Sketch of the Day

This is Takeshi Kinoshita's weblog.

Flash Flood

2005-02-24 | Japan
2005.02.24.Thu
*タム地域環境研究所の石井さん、林君と見沼田圃プロジェクトの打合せ。
*打合せ終了後、造園学会に論文を提出。雨に降られる。

*行き帰りの電車で、吉川勝秀『人・川・大地と環境 自然共生型流域圏・都市に向けて』技報堂出版,2004 を読みふける。面白い本ではないが勉強にはなる。基礎知識として。

メモ:欧米とアジア・モンスーン地域における治水に対する考え方の違いとその背景
・欧米では基本的に治水の問題は洪水の危険がある場所に進出した個人の問題であり、国や連邦の管理下にはない(ただし、国土を堤防で守っているオランダや伝統的に州の管理下にあるドイツの一部地域を除く)。舟運を除く川の管理は(地方)自治体が行い、国によっては民有河川も珍しくない(イギリスなど)。国による直轄管理、国が治水についての全面的な責任を負う日本とは考え方が根本的に異なる。

・アメリカのミシシッピ川では、氾濫原での開発は他に代替案がない場合以外は避けること。開発が行われる場合は、雨水を自然又は人工の貯水池で貯留しポテンシャル・ダメージを減少させること。次に氾濫原での建築物・施設を耐水化すること。堤防や洪水壁はそれらの対策の後にはじめて建設すること、という土地利用の原則がある。その主体は基礎自治体、州政府である。やはり連邦政府が大きく関わらない点は欧州と同様であり、日本の治水に対する考え方とは異なる。

・以上の違いの背景として、アジア・モンスーン地域の大都市は大河川の氾濫原に立地する(洪水の被害多し)ケースがほとんどなのに対して、欧米の大都市は氾濫原に立地するケースは希である(河川は掘り込みで都市は河岸の高台に立地)。すなわち欧米の都市はアジア・モンスーン地域の都市と比較して洪水の被害が少ない。ちなみに、日本人口の50%、資産の75%が氾濫原に立地している。このため、氾濫原の洪水による社会・経済的損害は欧米とは比較にならない程大きい。

・では、何故にアジア・モンスーン地域の大都市は氾濫原に立地するケースが多いのか。1つには水系を基盤とする稲作農耕社会を起源としていること。それから、日本の場合には可住地が国土面積の20%に満たないこと等が挙げられる。

出典:吉川勝秀『人・川・大地と環境 自然共生型流域圏・都市に向けて』技報堂出版,2004