街の灯 | ||
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読了日 | 2003/9/29 |
著 者 | 北村薫 | |
出版社 | 文藝春秋 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 303 | |
発行日 | 2003/1/30 | |
ISBN | 4-16-321570-0 |
著者のほかの作品「リセット」(317.参照)などについても言えることだが、時代設定、時代背景に、僕の子供の頃、あるいはそれに近いもう少し昔の時代を語る物語が、当時の僕の生活感とは遠くかけ離れているのだが、とても懐かしくまた心地よくまるで身体に染み透るように感じるのはなぜだろう?
年をとると昔を懐かしむ〝ノスタルジー〟とは、少し違うようだ。
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本書も昭和七年頃の設定だから、僕の生まれる七年前なのだが、やはり懐かしい感じに変わりはない。レトロ感覚なのだろう。
ただし、物語の舞台や、登場人物たちは、当時の貴族や華族たちの上流階級で、日本でも五指に入る財閥系・商事会社々長令嬢・花村英子が語り手となっている。
彼女は女学生、雅吉という大学生の兄がいる。
ある日から、英子の学校への送り迎えの運転手が若い美形の女性・別宮(べっく)みつ子に変わる。英国の作家・サッカレーの「虚栄の市」を読んでいる英子は、小説の主人公レベッカ・シャープ=通称ベッキーになぞらえて“ベッキー”さんだと思った。
英子の前の運転手・岡田と英子はベッキーさんに道を教えるため、学校までの道を一回りして帰ると、門の前に壮士風の三人の男が居り、仕込み杖を抜いていた。岡田が車を動かそうとすると、ベッキーさんは車から降りて男たちを軽くあしらってしまう。
そうしたエピソードから、“ベッキー”さんこと別宮みつ子が探偵役で、“私”こと花村英子がワトソン役かと思えば、話は違う方向へと向かって収束する。この後、《奇怪、自らを埋葬させる男》という見出しで新聞に載った事件について英子は、探偵小説好きで検事をしている叔父に推理を話す第一話「虚栄の市」
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続いて、銀座は服部の時計塔にまつわる謎や、学友、桐原侯爵家の令嬢・麗子の兄、桐原大尉のベッキーさんに対する不審な言動・・・の第二話「銀座八丁」へと進む。最後はタイトルにもなっている、チャップリンの街の灯をモチーフにした「街の灯」。舞台は軽井沢へと変わる。
円紫と私シリーズのように、この作品もシリーズ化してほしいものだ。
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