広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

芽吹きが遅い木

2010-06-11 20:08:02 | 動物・植物
千秋公園ではハナショウブ(?)が咲き始めた。
6日撮影
木々の緑も濃くなり、新緑から深緑へ変わった。


ところが…
雄物川にかかる秋田大橋たもとの植栽(5日撮影)
松の間に挟まれた木にご注目。
まだ葉っぱが出たばかり
今年は春が遅かったせいもあるが、北国秋田とはいえ海沿いの平地の秋田市において、6月に入ってもまだ葉が開ききっていない木がある。

この木なんの木?

その後、晴天と高温が続いたせいか、昨日(10日)にはだいぶ葉が出ていた。
まだ“若葉”といった感じ
葉っぱを見てお分かりの方もいらっしゃると思うが、この木は「ネムノキ」。

このように、ネムノキはかなり芽吹きが遅い。ほかにもムクゲ、サルスベリなど比較的遅く芽を出す木はいくつかあるが、今年の状況を見ると、ネムノキがとりわけ遅い。
「ネムノキ」の和名の由来は、暗くなると葉を閉じてたたむ姿を「眠っている」ことに例えたものだが、「冬眠からなかなか目覚めずお寝坊」という意味でも「ネムノキ」と言えるかもしれない。

※芽吹きが遅い他の木についてはこちら(リンク先後半)



大きなお世話だけど、早く葉っぱを出して光合成を始めた方が有利なのに、なんでネムノキはモタモタしてるんだろう。

ネムノキの仲間は150種ほどある(オジギソウもかな)そうだが、熱帯・亜熱帯地域に分布するものが多い。
「♪この木なんの木、気になる木」でおなじみの「日立の樹」(1975~1979年、1984年以降放送分)も、ハワイ・オアフ島にある「アメリカネム(モンキーポッド)」という類縁の種。大きさはかなわないが、葉っぱや花は日本のネムノキに似ている。

そんな中、ネムノキは耐寒性が強く、東南アジアから温帯である日本の東北地方北部まで分布するそうだ。
秋田は北限に近いわけだが、ネムノキにとっては秋田の春なんかまだ冬だと感じてまだ葉っぱを出さず、我々が初夏だと感じる頃になってやっと春が来たと感じて芽吹くのかもしれない。
あるいは、川原や荒れ地など、日当たりのいい所に自生する種だから、無理して早々と葉を開かなくても短期間で充分生長できるということもあるかもしれない。
昨年の竿燈まつりの頃撮影
芽吹きから2か月もしないうちに、葉っぱは大きく、濃くなり、美しい花も咲く。

僕はネムノキが好き。
柔らかな葉っぱ、淡いながらも存在感のある花、優しい雰囲気がする木だから。

秋田大橋たもとのネムノキは、2001年の架け替え後の周辺整備で、新屋・茨島両岸の小公園にそれぞれ数本のネムノキが植えられた。
秋田県内各地の山野などに自生する(花が咲かないと気付かないが)し、松尾芭蕉が「おくのほそ道」で訪れた最北の地である秋田県象潟(きさかた。現にかほ市象潟地区)で詠んだ「象潟や雨に西施がねぶの花」が有名で、それにちなんでにかほ市の花や道の駅の愛称(ねむの丘)になっている。また秋田市立秋田南中学校の校歌(江口榛一 作詞)の歌詞にも登場し、秋田の人にとってなじみのない木ではないと思う。
広い木陰を作り、葉っぱの掃除が楽なように思えるから、街路樹にしてもいいと思うんだけど、「ネムノキ並木」は見たことがない。(象潟にはあるようですが、秋田市周辺でどこかご存じでしたら教えてください)もっと身近でネムノキを見てみたい。


以下は余談です。
ネムノキやオジギソウは、現在は「ネムノキ科」に分類するのが一般的だが、かつては「マメ科」に属していた。ということで、マメ類と共通する点がある。
例えば、インゲンマメ(写真はつるなし品種の「サクサク王子」)。
  
同じ株を日陰・日向(真昼)・夜に相当する環境で撮影したもの
太陽の高さに対応するかのように、葉っぱが上下しているのが分かる。暗い場所では、葉っぱが下を向いていて、ネムノキ同様「閉じている」とも言えそう。
【12日補足】暗所/明所を移動しただけで単純に葉が開閉するわけでもない。明るさのほかに体内時計(概日リズム)のような周期性も葉の動きに関わっているようだ。

違う角度から撮影(夜)
赤い矢印で示した、葉の付け根の膨らんだ「葉枕(ようちん)」という部分が変化することで、葉っぱが動く。ネムノキ類も同じ仕組みで葉が開閉し、「就眠運動」と呼ばれている。

動かないと思っている植物が動くと、より愛着を感じてしまうものだが、インゲンの場合、就眠運動をするのは若い頃だけ。
そしてマメ類でもエダマメ(ダイズ)は就眠運動するが、エンドウはまったくしない。進化の過程で一部の種だけが身につけた能力なのだろうが、不思議。
コメント (2)
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