十二人の手紙 | ||
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読 了 日 | 2014/01/27 |
著 者 | 井上ひさし | |
出 版 社 | 中央公論新社 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 302 | |
発 行 日 | 1980/04/10 | |
ISBN | 978-4-12-205103-4 |
めての作家の作品が続いている。僕の気まぐれはもう少しこのまま、初めての作家の作品を続けたいと願っている。この読書記録のささやかな目標の一つに、既成のミステリー作家だけではなく、できるだけ広い分野で活躍している作家が、著しているミステリー作品を読みたいと思っているからだ。
ところで、自慢になる話ではないが、僕はこの偉大な直木賞作家で、放送作家、戯作者で演出家でもある井上ひさし氏をよくは知らない。
特にこのブログでは、ミステリー読書と銘打っているから(と言いながら、時にはミステリーとかかわりのな い話も出てくるが)著者とは接点がないと思っていた。だから、あえて知ろうともしてこなかったし、著作を読もうとも思わなかったのだ。
昔、NHKテレビの「ひょっこりひょうたん島」という人形アニメが始まったときに、作者の名前として初めて知ったくらいで、その後あまり関心を持つこともなかった。そんな著者の作品を、今回読もうと思ったのは、前にBSイレブンの「宮崎美子のすずらん本屋堂」と言う番組の中で、誰かが本書を紹介していたのを思い出したからだ。
確か出演のコメンテーターの誰かがお勧めの本として、紹介した中で本書がミステリーだと言う話があって、興味を持ったのだが忘れていた。木更津市立図書館で、文庫の棚を見ていて背表紙のタイトルを見て思い出し借りてきた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/e0/b8b38e50eab1b6c01ff8d154091c5d99.jpg)
前に何処かで書いたが、その昔江戸川乱歩氏が業績不振の探偵雑誌「宝石」のてこ入れのため、編集に乗り出したとき、広い分野で活躍している作家や作家以外の方たちに、ミステリー(探偵小説)を書く事を盛んに薦めていたことがあった。
その誘いに乗って多くの名シリーズを残した代表的な人物が、歌舞伎役者で名探偵の“中村雅楽”を生み出した戸板康二氏だ。他にも文学畑では三浦朱門・曾野綾子夫妻などもその代表の一人、いや二人か。あえてミステリーと言わなくとも、芥川龍之介を始め、谷崎潤一郎や太宰治など文学作品の多くを生み出している作家たちも、ミステリー的作品を書いている。
そういえば昔、テレビ東京だったかどこの局か忘れたが、文豪の書いたミステリーということで1時間のドラマを、シリーズで放送していた。誰の作品か、どんな内容かは覚えてないが、いくつか見たという記憶はある。
人によれば全ての小説はミステリーだと言う。どんな小説にも多少の差はあれ、謎が、すなわちミステリー要 素が含まれていると言うことなのだ。放送されたドラマは、そういうこじ付け的なことではなく作品の内容がミステリーと言ってもおかしくない内容だったとおぼえているが。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/e0/b8b38e50eab1b6c01ff8d154091c5d99.jpg)
書はタイトルからもわかるように、十二人の異なる人物が、親族や知人その他に宛てて書いた手紙の内容が書かれたものだ。またちょっと余分な話だが、僕はこのタイトルのように数字が入る、特に“○○人”などと言う数字に惹かれる。何故だかわからないが、そんなタイトルに名作が多いと言う感じがしているのだ。
若しかしたら僕の思い込みかもしれないが、本だけでなく映像化された作品にもそれを感じるのだ。例えば「七人の侍」とか、「十三人の刺客」と言った時代劇、アメリカの名画「十二人の怒れる男」、有馬頼儀氏の「三十六人の乗客」、「四万人の目撃者」も映画化されている。僕の読んだ中にもパット・マガー女史の「七人のおば」などが有る。
ここまで書いて、僕は気になるのでこのブログの過去の記事を見直してみたら、意外と「○○人」という表示のタイトルは少ないことが判った。他には今邑彩氏の「七人の中にいる」、森博嗣氏の「六人の超音波科学者」、近藤史恵女史の「二人道成寺」くらいだ。するとこれはやはり僕の思い込みか。
此の作品を通読して、手紙と言うものは、特に往復書簡などはそれだけで一つの物語になることに驚きを感じた。まったく係りのない異なった人物たちの手紙だと思っていたら、作者はいろいろと仕掛けをめぐらせていたのである。本書を紹介した人物が、ミステリーだと言った所以だ。
少し趣は違い、その目的も異なるが、前に読んだ小林英樹氏の「ゴッホの遺言」の中でもゴッホが弟のテオに送った手紙を随所に現して、ゴッホの考えや行動を示唆していた。手紙の持つ真実性を端的に示したものではないか。
十二人の手紙と言う割りに、下表の収録作のタイトルが13なのは、最後のエピローグに作者の仕掛けの総仕上げがしてあるのだ。途中の1篇には、実際驚くような作者の試みもあって、名人の仕掛けたからくりに堪能。まさにこれはミステリーだ。
# | タイトル |
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1 | プロローグ悪魔 |
2 | 葬送歌 |
3 | 赤い手 |
4 | ペンフレンド |
5 | 第三十番善楽寺 |
6 | 隣からの声 |
7 | 鍵 |
8 | 桃 |
9 | シンデレラの死 |
10 | 玉の輿 |
11 | 里親 |
12 | 泥と雪 |
13 | エピローグ人質 |
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