隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1669.作家刑事毒島

2016年09月27日 | 連作短編集
                                                                 
作家刑事毒島
読 了 日2016/09/27
著  者中山七里
出 版 社幻冬舎
形  態単行本
ページ数323
発 行 日2016/08/10
ISBN978-4-344-02976-7

 

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たる理由はないのだが、このところ本を読むこともなぜか億劫になることがあって、この読書記録も定期的にブログに書くことができないでいる。単に僕の怠け癖が出ただけならいいが、時々何もかもが面倒になるのは、やはり歳のせいか?
本当は今休み休み読んでいる「半七捕物帳(二)」が、先になるはずだったが、それを途中で止めたのは、市原市立図書館に予約してあった本書が借りられたからだ。
市原市立図書館から予約してあった本書が用意できた、というメールが入ったのは23日金曜日だった。そこで早速に翌日土曜日、市原まで繰り出して借りてきた。拙宅から図書館までは20kmほどあって、少し遠いが新刊をできるだけ早く読みたい、という欲求には勝てず、僕は近隣の図書館の購読カードを次々と作った。
貧乏暮らしの僕はもっと早くにそうした措置を取っておけば、古書店を巡り歩いて無駄な時間と出費を抑えられたのだと、気づくのが遅すぎた。今は、Amazonで刊行予定を検索して、人気作家の刊行前のデータを拾って、図書館に予約をすることにしている。

 

 

以前、本は自分で買わないと身に入らない、などということが頭にあって、もっともそれはビジネス書のことだったのだが、それが現役を離れてからも頭の隅に残っていたのだろう。古書店で安い本を探すことに精を出していたのだ。
人によっては図書館を利用する者を、けち臭いというような感じで見るが、僕は割り切ってそうした目を気にすることなく、これからも大いに図書館を利用することにした。
タイミングよく読みたい本を手に入れるために、いろいろとネットを利用することでも、それを実現できるのがうれしい。といったところで著者の24冊目は連作短編集だ。タイトルにあるように、警視庁捜査1課の元刑事が、作家家業に専念することで退官した後、再び刑事技能指導ということで、捜査員として捜査に協力するといういて連のストーリーだ。
昨今、いくつかの他の作者のストーリーに見られる、毒舌のキャラクターだが、本書の主人公毒島も負けず劣らずの毒舌が読んでいてカタルシスを発散させるような、あるいはブラックユーモアを感じさせるような、ある種の爽快感さえ覚える。

 

 

半の事件が出版界や作家の事件から、楽屋落ちか、というような気にもなったが、にもかかわらず流石に中山氏のストーリーは、面白く読ませる。そこは多方面にわたり活躍の場を持つ中山氏らしく、そうした事件現場や背景はお手の物、そんな感じを抱かせる。
僕は読み始めて、そうした物語の背景に、あまりの執筆速度にとうとう自身の活躍の場に、題材を求めたか?といった思いが湧いたが、その辺はどうあれ、ストーリーが面白ければストーリー制作のプロセスがどうであれ、読者にはかかわりのないことだ。特に僕は面白ければいいという読み方だから、どこが舞台であろうと割り切って読む。
最後の少し長めのタイトル「原作とドラマの間には深くて暗い川がある」は、独善のテレビプロデューサーが被害者の事件だが、多分大なり小なりここに登場するプロデューサーのような人物は、実際にもいるのだろうという想像をさせる。そういえば、刑事コロンボの「秒読みの殺人」というエピソードの中で、主人公の女性アシスタント・プロデューサーが、期限に間に合わせるため台本を無造作に切り取る場面があった。
テレビでは、タレント事務所やスポンサーなどの意向が絡み合って、本書のようなめちゃくちゃな事態が発生することも、あるのかもしれないと、そんなことも思わせる。これからは、原作のあるドラマが原作と違うのを見る都度、本書を思い出すだろう。

 

収録作
#タイトル
1 ワナビの心理試験
2 編集者は偏執者
3 賞を獲ってはみたものの
4 愛瀆者
5 原作とドラマの間には深くて暗い川がある

 

 

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