牧師室だより 2011年9月18日 質問力
主イエスは弟子たちや論敵に対して、たびたび質問を投げかけています。これは、ユダヤ教の律法学者たちが伝統的に採用していた教授法で、質問を投げかけることによって相手に「気づき」を与え、正しい答えに導こうとするものです。イエスの弟子訓練の方法は、まさに対話と質問によるものだったのです。
そして今、主イエスの教授法があらゆる分野で用いられています。1970年代に米国で活躍したテニスコーチのティモシー・ガルウェイは、74年に画期的な本を著しました。それが、『インナーゲーム(The Inner Game of Tennis)』という本です。この本の中で彼は、「教える」よりは、「問いかけて気づかせる」方が効果的であると主張しました。「球をよく見ろ」と教える代わりに、「ネットを越える瞬間、ボールの回転はどうなっている?」と質問したのです。これは、別の見方でものを見ることを教えることによって、選手のやる気と興味を引き出すものです。
この本は米国のビジネス界でも注目を浴びるようになりました。それまでは、トップダウン経営が主流を占めていましたが、部下に絶対服従を命じただけでは、業績が拡大しないのです。どうしたら会社を大きくすることができるのか。悩める経営者たちが注目したのは、スポーツ選手の育成法でした。つまり、従業員の「気づき」にもっと目を向けようという運動が広がっていったということです。トヨタの「カイゼン」方式もその一つでしょう。
教育界では、伝統的にいかに良い問いかけをするかが、良い授業かどうかの生命線でした。「本をよく読め」というよりは、「主人公は大きく息を吸ってどこを見たのでしょう?」などと具体的に質問することによって、主人公の気持ちを考えさせるといった具合です。また、良い試験問題は、引っ掛け問題を作ることよりも気づかせる問題が良いとされます。
今、夜の祈祷会では、3~4つの質問を用意しておき、それに答えるという方法で聖書の学びをしています。毎回、質問作りに苦労しますが、いろいろな反応、答えが返ってきて新鮮な思いで学んでいます。日常会話でも「質問力」を活用してみましょう。
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