隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1252.東京バンドワゴン レディ・マドンナ

2012年05月19日 | ホームドラマ

 

レディ・マドンナ
東京バンドワゴン
読 了 日 2012/05/12
著  者 小路幸也
出 版 社 集英社
形  態 単行本
ページ数 301
発 行 :日 2012/04/30
ISBN 978-4-08-775409-4

 

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京バンドワゴンシリーズも7冊目となった。かつてNHKBSで放送されていた書評番組「週刊ブックレビュー」で何方かが紹介していた東京バンドワゴンというタイトルを忘れないようにとメモしておいたのはいいが、どんな内容だったかということはすっかり忘れており、まあメモしたんだからその時に興味があったのだろうと、ずっと後になって木更津市立図書館で見つけて読んだのが始まりだった。
といってもそんなに前のことではなく、昨年(2011年)11月初めのことだ。それから1か月余りで既刊の6作全部を読み終わってしまって、毎年4月末に新刊が出るというのを待ちかねていた。ノスタルジックな思いを蘇らせるような雰囲気を醸し出しているこのシリーズは、昭和初期の生れである僕を捕まえて離さない。

 

 

物も金もなく、決して豊かではなかった子供の頃を思い起こさせて、失われてしまった何かを見せつけられるような気にさせる。歳をとると昔(過去)のことを思い出す、とはよく言われることだが、僕は最近時々子供の頃育った家で、家族がそろっているところを夢に見る。
和裁職人だった明治生まれの厳しい父が亡くなってから、10年近くたつが夢の中ではまだ若く、笑顔を見せており、目覚めた僕は貧しいながらも楽しかったことばかりの思い出が胸を打つ。
夢と言えば(また話がそれてしまう)、近頃は少なくなったが、以前には同じ景色の夢を繰り返し見ることが多かった。現実のありようとはほんの少し違ってはいるが、何度も夢に現れるから、僕はその景色の中の道を知っていたり、店をよく訪れたりするのだ。
そして目覚めては、またその景色の場所に行ってみたいという、思いを強くするのだが、もしかしたら現実の世界への欲求不満とか?心理学的に言えばそんな判断がされるのかも・・・・。

 

のシリーズ作品で描かれる下町の世界も、まだどこかにあるのだということを、強く信じさせるものがあって、惹かれるところだ。いや、東京バンドワゴンのような古書店が実世界でもあってほしいという欲求がわく。
昔、小学館から出ているコミック誌「ビッグコミック・オリジナル」に連載されていた(今も連載されているのかな?)西岸良平氏の「夕焼けの詩―三丁目の夕日」が、昭和30年代の下町の様子が描かれて、後に映画化もされて評判となった。そうした現象は、何も僕が歳を取ったこととはかかわりなく、年配の読者の郷愁の思いを、若い読者には今では失われてしまった何かを見つけ出させるといったことを、生じさせているのだろうか?
今回も、それほど重大な事件が起こるわけではないものの、堀田家やそこに関わる人たちの周辺で発生するミステリアスな事柄が、季節ごとに語られる。僕は、毎回定番のように描写される、堀田家の家族そろっての食事(主として朝食)の場面が好きだ。 各々飛び出すセリフが入り乱れて、組合せパズルのような様相を示して、何ともにぎやかで微笑ましい。今のように核家族化が進む前の大家族の元では、日常茶飯事だったことがここからも懐かしく思い起こされる。

ゆったりと流れる大河のような物語の流れは、しかし少しずつではあるが確実に変化を見せて、人々は歳を取っていく。80歳を超えた当主・堀田勘一の健康が気になるところだが、今の調子では語り手を務めるサチが言うように、曾孫のかんな、鈴花が嫁入りするまで、長生きをすることを願おうか。

 

収録作
# タイトル
雪やこんこあなたに逢えた
鳶がくるりと鷹産んだ
思い出は風に吹かれて
レディ・マドンナ

 

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