Sketch of the Day

This is Takeshi Kinoshita's weblog.

樹林化する河川敷

2005-02-13 | Japan
2005.02.12
多摩川リバーミュージアムの研修会に参加。昨年より大学院の授業の一環にさせていただいている。今日のプログラムの目玉は、府中市郷土の森博物館地先の多摩川河川敷でGPSを使用した植生調査。エリアを決めて、貴重種のカワラサイコや外来種のウィーピングラブグラスを株単位でGPSを用いて測位するのだが、ミソはそれを市民参加でやる点。目に見える急激な環境変化は内容も理由もわかりやすい。しかし、知らぬ間にカワラノギクが激減していたとか、ケンタッキーグラスやハリエンジュが自生していたなどという河川環境の変化は、いつ頃どのようにして起きたのかを、事後に把握するのは極めて困難である。例えば、環境省が実施している「水辺の国勢調査」による植生図(縮尺1/50,000)等ではこのような変化を把捉することはほとんど不可能である。そこで、日常的に河川に接している地元住民や活動団体の出番というわけである。

市民にGPSを貸し出し、個体を発見ししだいその場でGPSで測位。同じことを半年後、1年後にまたやると、植生の変化を正確に把握できる。河川敷のように洪水(攪乱)が頻発する環境下で1年前と同じ場所や個体を同定するのは至難の業であるが、GPSで測位しておけば問題はない。個体レベルの確認以外にも、例えば、オギやツルヨシの群落の際に沿ってGPSで測位しながら歩くと、GPSの描く軌跡によって極めて小さな群落の分布状態を地形図や空中写真上に落とすことも可能である。この調査方法によると、いかに植生図(環境省)がいい加減であり、また河川敷の環境変動が激しいかが手にとるようにわかってしまう。それよりなにより、市民参加によって人海戦術的に広範囲をしかも定期的に調査でき、行政では難しい長期間の環境モニタリングが可能となる。現時点での課題は、機器類の操作(例えばGPSからPCへのデータ転送や処理)を簡略化し、誰もが簡単に調査が行えるようにすることである。