さよならドビュッシー | ||
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読 了 日 | 2012/05/11 | |
著 者 | 中山七里 | |
出 版 社 | 宝島社 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 415 | |
発 行 日 | 2011/01/26 | |
I S B N | 978-4-7966-7992-3 |
めて読んだ著者の「要介護探偵の事件簿」で、主人公である香月老人のキャラクターに惚れ込んで、その前に登場するという作品ということなので、本書はずっと読みたいと思っていた。
こんな風な読み方をしていると、時間と金がいくらあっても足りないと思うが、と言って僕の欲望は簡単に改まるわけでもなく、困ったものだ。しかし、時間の方は何とかなるにしても(それだってふんだんにあるわけではない)、いくら欲張っても金の方は天から降ってくるわけでもないから、どうにもならない。世の中はうまく出来てる。いやいや、世の中ままならない、の間違い。
なんだかんだでようやく手に入れた本書を読み始めて、いきなり現れたお目当ての香月老人は、大声を上げて威勢のいいところを見せたと思ったら、住まいの離れが火事になって、あっさりと死んでしまうのだ。
香月老人はここではあくまで脇役だったのだ。本編の主役はピアニストを目指す香月遥、香月玄太郎老人の孫である。香月玄太郎老人には玲子という娘がいたのだが、片桐と一緒になってすぐにインドネシアに引っ越して、帰化までしてしまったのだ。ところが、例のインドネシアを襲った地震による巨大津波は、一人娘のルシアを残して夫妻をさらってしまった。
香月家には玄太郎老人の長男夫婦とその娘遥、そして次男が暮らしており、ルシアはそこに引き取られることになった。遥といとこ同士になるルシアとは、同い年できょうだい同様に暮らし始めたのだが、たまたま火事になったその時、離れには遥とルシアもいて、いとこ同士のうちの一人だけが九死に一生を得たのだ。
生き残った遥は、香月家の財力と優秀な形成外科の医師によって、普通なら助からない火傷を負った身体を、復旧された。そこから、香月遥のピアニストへと向かっての、不断の努力が始まるのだが・・・・。
の物語の凄いところは、まるでピアノの音があふれ出てくるような、演奏の描写である。遥にスパルタ的なピアノレッスンを行う家庭教師・岬洋介の魅力的なキャラクターも加えて、音楽への情熱が語られる。この岬洋介なる人物は、著名な検事を父に持ち、自身も司法試験に優秀な成績を以て合格しているのだが、それをけってピアニストになったという、変わり種だ。
しかし、それだけではなく・・・・・。いや、それ以上は興をそぐことになるから、やめておこう。
こういうストーリーを読んでいると、著者は出るべくして世に出たとか、取るべくして賞を獲ったのだと思わざるを得ない。読後しばらく興奮状態が消えなかった。この後の音楽ミステリー作品「おやすみラフマニノフ」も読みたいものだ。
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