隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1169.浜村渚の計算ノート

2011年07月10日 | 数学
浜村渚の計算ノート
読 了 日 2011/07/10
著  者 青柳碧人
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 292
発 行 日 2011/06/15
ISBN 978-4-06-276981-5

 

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カパーの海外ドラマチャンネルの一つであるAxnミステリーにゲストルームという番組があって、毎月ミステリー作家などを迎えて、新しい作品についてや、最近のミステリーの傾向などについてインタビューを行っている。
同チャンネルでは他にも、出版社の推薦する新作ミステリーなども紹介しており、ミステリー読書の参考にしている。
つい最近番組の中で著者の青柳碧人氏と本書についての紹介があった。学習塾の講師をしているという著者の話は面白く、書いてみたいテーマに「フェルマーの最終定理」を挙げていた。
僕は数学が決して得意ではないのだが、嫌いではない。だからこの読書記録の中でも、数学に関した本も何冊か入れて読んでいる。本書も番組を見て面白そうなのですぐにも読みたいと思って、市内の割と大手の書店を見て回ったのだが、置いてあるところはなく、富津市にあるイオンショッピングモールにテナントとして出店している、すばる書店まで出向いて買ってきた。

 

 

表紙イラストで示されるのが、千葉市立痲砂中学校二年生、浜村渚のイメージだ。他の科目はともかくとして、数学に関する知識は天才的ともいえるもので、千葉県警の女性刑事、大山あずさが連れてきた助っ人である。
それと言うのも、今世間を騒がせている天才数学者・高木源一郎が率いるテロ集団に対抗するためだ。
事の起こりは、政府の学校教育に関する基本方針が、テストのためばかりで役に立たないという理由で、理数系の授業を正規の授業から外してしまったことによる。そうした状況に数学者高木源一郎は、このままでは日本の将来が危うくなるという思いで、「黒い三角定規」というテロ集団を作り、数学授業の復権を目指したのである。
かつて数学の授業には、大半の学校で高木の考案したパソコン・ソフトが、使用されており現在の15歳から40歳までの年齢層の人たちは、そのソフトによって教育されていた。ところが、高木はそのソフトに密かに後催眠術を仕掛けていたのだ。つまりそのソフトで教育を受けた人は誰でもが、高木の命令で殺人の加害者になりうるということだった。

 

 

野県で殺人事件が発生、現場には「黒い三角定規」をプリントしたカードが残されていた。そして、第二、第三の犠牲者が・・・。高木はどのような順序で犠牲者を決めているのか?
捜査本部に連れてこられた、天才少女・浜村渚の数学的推理は事件を解明できるのか? テロ集団との闘いということで、殺人事件が描かれるが、それはあくまで謎の提示という要素だから、凶悪な印象を与えてはいない。
また、なぜ警察の捜査に数学の天才とはいえ、中学生の少女が選ばれたのかということも、本編の中で相応の理由が示される。
時におかしく、また時に、なるほどと思わせる数学の面白さが、解説されて数学にそれほど興味のない人が読んでも、そこそこ面白く読めるのではないかと感じる。目次にも対数やルートを使うなどの簡単な工夫がされており、いくらかでも数学に興味のある人には、にやりとするのではないか。

 

収録作
# タイトル
log 10 ぬり絵をやめさせる
log 100 悪魔との約束
log 1000 ちごうた計算
log 10000 πレーツ・オブ・サガミワン

 

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