同できるから、電動車と無料へのこだわりを捨て、ルートを見直せば、成功する確率が高くなると思うのだが…
4.弘前を見習え
循環バスについては、鳥取市の「くる梨」を見習えと以前アップしたが、もう1つ、青森県弘前市が非常に参考になると思う。(以下の経緯はWikipediaによる)
秋田市で無料買い物バスが消えたのと前後する1998年9月、弘前商工会議所が「土手町循環100円バス」の試験運行を始めた。
弘南バスの小型バスが20分間隔で、駅・土手町商店街・大学病院・弘前市役所・弘前公園などを回るルート。
乗客からは1回100円を徴収し、不足分を商工会議所が補助していたと思われる。
試験運行開始からわずか半年後の1999年4月からは、収支が良好なため商工会議所の補助なしの弘南バスの正式な路線となり、2002年4月からは10分間隔に増便されて、現在に至っている。
増便後は中型バスも使用されるが、古い車が多い
さらに、弘南バスでは、弘前駅の裏側(城東地区)でも100円の環状バスを運行し、住民やさくら野弘前店(旧弘前ビブレ)の買い物客に利用されている。
城東環状バスは新しい車両
運行開始から11年も経つわけだが、最終便の繰り上げはあったものの大幅な変更点はなく、弘前市民にはすっかり定着し、観光客の利用も多い。
弘前市は観光地であるが、人口20万人に満たない、秋田市より小さな街。
その街で土手町循環バスが10分間隔で運行して商売が成り立っているというのは、すごいことだと思う。しかも、おそらく行政が関わらずに、商工会議所の助けも借りずに、バス会社だけでやっている。
沿線に商店街・病院・観光地・市役所など、多くの施設があることもあるだろうし、運行する弘南バスの企業努力もあるだろう。
車両がボロっちいとか、同社の一般路線バスと倍近い運賃差が生じているとか、気になる点もなくはないが、秋田は大いに弘前を見習うべきではないだろうか。
ほかにも、秋田県内では五城目町や鹿角市で新たに循環バスが運行されるそうだ。
ダイヤ(本数や曜日)、運賃(200円程度)などはともかく、秋田市より小さい町にどんどん先を越されていってしまっている。
5.「社長として反対」は分かるけど
昨日、秋田商工会議所などの代表が、行政に対して「中心市街地を計画通りに再開発してね」と要望した。
それに関する報道で、一部新聞(魁と毎日)が会見において商工会議所会頭がタウンビークルに反対の意志を示したことを取り上げていた。
秋田商工会議所の会頭は、秋田市などで路線バスを運行するバス会社の社長が務めている。
商工会議所の会頭としてはコメントしないが、バス会社社長としてはタウンビークルに反対。既存交通機関の経営を圧迫するとともに、財源が不安定で問題があるから。
という考えのようだ。
おおむね僕も同感だ。ただ、さらに
魁によれば、
「民間でもできる仕事を行政がやる必要はない」と言ったそうだ。
でも、僕に言わせれば、あなたのバス会社は「仕事ができていません」よ。
だから行政がやろうとしてるのかもよ(?!)。(無料という点は僕も疑問だけど)
もう細かく書く気もないが、秋田市の路線バスがこの会社でなかったら…と思ってしまうことが何度も何度も何度もある。
また、毎日によれば、
「行政が無料バスをやること自体問題。会社として100円バスはできるかもしれない」ともおっしゃった。
おぅ! だったら100円バスをやってもらおうじゃないの!!
でも「かもしれない」ってのが頼りないね。弘南バスを見習ってください。御社よりは小規模な企業でしょうけれど、11年前からやってますので。
何度も言うが、我々一般人は、もっと公共交通に関心を持ち、利用しなければならないし、自治体や国も支援をしてほしい。そしてもちろん、バス会社には人一倍がんばってほしい。現状では秋田市のバス事業はこの会社に頼るしかないんだから。
例によってあまり期待しない方がいいのかな。「かもしれない」だからねぇ。
※2011年10月の社長のインタビューではこんな感じです。
でもこの便利さがあだになることがあります。なぜならどこまで行っても料金は同じですから、今まで近くの商店で買い物をしていた人が遠くの大型店に行くようになったり、遠くの総合病院に通うようになったりして、逆に商店街が寂れる場合があるんです。
秋田市の無料買い物バスでもこの現象が起こって、 “一部の大型店ばかりが得をしている”という理由でやめてしまったらしいです。
今はようやく「そんなこと言ってられない」と思い始めたのか、循環バスを走らせようとしていますが、成功させるにはルートと料金設定に十分注意するべきだと思います。
循環バスにより、お客がさらに大型店に流れてしまうという弊害は起こり得るかもしれません。
ただ、秋田市ではダイエーもヨーカドーも撤退する今、“流れる先の大型店”が中心市街地にあるでしょうか? むしろ、車を持たない学生やお年寄りが日常の買い物に行く手段がなくて困っている状況です。また、バス停のない中通総合病院に行くのに、新屋線を大町五丁目停留所で降りて、南大通りを1キロ弱歩いている年配の方がいらっしゃるそうです。
そういう人の足として、気軽な循環バスがあればいいと思っています。
また、かつては秋田駅前のジャスコ、マルサン、大町のダイエーなどの大型店と地元商店が共存していましたから、工夫次第ではないでしょうか。
当ブログでは、「定額制」で「市街地を循環」するバスを、ひとくくりにしてしまっていますが、法律上や学術的には「コミュニティバス」「一般路線バス」などに分類され、性格が異なるようです。
それを踏まえると、秋田市の考えているタウンビークルと、ここで述べている循環バスでは性格が異なるのかもしれません。いずれにしてもお客が乗ってこそ交通機関と言えるのですから、詳細を充分に吟味してほしいものです。
一部の大型店に客を取られる弊害があるというのは知りませんでしたが、なんとか知恵を絞って、低料金のタウンビークルが街中を走るようになればいいですね。
行政・商工関係者・バス会社、そして消費者・利用者の意思疎通を充分にして、しっかりした仕組みを作ってほしいものです。