政府の報告は、委員会から昨年8月に出された質問への回答。回答は冒頭、昨年末に「日韓両政府は慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した」と説明した。

 その上で、日本政府は「1990年代初頭以降、慰安婦問題が日韓間における政治問題として取り上げられた際、事実関係に関する本格的な調査を行った」として、関係省庁の関連文書、米国国立公文書館での文献、関係者への聞き取り調査などを行ったが、強制連行は「確認できなかった」と説明した。

 元慰安婦らへの「償い金」などを支給した「アジア女性基金」の対象外となった中国や東ティモールなどの元慰安婦への補償や、加害者を訴追する意思については「ない」と回答。慰安婦問題の記述を教科書に復活させる意思があるかどうかとの問いに対しても「日本では国定教科書制度はとっていないため、個別具体の記述について政府として答える立場にない」とした。

 政府は2014年9月にも報告書を提出しているが、アジア女性基金への取り組みや歴代首相のおわびなどの説明にとどまり、間違った認識を正そうとする姿勢は見られなかった。今回の回答は日韓合意にもかかわらず、海外メディアでの報道ぶりが変わっていないことなどを踏まえた判断とみられる。

 また、その内容は事実関係に基づくもので、「国連など国際社会で互いに非難・批判することは控える」との日韓合意に反しないと判断したようだ。