隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0827.つきまとわれて

2007年09月07日 | 短編集
つきまとわれて
読了日 2007/9/8
著 者 今邑彩
出版社 中央公論新社
形 態 新書
ページ数 316
発行日 2006/2/25
ISBN 4-12-204654-8

数えてみたら著者の本を読むのも本書で16冊目となった。結構ちょくちょく読んでいるようだが、前回読んだ「通りゃんせ」殺人事件が昨年1月のことだから、もう1年半以上にもなるのか。
僕はこの作者に、読者に対するサービス精神のようなものを感じて好感が持てる。とにかく本格ミステリーを貫いている、女性作家には珍しい姿勢にまず共感し、一筋縄では収まらないストーリー展開、物語の筋立てに毎回読んでいて引き付けられる。
本書は下記の収録作の一覧で分かるように8編からなる短編集だが、連作と言えば良いのか面白い趣向が凝らされている。それぞれストーリーは独立したもので、どれをとっても1篇だけで楽しめる完結した物語なのだが、次々とリレー式に前の登場人物が次のストーリーに出てくる仕掛けになっているのである。
もちろん最初の1篇「おまえが犯人だ」を読んだときには分からなかったのだが、次の「帰り花」を読み始めて。「おやっ」と思い前のストーリーを少し読み返して同じ人物が出ているのでこれは!と思って読み進めると、先に書いたような仕掛けが分かってきたのだ。ここに出てくるミステリーは、最初の1篇を除けば、殺人事件のような凶悪な犯罪は出てこない。通常の生活の中で、あるいは人間関係その他で、疑問に感ずることなどが登場人物たちの間で解明されていくといったミステリーで、なるほどと思ったり、ほろりとさせられたりと、バラエティにとんだストーリー集となっている。
解明されたミステリーにちょっと余韻を残した「六月の花嫁」や、ファンタスティックな装いの「帰り花」が僕にとっては好みの作品だ。

収録作
(初出:小説中公)
# タイトル      
1 おまえが犯人だ    
2 帰り花    
3 つきまとわれて    
4 六月の花嫁    
5 お告げ    
6 逢ふを待つ間に    
7 生霊    




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