東京バンドワゴン | ||
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読 了 日 | 2011/10/25 | |
著 者 | 小路幸也 | |
出 版 社 | 集英社 | |
形 態 | 単行本 | |
ページ数 | 277 | |
発 行 日 | 2006/04/30 | |
ISBN | 4-08-775361-1 |
とめ買いした文庫の新刊を読み終えて、調べ物で寄った図書館で検索をして本書を見つけた。2006年の発刊だから新しい作品ではないが、先達て―と言っても9月か、それとも8月だったか?―NHKのBS放送で毎週土曜の朝6時からの番組「週刊ブックレビュー」のなかで、誰だったか忘れたがこの本を紹介していた際に、僕は何か気になってタイトルをメモしておいたのだ。
内容はすっかり記憶の底から漏れてしまったが、図書館で借りて帰ってから見たら、「東京バンドワゴン」とは古くからある古書店の名前だったことが分かって、メモした意味も思い出した。
このところ古書店を舞台にした心地よい作品をいくつか読んでいるので、古書店と聞いて食指が動いたのだ。後で図書館を覗くか、amazonで検索してみようと思って、タイトルだけ大急ぎでメモしておいたのだが、その内容をすっかり忘れていたのだから困ったものだ。
そんなこんなで、まとめ買いした最後の文庫である「きのうの世界」を読み終えて、記録を付ける間も惜しんで読み始めたのである。そんなことをしているとまた後で苦労するのだが、このところ読了日を見て分かるように、何冊か読んではまとめて記事を書くようにしているのだ。その、「後で書く」ということがあまり貯めこむと何を書いていいのか苦痛になってくるのだ。
そしては、小・中学校の時の作文の授業を思い出す。僕はこの作文が苦手で、先生は「自分が思ったこと、感じたことをそのまま書けばいいのですよ」というが、それがそう簡単ではないのだ。クラスの中にはそれはそれはうまい作文を書くやつもいて、ただただ感心するばかりであったことなど思い起こす。
今でもこうした僕の読書記録のようなブログで、プロ顔負けの立派な評論とも思えるものもあって、そういうのを見ると自己嫌悪に陥るから、なるたけ見ないようにしている。話が訳のわからない方向に行ってしまった。
て、著者の作品は「空を見上げる古い歌を口ずさむ」他3冊を読んでいるが、最後に読んだのが2006年だから、もう5年も前になるのか。3冊の内容はもうすっかり忘れたが、心癒されるような内容ではなかったかと、その位しか記憶に残ってない。
ところが本書を読み始めて、語り口からも、文体からも全く違うと感じて、驚く。なんとなれば本書の語り手は幽霊、と言ってしまうのはちょっと意味合いが違うかもしれない。先に書いたように「東京バンドワゴン」は今も昭和の匂いが色濃く残る下町の古書店だ。三代にわたって続く店は途中で、カフェを併設することになって、正面から見ると玄関口を挟んで右半分がカフェで、左半分が古書店という具合だ。
現在の当主は堀田勘一という80歳に手の届こうという年齢だが、まだかくしゃくとして古書店を切り盛りしている。サチという名の勘一の奥さんは数年前に76歳でこの世を去っている。だが、堀田家の行く末が心配なサチはこの世から立ち去りがたく、いまだこの家にとどまり、彼女が事の成り行きの語り手となっているというわけだ。
堀田家は当主の勘一をはじめとして、四世代にわたる11人もの個性的な面々が集う大家族である。大変な時期もあったのだが、今では勘一を中心にかつての時代がそうであったような、賑やかなれど暖かい家庭を形作っている。
僕も昭和の時代に50歳までどっぷりとつかってきた人間にとっては、堀田家の在り様が懐かしくて、登場人物たちの動きやセリフにじわじわと涙がわいてくるようだ。先代が毛筆で書いた堀田家の家訓(もうこの言葉さえ死語になっているのではないか?)がそっちこっちに張り出されており、その中の一つに《食事は家族そろって賑やかに行うべし》というのがあるように、朝の食卓の模様が実に愉快だ。
そっちこっちから飛び出す言葉は、こういう場面で誰と誰とが順序良く話すわけではないから、無差別に飛び交うセリフは、どれとどれとが結びつくのでしょうか?というクイズみたいだ。
笑いと涙、そしてミステリーまでと読書の楽しさを満喫した後、この単行本が2006年の刊行だから、もう文庫も出ているのではないかと思って、amazonを検索したら、なんと今年(2011年)までに全部で6作も出ていることにびっくり。調べてみると、この作品が発表された時に、書店員の間で大分評判になったようで、知らないというのは困ったものだ。
僕にとっては初めてのホームドラマ&ミステリーといったこの作品の、しばらくの間虜になりそうな予感。
# | タイトル |
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春 | 百科事典はなぜ消える |
夏 | お嫁さんはなぜ泣くの |
秋 | 犬とネズミとブローチと |
冬 | 愛こそすべて |
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