降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★新聞を鉛活字&活版で組んでいた頃(25)

2013年10月07日 | 新聞

【10月5日付の続きです。写真は本文と直接関係ありません】

つい最近まで、新聞は鉛活字・活版で組んでいたのだよ────後世に書き遺しておこうかな、の第25回。

【前回までのあらすじ、かな? 】
時は、平成はじめ。
とある新聞社の編集局整理部は、25時10分(午前1時10分)最終版の降版締め切り時間に向け、編集作業のピークだった。

▼ 24時55分=最終版降版時間まで、15分────
製作局フロアの大組み台。
整理デスクの書いた割り付け用紙を持ち、アタフタ走り込んできた第2社会面(2社)担当整理のKくん。

整理・Kくん「わぁ~、あと15分しかない。間に合うのかなぁ........あ、小林さん(←2社面大組み担当者=仮名、笑)助かるなぁ、上げておいて【 注・下段 】くれたんだね。
お、もう活字ゲラもできてる!」
大組み担当・小林さん「たぶん、ここらへんだと思って、活字と写真凸台は上げといたよ。
入れる活字は、これかい? 3つに畳むんだろ?」
整理・Kくん「うん。んで、この見出し4行どりで二分無双罫ヤマ押さえね」

▼ 24時58分=最終版降版時間まで、12分────
製作局フロアの大組み台。
集中降版を避けるためにも、2社面以外の僕たちの面は先行して降ろさないといけないが、
降版作業で騒然としている製作局になにやら分からない人たちがゾロゾロ集まってきた。

僕(ヤバイ。さっきの共同ピーポを聞いて、製作工程委【注・下段】のやつらが来やがった................ではなく、工程委の方々が上がって来られた)
僕たちは大刷り機にいるが、工程委の数人が大組み中の2社面大組み台に集まってきた。
整理・Kくんの指示に従い、組んでいる小林さん(←仮名)。
その周りに6~7人が集まり、人垣ができてしまった。
僕( あちゃあ~、追い込みなのに、一番マズいパターンになったなぁ........Kくん、切れるなよ)

工程委A「間に合うのか、おい」
工程委B「編集も無茶やるなぁ、入れなきゃならないのかね~この記事」(←新聞社で、あるまじき発言ですな)
工程委C「共同輸送【注・下段】だろ、ここ」
まずいまずいまずいまずいまずい──船頭多くしてナンとやら状態じゃん。
整理と大組みだけなら、組みはスイスイ進むのだけど、
直接関係ない人たちが周囲でワイワイアーダコーダ井戸端会議的に言っていると、整理は集中できないのだ。むしろ、降版作業の足を引っ張っているのと同じなのだ。
────切、切れるなよ、Kくん。販売店と読者が待ってるぞ。(続く)

【上げておいて=あげておいて】
息ぴたりツーカーの大組み担当と組むと「ここはこーなるだろう」「ここはこう記事を流した方がいいね」と、先を読んで組んでくれた。
僕は、職人技だねぇ~と感心した。

【製作工程委員会=せいさくこうていいいんかい】
前にも書きました。新聞社によって名称は異なりますが、台風や災害、大雨、高速道工事などで新聞輸送に遅れが生じる懸念があるとき
「東名高速道夜間集中工事で迂回輸送のため、本日の降版を20分繰り上げます」
など通達を出した。

【共同輸送=きょうどうゆそう】
新聞社は印刷後、自社のトラック便で各地の販売店・専売店に配送するが、経費削減などで他社の便に新聞輸送を委託することもあった(委託されることもあった)。
自社便なら、降版が遅れても「ごめんちゃい」で済むけど(←本当は済まない)
他社が絡む共同輸送だと、時間通りに情け容赦なくトラック便は出てしまう(泣)。
この場合、配送輸送部は特別に自社便を手当てしなくてはならず(10万円単位の費用がかかるんだよ、と聞いた)整理部はかなりドヤされた........。


(>人<;)