隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1682.神の手

2016年12月09日 | サスペンス
神の手
読了日 2016/12/09
著 者 望月諒子
出版社 集英社
形 態 文庫
ページ数 407
発行日 2004/04/25
ISBN 4-08-747691-X

 

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回しばらくぶりに著者の作品に触れて、手元にあった著者の処女作を読もうという気になった。この文庫は多分2013年に読んだ「大絵画展」の面白さに、著者の他の作品も読んでみたい、と思っていた時にBOOKOFFの文庫棚で見かけて買ったものだと思う。
買ってしまうと安心して、読むのが後回しになるのはいつものことで、何かきっかけがあるまで手にしないのは僕の悪い癖だ。前回その「大絵画展」のシリーズともいえる「フェルメールの憂鬱」を読んで、しばらくぶりに著者の作品の面白さに出会い、これを機会にしばらく著者の作品を読み続けてみよう、そんな気になったのだ。
この「神の手」というタイトルは、他の作家の作品にもあって、例えば古くはアメリカのメディカル・サスペンスの大家・ロビン・クック氏の作品には、神の手を持つかのように手術をこなす医師が登場する。国内作品では今年2月に読んだ久坂部羊氏の同じタイトル「神の手」文庫上下巻があり、同様に医師の話だ。
だが、本書は“神の手”を持つのは医師ではなく、作家を目指す女性のことである。

 

 

この作品は2001年に電子出版という形で刊行されて、異例の大ヒットを飛ばした末に、集英社文庫となって再び読者の評判を勝ち得たということらしい。前述のとおりここには1万枚もの原稿をものにした、まさに神の手と呼ばれるにふさわしい女性が登場?するのだが、“幻の女”のごとく関係者の話の中に出てくるだけだ。
というようなことを書くと、限りなくネタ晴らしに近づくので…、発端は文芸誌「新文芸」の編集長・三村が、広瀬という医師からの電話で、忘れかけていた、いや忘れようとしていた過去を思い起こされる。
電話の要件は「高岡真紀という女性を知りませんか?」というものだった。三村は初めて聞く名前だが、その女性が書いたという作品のタイトルに、突然過去に引き戻されたのである。彼女・高岡真紀が来生恭子というペンネームで書いたというその「緑色の猿」は、三村にとって忘れようにも忘れられない作品で、冒頭からの文章はそらんじていたほどだった。

 

 

う何日か前に読み終わっている本の、内容明細については忘れつつあるが、著者・望月諒子氏の作家としての才能を、嫌というほど味わったデビュー作だった、ということはきっちり脳に刻み込まれた。
ここに登場?する女性はあたかも著者自身を投影するかのようだとは、解説氏の言葉だがストーリー展開や、巧みな文章表現などから、そうしたことも納得させられる。そして、単純な僕はまたしてもこの作家の作品を全部読んでみたいなどと思うのだ。
たまたま本文庫は手元にあったが、これを読んで主人公木部美智子が登場するシリーズ作品は、この後3冊あって続けて読むために、市原市立図書館の分館である姉崎公民館図書室で、その3冊を借りてきた。木更津の図書館にはなかったからだ。

 

 

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