未だ若き青春の頃、月刊誌「アルプ」を購読していた。
「アルプ」は広告と登山案内のない、山にかかわる広範囲の文化を取り上げた月刊誌だった。
私が読み始めたのは、90何号から200号くらいだったか、引っ越しの際にこの宝物を処分してしまったらしく、手元にないのが、なんとも残念。
山の友人が「アルプ100号記念の集い」に参加して、山口耀久氏の写真とサインをもらってきてくれた。
氏の著作「北八つ彷徨」をバイブルのように読み込んで、仲間たちと八ヶ岳に入れ込んで登っていた頃のこと。
「アルプ」は昭和58年に300号で終刊となったが、串田孫一氏の柔らかいふわっとする文章にひきこまれたものです。
西洋哲学者としてよりも、山のエッセイや、草花自然とのかかわり方の本や、山の話と音楽(ギター、フルート、ドイツ歌曲など)とのコラボレーションの会の報告など、心うちふるわせる内容が満載なのでした。
山に登るのみならず、山での詩もスケッチも、植物のことも、すべてが芸術の域になってしまうのです。
尾崎喜八氏(アルプの同人)の「久方の山」のなかの「…青春のさかんな体力が衰えると、老年の豊かな心や智慧の力がこれに代わる」という一説は、今の私の体と心に深くしみ込んでくる。豊かな智慧とは程遠い私なのですが・・・。