Sketch of the Day

This is Takeshi Kinoshita's weblog.

日本の歴史公園100選

2006-11-28 | Japan
都市公園法施行50周年を記念して社団法人公園緑地協会が日本の歴史公園100選を選定した(現在二次募集中)。高く評価される試みと言えるが、僕はこのような公園の価値のとらえ方に加えて、公園そのものの「歴史性」や「デザイン」に目を向けるというやり方があると思う。進士先生はかつて「史跡や古墳などを造園的に包んだ歴史公園ではなくて、日比谷公園や震災復興公園など公園そのものの文化性や歴史性の保全を第一義とした新しい公園の種別」として「歴史的公園」という概念を提唱した。まさにこれである。付け加えるなら、公園そのものの歴史性や文化性を反映したデザインを評価の対象とする見方である。しかし、そのためには公園のデザイン史研究が不可欠である。公園の中に歴史的資源があるかないかではなく、公園のデザインそのものに歴史的価値があるかどうか、そこに目を向ける必要がある。

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2006-11-26 | Japan
月曜午前、「地域環境管理論」の講義(5週目)。日本におけるアーバニズムとランドスケープの関係(その1)と題し、公共という制度とランドスケープ、都市の復興とランドスケープ、緑地概念の導入と都市の管理について解説。午後、「環境デザイン実習I」の7週目。

火曜午後、大学院生のD論予備審査。終了後、修論ゼミ。水曜午前、大学院前期課程の授業「都市環境学特論2」の初回。事情により開始が遅れてしまったが、講義ではなく演習的性格の授業で、今年は巣鴨地蔵通りのランドスケープデザイン・ガイドラインの検討を行うことにした。午後は「環境デザイン実習V」の6週目。

金曜午前、博士課程の留学生とD論予備審査打合せ。土曜午後、造園学会企画委員会出席。造園専門教育課程適格認定の制度化に向けた検討。来年も分科会は存続とのことで、また企画書を準備しなければならない。来年の全国大会は日大湘南キャンパス。リブロで来年の手帳を買って帰宅。

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2006-11-21 | Japan
月曜日。「地域環境管理論」の講義(4週目)。欧米におけるアーバニズムとランドスケープの関係(その2)。〈環境〉に接続されるランドスケープ、経済活動としてのランドスケープ、ランドスケープ・アーバニズムとは何か?について解説。特に欧州のランドスケープシーンを見るにつけよく感じることなのだが、日本でのランドスケープのコンテクストは依然「自然保護・保全」のレベルに止まっているように感じられてならない。しかし、欧州ではそんなこと前提であって、その先に「経済の活性化」が目論まれていることが多い。日本だと、「ランドスケープで経済の活性化? 逆でしょ!」てな感じだが、欧州はその点ある意味で露骨である。ランドスケープへの投資は長い目で見て地域経済に跳ね返ってくる、と認識されている。例えばランドスケープの改善によって、居住人口が増える、有力企業が立地する、自治体の税収が増える、資産価値が上がる等々、これぞ都市・地域再生である。行政のレポートをみてもランドスケープのポリシーとしてこのようなことがちゃんと謳われている。こういうのを見るにつけ、日本ではランドスケープは立ち位置としてはまだまだ「アンチ経済」の部類だなぁと思うわけである。生物多様性じゃあ(もちろんそれも大事だが)メシは食えない。

午後は「環境デザイン実習I」の6週目。昨年に引き続き、「Sitting on the UK」と題してスライドショウを行う。撮りためた膨大なイギリスの写真コレクション(未だに整理が追いついていない)の中から、「座る」をモチーフに50枚ほどの写真をピックアップ、披露した。ベンチが成立する文化的コード=イギリスの物乞いは絶対に公共のベンチに腰掛けない。それどころか公園ではついぞ一度たりとも物乞いを見かけることはなかった。イギリスの公園とはそのような文化装置なのである(意味わかりますか)。日本でこんなこと公言したらたちまち人権保護団体からクレームが来る。

火曜日。「都市公園の〈保存〉」と題する小文が「公園緑地」誌都市公園法施行50周年特集号(Vol.67 No.4, 2006)に掲載されました。公園法50周年にうかれている場合ではないこと(人口減少社会において土地を自然に帰すための都市公園の可能性)、歴史的都市公園の登録・保存制度の必要性について指摘。学生さんからLDSE2006(関東学生ランドスケープデザイン作品展2006)のチラシとインビテーション。会場はなんとBankART Studio NYK。いいとことれたなぁ。おまけにタカハシさん(マスターピース代表)とヤマウチさん(東風意匠計画代表)がゲストクリティック。昨年の初回の同イベントにゲストとして呼んでいただいたことを思い出す。継続できてなにより。関東のラ系学生作品展はどこぞやのように「やらせ」ではなく、学生主導であることを僕は高く評価している。

水曜日。次回日本造園学会企画委員会の準備で、海外におけるランドスケープの資格教育の認証システムについてリサーチをかける。それにしても今回の学校教育法の改正に伴って導入された大学機関別認証評価制度というのは矛盾に満ちあふれている。「評価」は手段のはずだが日本の場合、どうも目的化しているきらいがある。設置審査(事前評価)と認証評価(事後評価)の関係も非常に曖昧だ。さらに、大学や部局の独自性や個性が評価されにくい状況にある。ロースクールの認証評価機関を除き、個別の「モノサシ」が全く用意されていないからだ。差しあたり日本の課題は、米国ASLA、英国LIのようなランドスケープ・アーキテクト資格教育の認証機関(分野別適格認定)の存在とその制度化だろう。午後、「環境デザイン実習V」(5週目)。新川耕地の景観資源・景観構造のスタディ。

木曜日。研究生のミゾグイさんと四方山話(いや研究打合せ)。故ダン・カイリー氏の秀作「North Carolina National Bank Plaza」(フロリダ州タンパ)を題材に、名作あるいはマスターピースと評価された作品の劣化・改修とその要因について検証した興味深いエッセイ「The Life and Death of a Masterpiece」(Landscape Architecture, Vol.94, No.4, 2004, ASLA)について意見交換。このエッセイでは、維持管理の方法や主体についてあいまいなまま供用が開始されてしまった点を指摘しつつも、カイリーのデザイン自体にも「問題」があったことを必ずしも否定しない。植栽密度や植栽基盤造成上の技術的な欠陥等々である。

マスターピースと称された作品あるいは各種学会賞等の受賞作品の現在(いま)をモニタリングしておくことは重要なことである。オリジナルプランが存続している場合とその理由、マイナーチェンジが加えられた理由、大幅に改修されてしまった理由等々。さらには、改修されたのは、維持管理に問題があったのか、デザインに問題があったのか、それ以外の不可抗力的な要因によるのか等々。あるいは、オリジナルプランの存続は偶然の産物なのか、意図的な結果なのか。

「(偶然)残ったデザインとその理由」を知りたいわけではなく、「(意図的に)残すべきデザイン」とはどのようなデザインであり、「残していくためのてだてやしくみ」を知りたいのだ。当然、その裏返しとして、ぶっ壊されやすいデザイン(ぶっ壊すべき拙いデザインも含めて)とはどのようなものか(あるいはどのようなプロセスを経てそれが決定されるのか/されるべきか)、その一般的傾向をつかみたい。この辺が実に曖昧なまま、残すべきランドスケープがぶっ壊され、その一方ですぐにぶっ壊されそうなランドスケープが生産され続けているような気がする。

金曜日。修論ゼミ。留学生が関東大震災の東京市震災復興三大公園の変遷を調べている。それにしてもすごい変わりようである。時代の要求に応じて施設(箱物を含む)が充填され、オリジナルプランの構成・構造がズタズタに改変されていくさまが手に取るように理解できる。僕にはどう見てもオリジナルプランのデザインのほうが優れているように見えるのだが、むろん時代の要求というものは無視できない。とは言え、問題があるなと思うのは、改修にあたってオリジナルプランというものをどう位置づけるか、残すべきところはどこでその理由は何か、あるいは改修すべきところはどこでその理由は何か、こうした議論が図面を見る限りほとんど理解不能である(もちろん全くなかったとは思わないが)。行き当たりばったりのデタラメそのものである。思うに、人口が減少し始め、様々な施設機能が公園以外の施設に期待できるようになった今日、公園改修の選択肢の一つとして優れたオリジナルプランの「復元」ということを真剣に考えてもよいのではないかと個人的には思っている。

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2006-11-11 | Japan
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月曜日。「地域環境管理論」の講義(3週目)。「欧米におけるランドスケープとアーバニズムの関係(その1)」と題して、都市に取り込まれるランドスケープ、インフラストラクチュアとしてのランドスケープ、ビルディングタイプとしてのランドスケープについて解説。批判されがちな近代主義であるが、その揺籃期の理念にはランドスケープ的な思想が確実に散見される。午後、流山市の方がみえ、流山新川耕地有効活用のための幹事会事前打ち合わせ。終了後、「環境デザイン実習I」(3週目)。

水曜日。3年次生クラス担任主催による「就職説明会」の開催。来週頭に予定されているJABEE中間審査の準備の都合で午後の授業(環境デザイン実習V)を休講にさせてもらう。しかし、JABEEのために授業を休講というのはなんだか本末転倒だ。受講生の皆さんご迷惑をおかけします。

木曜日。教授会。JABEE審査が近づく。今年はJABEEの受審準備のための学生アルバイトの予算を付けていただいたので、学生さんを動員して集中的に準備作業を進める。JABEEを経験して痛感したのは何にもまして「エヴィデンス」が重要であるということ。そのためには日頃から記録と保管を怠らないということ。しかし、より重要なことはそれら証拠資料が今後の教育活動に有効に活用されていくことだが、現状では「活用」よりも「準備」に忙殺されている感じ。これをいかに逆転させるかが課題。

金曜日。午後からJABEE中間審査実地審査会場の設営。夕方、受審に向けた最終打合せ。夜は今年度初回の「緑の応用実学セミナー」。ランドスケープとその周辺分野で活躍中の卒業生等をお招きし、卒業後のご経歴やお仕事をご紹介していただく中で、学生さんの専門的職能にたいする動機付けをねらったイベントで、今年で5年目を迎える。当初より学生さん主導で講師の人選やセミナーの企画運営を行ってきた。今回の講師は住宅地のランドスケープ計画を中心に数々のプロジェクトを手掛けてこられたカミカワさん。

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月~火曜日。JABEE緑地環境学プログラム中間審査実地審査初日。2名の審査チームの先生方をお迎えし資料説明と質疑応答。初日の審査を無事終わるも、帰宅してどうも調子が悪いので検温すると39度を超す熱。ヤバイ。。。夕食を済ませ早々に就寝。果たして翌朝も熱が全く下がらず、やむを得ず同僚の先生方に二日目の審査をお任せし僕は休ませていただくことに。。。無念、というか不注意というか。夜、審査無事終了の報を聞きホッと胸をなで下ろすが、できればその場にいたかった。熱は結局木曜日まで尾を引くことに。土曜日。造園学会から携帯に電話が入る。研究発表論文の査読結果を早く提出しろとの由。既にほとんど完了していた報告書をメイルで事務局宛送る。日曜日もボーっとしながら休日出勤で科研の申請書を仕上げる。

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月曜日。朝早く科研の申請書を提出し、その足で流山市役所に移動。新川耕地有効活用計画策定のための幹事会に出席。午後はとんぼ返りで大学に引き返し、環境デザイン実習1(5週目)。火曜日。兵庫県大のサイトー先生が所用で大学に見え昼食をご一緒する。水曜日。環境デザイン実習V(4週目)。途中、避難訓練。先週の発熱以降、どうも体調がすぐれず、激しい咳と頭痛、微熱が続く。医者に行って薬をもらうがどうもすっきりしない。どうしても身体が動かず木曜日は休。金曜日。依然重たい身体を引きずって東大工学部へ。地域計画演習にて緑地計画のレクチャーをさせていただく(今年で2年目)。それにしても11月だっていうのに、この陽気は何だ。早く寒くなれ!土曜夜。東大農学部にて東アジア・ランドスケープ研究会研究打合せ。