老人(としより)の目(『ある年寄りの雑感』)

「子どもの目」という言葉がありますが、「年寄りの目」で見たり聞いたり感じたりしたことを、気儘に書いていきたいと思います。

神の木、榊(さかき)

2013-02-06 11:49:00 | インポート
新年には、どこの家でも神棚に正月飾りと榊を供えると思う。信心深い家庭では、榊は正月に限らず年中供えているのかもしれないが、わが家では毎年正月だけお供えする習慣である。
榊とはいっても、ホンサカキが手に入りにくいので、この辺では、普通、ヒサカキをサカキと言って供えている。

サカキの榊という漢字は、国字として有名である。
国字としてはこの他に、峠(とうげ)、凧(たこ)、凩(こがらし)、裃(かみしも)、躾(しつけ)、俤(おもかげ)、〔木+佛〕(しきみ)、畠(はたけ)、畑(はたけ)、辻(つじ)、辷(すべる)、込(こむ)、籾(もみ)、糀(こうじ)、〔魚+雷〕(はたはた)、鴫(しぎ)、糎(せんち)、粍(みり)、粁(キロ)、瓩(キログラム)、鋲(びょう)、噸(トン)、働(ドウ・はたらく)、塀(ヘイ)、搾(サク・しぼる)、腺(セン)、匂(におう)、扨(さて)、麿(まろ)、粂(くめ)などがあるそうで(『旺文社漢和辞典』による)、驚くほどの多さである。この他にも、鰯(いわし)、鯰(なまず)、笹(ささ)、匁(もんめ)、俥(くるま)などは、比較的よく見かける国字である。漢和辞典を開いてみると、この他にも見たこともない国字がたくさん出て来る。
国字だから、原則としてこれらの漢字は訓のみで、音(おん)がないが、中には、噸、働、塀、搾、腺のように音を持った国字もある。

『漢字源』によれば、「働」は本来国字であるが、中国でも用いられたことがあるそうである。また、「噸」や「腺」、「鯰」などは、現在でも中国で用いられる、とある。

榊について、『旺文社漢和辞典』には、「木と神とを合わせ、神前に捧げる木の意を表す。日本では、昔からその小枝を神前に供える。材は建築用となる」と出ている。

正月に供えた榊は、水を切らさなければ、いつまでも青々としている。去年は4月の下旬まで青々していたので、それを5本ほど赤玉土の鉢に挿しておいたら、全部が発根したようで、今も青々としている。暖かくなったら、地面に植えかえてやろうと思っている。

外の木もこんなに持つものなのか、榊だけがこれほどの生命力をもっているのか、よく分からないが、ともかく神の木にふさわしい生命力だと、感心している次第である。