隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1010.フェルマーの最終定理

2009年07月28日 | 数学
フェルマーの最終定理
FERMATS LAST THEOREM
読了日 2009/04/27
著 者 サイモン・シン
Simon Singh
訳 者 青木薫
出版社 新潮社
形 態 文庫
ページ数 495
発行日 2006/06/01
ISBN 978-4-10-215971-2

 

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更津市郊外のアピタ(愛知県に本拠を構える大手スーパー・ユニーが経営するSC :ショッピングセンター)の2階に出店しているくまざわ書店にたまに新刊の品揃えなどを見に行く ことがある。
少し話がそれるが、このくまざわ書店も主としてSCにテナントとして出店しているチェーン店だ。
その昔小売業が生き残る手段の一つとして、経営コンサルタントはショッピングセンターチェーン へのテナント出店を提唱していた。
とくに今後業種店(主力商品の名前が店舗名となっている店で、本屋=書店などがその典型)は業 態店(客の購買行動を主眼とする形態で、コンビニエンス・ストアがその典型)への転換がせまら れる、ということが言われていた。近頃大手スーパー(いわゆるビッグストアと呼ばれる店舗)や 、SCに出店している書店のほとんどがチェーン展開をしているテナントであることが、現役の頃受 講したセミナーの理論に近づいていることに、感慨深いものを感じている。

 

 

といったことはさておいて、先日、そのアピタの近くにいつも利用しているセルフサービスのガソ リンスタンドもあって、車のガソリンを入れたついでに立ち寄った際に、文庫棚の前に平積みされ た本書が目に付いた。
なんと魅力的なタイトルではないか!と思って衝動買いをした。
僕は特別に数学に興味を持っているわけではないが、「フェルマーの最終定理」については有名な 話だから、多少のことは頭にあって、タイトルだけで、証明された詳細が書かれているのだと判る 。奥付を見るとこの文庫は3年ほど前の発行で、単行本はさらに遡って9年前に刊行されたようだ。
もっともこの有名なフェルマーの定理についてのエピソードは、著名な数学者から素人のにわか数 学者までが、挑戦したにもかかわらず、3世紀にも亘って証明されなかったということでも知られて おり、そういえば、1995年に放送された、テレビドラマ「古畑任三郎スペシャル 笑うカンガルー 」の中でも、これをモデルとした「ファルコンの定理」の証明を巡ってのストーリーで、既にアメ リカの数学者によって証明されたことを知らなかったために事件が起こる展開だった。「あっ!こ れはネタバラシになるかな?」

 

 

フ ェルマーの最終定理とは、中学生の頃数学の時間に、誰でもが教わったことのある有名なピュタゴ ラス(僕は今までピタゴラスとして知っていたが、本書ではピュタゴラスと表記されているので、 それに従う)の定理(図)に始まる話だ。

 

 

が 、風変わりで、ちょっと意地悪な、数学者フェルマーは、自分の研究や証明を世間に公開すること はないという秘密主義を通していたらしい。
そんなフェルマーが、数学のバイブルとしていたのが、ギリシャ数学の巨星といわれるディアフォ ントスの著した十三巻にわたる大著「算術」である。その二巻目にあったのが例のピュタゴラスの 定理だった。
そして、その余白に「Xn+Yn=Znのnが3以上のとき式が成立し ないことを証明したが、余白が狭すぎるのでここに記すことは出来ない。」という意味のメモを残 したのである。
すなわちこれが、その後あらゆる数学者が試みたにもかかわらず3世紀にも亘って解けない謎となっ たのだ。

 

 

分なことまで書いたから大分長くなってしまった。
結論から言えば、この証明をしたのは7年かかって研究を続けたアメリカの数学者、アンドリュー・ ワイルズである。
本書は、紀元前からの数学の推移と、著名な数学者についてを、実に判りやすく解説しながら、ワ イルズが問題の定理を証明するまでをスリリングに描いたノンフィクションである。
ミステリーと数学は直接は関係ないが、あたかもパズルを解くような話は、ミステリーと全く無関 係ともいえないのではないか。僕はこれまで、数学をテーマとした作品を本書を含めて4冊読んでき た。
そのうちの2冊は小説で、数学の話が小説になるのに驚いたが、本書はノンフィクションでありなが ら小説そこのけの面白さも持ち合わせており、感動を誘う。
またまた余分な話だが、“友愛数”の話も出てきて、小川洋子氏の「博士の愛した数式」や、 彼女と数学者、藤原正彦氏の対談「世にも美しい数学入門」を思い浮かべた。

 

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