隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1207.わくらば日記

2011年12月05日 | 青春ミステリー
わくらば日記
読 了 日 2011/11/12
著  者 朱川湊人
出 版 社 角川書店
形  態 文庫
ページ数 317
発 行 日 2009/02/25
ISBN 978-4-04-373502-0

 

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の本はブログによくコメントを頂いていた“根無し草”さんから紹介された中の1冊だ。つい先達て読んだ「萩を揺らす雨」とか本書なども、紹介されなければおそらく読むことはなかっただろう。
僕はいい加減に目につく本を片っ端から読んでいるようだが、何というかそれなりに自分の感性に合った本を選んでいるようだ。
だから、たまにこうして人から紹介された本を読むと、また新しい本の世界に踏み入れたような感覚を覚える。本当は人に紹介されるまでもなく、自分でできるだけ広い分野の作品を開拓していけばいいのだが、一つは臆病なせいもあるのだろう。なかなか思うようには進まないものなのだ。
もう、この歳になると残された時間はそれほど豊富にあるわけではないから、自分が面白いと思う本だけを読んで行こう、という思いも一方にあるからだろう。

 

 

“根無し草”さんが僕にこの本を紹介したのは、僕が小路幸也氏の「東京バンドワゴン」シリーズに嵌っており、昭和の時代色が残る下町の風情に、懐旧の思いをブログに書いたことからだ、と思っている。
東京バンドワゴンに惹かれているのは、実はそれだけではないのだが、今となっては僕も昔人間(となるのだろうな)だから、自分の子供時代に有った向こう三軒両隣といったごく狭い地域社会の在り様と、そこに暮らす人々の優しさや(時には厳しさも)人情といったものも合わせて、心を癒されるような気になるのだ。
尤もその頃の僕はと言えば、そうした世界から早く抜け出せないかという気持ちが強かったのだが・・・・。

本書は昭和30年代のころに少女期を過ごした上条和歌子と、その姉・鈴音(りんね)の物語である。今は亡き姉の鈴音と過ごした時代の思い出を語るのが中年になった和歌子というのも、東京バンドワゴンにちょっと似たところだ。
病弱でいつも家の中で静かに本を読んでいる鈴音だったが、彼女にはたぐいまれな美貌の他に、特殊な能力が備わっていた。人が持っている過去の記憶を読み取ることが出来たのである。ふとしたことから和歌子は姉のそうした能力について知ることになる。
そして、町内の派出所の若い警官に、淡い恋心のようなものを感じた和歌子は、彼を助ける目的で鈴音の力を借りようとする。和歌子のたっての頼みで、鈴音は事件に関わることになるのだが・・・・。

 

 

殊な能力を持つ人物が登場するストーリーは、宮部みゆき氏の作品にもいくつかあって、ファンタスティックな物語を違和感なく読んできたから、本書にもスムーズに溶け込むことが出来たのだが、ここでも、鈴音の特殊な能力がメインテーマでなく、語り手の和歌子が過ごした遠い過去のエピソードが懐かしさを伴って語られるところにあり、読み手に感動を与えるのだろう。

 

初出(野生時代)
# タイトル 発行月・号
1 追憶の虹(「虹の追憶」改題) 2004年7月号
2 夏空への梯子(「夏空の梯子」改題) 2004年9月号
3 いつか夕陽の中で 2004年11月号
4 流星のまたたき 2005年1月号
5 春の悪魔 2005年4月号

 

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