Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

いしいしんじさんのトークショーに行ってきました

2007-09-17 | いしいしんじ
今日は青山ブックセンター本店リオープン3周年記念のイベント、いしいしんじさんのトークショーに行ってきました。聞き手は永江朗さん。
いしいさんにじかにお会いするのは初めての私。
いしいさんは白のジャケットにTシャツ、コーラルピンク(ピンクというか紅?)のパンツ姿で登場。テーマはいしいさんの読書遍歴でした。

トークショーの後はサイン会。サインに加えて、それぞれの方にいしいさんが思いつくままにひとつ絵をつけてくれます。牛とか、音符とか靴とか。みんないしいさんに気軽に話しかけて、そしていしいさんもそれに応えておしゃべり。
私も何か話したかったのに、私の大好きな「麦ふみクーツェ」を書いた人がここに・・・!と思うとただただ心臓がバクバクしてしまい「ありがとうございます」としか言えませんでした。(もったいない&情けない)
でも握手していただいた手は大きくてあたたかくて、「この手からあのいろんな小説が生み出されたんだー」と思うと、とっても感動しました。
ちなみに私に描いてくれた絵は「ねこ」。「クーツェ」の主人公にちなんでかな?うれしいです。

トークショーの内容を簡単に。

小さいときの本の記憶は母の実家にある古い大きな本をパタンパタン閉じたり紙を触る感覚が好きだったこと。
絵本は読みながら、たとえば長新太さんの絵のつづきを画用紙に書いたり、読むことと描くことが一緒だった。
一番古い作品は4歳の頃書いた「たいふう」。(「ぶらんこのり」に収録。)
小学生の頃は父親が教育者(大阪で一番古い塾で教えている。今も現役)のためか、近所の本屋の本は全部ツケで買えた。ちょうど角川文庫などが出始めた頃で知らない作家が出ると文庫で片端から買って読んでいた。
教科書に載るような作家の中では夏目漱石が好きだった。「それから」とか。(渋すぎる・・・)
中学の頃は大藪晴彦など。兄の影響でミステリを読んだり、SFを読んだり。作品の中にHな場面が出てくるかが結構重要だった。思春期ならでは。
高校の頃はパンクやビートニク、ヌーベルヴァーグ、シュールレアリスムなど「若い感覚がいいんだ」的なものにもれなくはまる。植草甚一さんの影響でブローティガンなどを読み、それまで読んできた小説とはまるで違う、「意味がなくていいんだ」という感覚に目からウロコ。
特に印象に残っているのは原書で読んだブラッドベリの「たんぽぽのお酒」。
あの街の雰囲気が見たくて、高2の時は交換留学でイリノイ州で二ヶ月過ごした。
(ただ街の人たちは「ブラッドベリ?読んだことない」という反応でがっかり)

大学に入ってからは京都の古書店街でいろんな言語の本を読めないのに持っている感覚だけがうれしくて買ったり。(原書のカラマーゾフとか)古い博物学にはまっていたこともあり、小説以外の本を読むことが多かった。
社会人になってからは東京にきて神保町でたくさん本を買ってきて読んだ。浅草の部屋は台所まで本だらけ。現実逃避的な傾向もあった。
小説の出版は2000年34歳の時。4歳の時に書いた「たいふう」の感覚を、大人になってから習得した言葉で書きたいと思ったのがきっかけ。
長編小説を書くときは読書はしないそう。

ほかにも現在住んでいる松本市の鶴林堂がつぶれてショックだった話。三崎にある本屋で必需品として官能小説を買う遠洋漁業の漁師さんの話(何度も何度も読むうちに気にいらなかった女性が気に入ってきたりする、そこまで読んでもらえる読書はうらやましいという話)などいろいろな話がありました。

トークショーは一時間半。いろいろな本の名前がとびだして、さまざまな読書の土壌がいしいさんの小説書きの滋養になっているのだなーと思いました。
面白かったです!


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