隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1204.東京バンドワゴン4 マイ・ブルー・ヘブン

2011年11月26日 | ホームドラマ

 

マイ・ブルー・ヘブン
東京バンドワゴン
読 了 日 2011/11/07
著  者 小路幸也
出 版 社 集英社
形  態 文庫
ページ数 365
発 行 :日 2011/04/25
ISBN 978-4-08-746686-7

 

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リーズ4作目は番外編とでもいおうか?いや、番外編は違うかな、年代がちょっと遡って、古書店・東京バンドワゴンの戦後混乱期編である。堀田家はまだ現在の当主勘一の時代にはなっておらず、その父親の堀田草平が当主であった時代だ。堀田家2代目の当主である。
若い人にはピンと来ないだろうが、タイトルからして戦後の昭和の時代が彷彿とするだろう。マイ・ブルー・ヘブン、私の青空はその頃は大いに流行った歌。僕にとってはタイトルを聞いただけで涙が出てきそうなほど懐かしい歌だ。
東京大空襲で焼け出されて、当時住んでいた駒形の借家から28歳の母親は2歳だった弟を背に、6歳の僕の手を引いて、命からがら近くの隅田公園に避難した後、元の場所へ帰ってみれば、家など跡形もなく一面焼け野原と化していた。父親が戦地(中国のアモイ)へと召集されていたから、若い母は大変だっただろう。
茨城県の牛久町(現在は牛久市)にある母の実家に疎開して、終戦まで過ごす間何度となく空襲警報のサイレンを聞くことになり、後に僕は長い間そのサイレン恐怖症となる。
そうした幼児体験の後、貧しいながら平和な時代がやってきて、こうした歌を聴くことになるのだ。

 

 

本書はまだ敗戦国のみじめさを残した時代から、10数年の間の物語で、シリーズの語り手である堀田サチが(当時は五条辻佐智子といった)、堀田勘一と夫婦となり長男・我南人が生まれて、高校生となるくらいまでが描かれる。
戦時中は敵国の歌ということで禁止されていたジャズが聞こえ始めて、勘一たちの即席編成バンドが大活躍をすることになるのだが、即席とはいってもそれぞれのパートを受け持つプレーヤーたちは、皆一流の腕を持っており、中でもヴォーカルのマリアは名の売れたジャズ・シンガーだ。
そんなストーリーを読んでいると、一昔前に(いや、一昔というのは言葉のあやで、実際には半世紀も前か)進駐軍のキャンプで歌って、その後プロ歌手になった実在の芸能人たち(何人もいたはずだ)を思い出したり、華やかなスイングの音色が聞こえてくるような錯覚を起こすほどだ。もっともこれを読みながら、NHK教育テレビのN響アワーを画面を見ずに音だけ聴いており、オペラの序曲集をやっていて、ヨハン・シュトラウスの歌劇「こうもり」のリズミカルな音楽を聴いていたせいもあるのだろう。
本書がシリーズの他の巻と一線を画すところは、一つの事件の展開を追って東京バンドワゴンと、それを取り巻く面々が協力して、収束に向かうという長編小説になっているところである。

 

 

のシリーズに登場する個性あふれるメンバーたちには、一人一人にドラマがあったことを想像させるところがあるということを、前に書いたがその一部が本書によって明らかにされることも読みどころの一つで、たぶんさらに続くストーリーの中でも、追々そうしたエピソードが描かれるのではないかと期待している。
僕のようにそうした時代をリアルタイムに生きてきた人間には、ノスタルジーだけではない何かを感じさせて、物があふれて比べようのないほどの豊かな?現代とは違った、幸せ感を味あわせてくれる。
それは堀田我南人(ここに登場する60歳を超えたロックンローラー)の十八番(おはこ)のセリフではないが、
「やはりLOVEかなあ」

 

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