平塚にあるキリスト教会 平塚バプテスト教会 

神奈川県平塚市にあるプロテスタントのキリスト教会です。牧師によるキリスト教や湘南地域情報、世相のつれづれ日記です。

平和について考える

2010-08-02 07:13:05 | 牧師室だより

牧師室だより 2010年8月1日 平和について考える

 暑い8月は日本にとって平和を考える時でもあります。8月6日広島、9日長崎の原爆投下、15日敗戦。平和を考える時、いくつもの切り口、視点があります。今回は千円札の伊藤博文から考えていきたい。

 今は野口英世の肖像だが、以前の千円札には伊藤博文が印刷されていました。お札に肖像が載るのは、その人が日本を代表する人物、大功労者であると評価されているからです。伊藤博文は大日本帝国憲法を制定した中心人物で、首相、枢密院議長、貴族院議長などを歴任した近代日本を代表する政治家です。

 ところが、伊藤博文は、1909年、中国東北部(旧・満州)のハルビン駅で安重根(アンジュングン)に射殺されました。その安重根は、韓国・朝鮮では民族的英雄とされ、今でも尊敬され韓国の200ウォン切手に用いられ、また彼の書の掛け軸が多くの家庭に飾られています。しかし、彼のことは日本ではほとんど知られていません。私も10数年前、ソウルの安重根義士記念館を見学して、はじめて詳しく彼のことを知りました。

 なぜ伊藤博文は射殺され、なぜ安重根は射殺したのか。伊藤博文と安重根に対しての評価が、日本と韓国ではこんなに分かれてしまうのは何故でしょうか。今年は日韓併合100年です。ぜひ、この機会に歴史的事実と向き合っていただきたい。伊藤博文が一方で英雄と考えられ、他方では安重根が英雄とされる、このようなすれ違いこそ、日本と朝鮮の歴史の悲劇だということを考えなければならないでしょう。

 このようなすれ違いは他にもあります。原爆投下や真珠湾攻撃に対する米国と日本の見解の違い。中国や朝鮮、その他アジアの諸国に対する日本軍の行為に対する当事国と日本の見解の違い。このようなすれ違いをどのように受け入れ、和解していくかが戦後の日本の責任だと考えますが、政府は極めて消極的なように思われます。

*伊藤博文と安重根については『歴史をひらくとき――共に生きる世界』(編集・発行:外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会 2009)22-23pを参考にしました。